ノベル(徳永信二社長)とBCNは3月17日、SIerやITサービスベンダー向けに「仮想化市場攻略セミナー Vol.1」を共催した。「もっと売れる仮想化提案、競合の一歩先を行く必勝ポイントは何か」をテーマに、市場の今をみながら、今後強まる仮想化ソリューションを提案。調査会社のアナリストが市場を概観したほか、有力仮想化ベンダーが仮想システムへの移行・運用管理ツール群を紹介した。申込者は定員の約3倍で、IT業界の仮想化ビジネスに対する関心の高さを改めて印象づけた。
IDCのアナリストが高成長を予測
「構築に加えて運用管理需要も強まる」

システムインテグレータやITサービス会社など約110人が参加。
仮想化への関心の高さがうかがわれた
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| 仮想化市場の今と将来を語るIDC Japanの入谷光浩アナリスト |
冒頭の基調講演には、IT調査会社IDC Japanで、情報システムのインフラを構成する各ソフト群の調査・分析に強い入谷光浩・ソフトウェア&セキュリティマーケットアナリストが登場。仮想化市場の動向と今後需要が強まるソリューション分野を概観した。
そのIDC Japanによると、2009年の国内IT市場全体は前年比8%減の11兆7389億円、今年度は09年と比べてほぼ同じ規模で、「成長は見込めない」と予測した。しかし、「仮想化関連製品・サービスは中期的に伸びる分野」として、「仮想化を目的として出荷されたサーバーは、08年は6万5000台で全体の11%だが、13年には14万台まで増え、全体の23%を占めるまでになる」というデータを披露。改めて、仮想化市場が中期的に有望であることを示した。
そのうえで入谷氏は、今後生まれる主なビジネスチャンスとして、「仮想化システムの運用管理」を挙げた。同社の分析では、08年から13年までの仮想環境管理ソリューション市場の年平均成長率は28%という。
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| 仮想システムの移行・運用支援の「PlateSpinシリーズ」の優位性を説くノベルの鈴木広紀マネージャー |
「仮想化システムの構築案件も引き続き伸びるが、ユーザーは運用管理に悩みを抱えている。障害発生時の対応や、バックアップ、リソース管理が主な課題という調査結果が出ている。これらの対策局面に、SIerやITサービス企業のチャンスがある。まずはパフォーマンス監視やリソース・構成管理のためのソリューション提案が生きるだろう」と説明した。
ノベルとヴイエムウェアが登場
移行から運用管理までのツール群を紹介
マーケット・セッションの後には、仮想化ソリューションを構成する際に有効的な手段とツールを紹介。ノベルの鈴木広紀・営業本部SEグループマネージャーが登場し、「顧客の心を動かす仮想化ソリューション」をテーマに講演した。
鈴木マネージャーは、「顧客のシステムに合わせてジャストサイズの構成をつくるのが、仮想システムへの移行提案では重要なポイント。ただ、実際に顧客のシステムを分析して適切な構成をつくるには、膨大な手間がかかる。ツールで自動化するのが最適」と説明。そのうえで、ノベルが今、販売に力を注ぐ「Plate Spinシリーズ」を紹介した。
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| ハイブリッド型クラウドの重要性を語るヴイエムウェアの服部寿明・シニアシステムエンジニア |
「PlateSpinシリーズ」は、ノベルの親会社、米ノベルが08年に買収したカナダのプレートスピンが開発した製品群で、日本では09年2月から販売を開始した。物理システムから仮想環境へ移行し、仮想システムを運用・管理するために必要なツールをすべて揃えているのが特徴だ。OSはWindowsとLinuxに対応し、仮想化技術(ハイパーバイザー)では、「VMware」や「Xen」「Hyper・V」など、主要技術に対応しており、異機種混在環境でも利用できることが強みだ。最近では、リコーやシーティーシー・エスピー(CTCSP)、TISが同社製品を販売・活用しており、パートナー網はさらに充実しつつある。
鈴木マネージャーは、「『PlateSpinシリーズ』では、現状把握と移行のプランニング支援ツールとして『Recon』、移行作業のサポートとして『Migrate』というソフトウェアを用意している。このほかにも運用管理や自動化、バックアップなど、仮想システムの構築・運用を支援する総合的なメニューがある。仮想化への移行から運用・管理まで網羅する製品をもつのはノベルだけ」とアピールした。
最後のセッションに登場したヴイエムウェアの服部寿明・シニアシステムエンジニアは、クラウド戦略を説明した。「仮想システムからクラウド基盤に移行したい、というユーザーのニーズは非常に強い。プライベートとパブリックに大別されるが、今後はそのどちらも組み合わせたハイブリッド型クラウドが重要になる」と説明した。
今回のセミナーの定員は100名だったが、事前申し込み者は約3倍という盛況。会場に詰めかけた参加者は、終始真剣な表情で聞き入っていた。SIerやITサービス企業が、仮想化に大きなビジネスチャンスを感じていることが改めてうかがわれた半日だった。(木村剛士)