日立製作所とBCNは共同で2月3日、SIerなどのITベンダー向けイベント「SMB(中堅・中小企業)市場攻略セミナー Vol.2」を東京都内で開催した。大企業とは異なるSMB特有のニーズに焦点を当て、今が旬の商品・サービスを提案。SMBをターゲットに置くITベンダーのビジネス拡大を支援するのが同イベントの目的で、昨年11月の開催に続き今回が2回目のとなった。今回は、「PC運用管理」にフォーカスし、IT調査会社のアナリストがSMBのPC運用管理業務の実態を詳説。PC運用管理の最適ソリューションとして日立の「JP1/Desktop Navigation」を取り上げ、日立と同社のパートナーであるアシストの担当者が製品の優位性などを語った。
潜在需要が眠るPC運用管理に着眼
クライアント端末に関心が向く  |
| 基調講演に登壇したノークリサーチの岩上由高氏。SMBのPC運用管理の実状を説明した |
最初のセッションである基調講演では、SMBのIT利用調査に強いノークリサーチの岩上由高シニアアナリストが登壇し、SMBのクライアントPCの運用管理実態を解説。「SMBのIT利用実態とPC運用管理に需要がある理由」をテーマに講演した。
岩上氏は、まずSMBがクライアントPC管理で抱える課題について言及。「トラブル発生時の対応」「セキュリティ確保」「PC内データの保全」が上位3項目で、「PC運用管理に問題を抱えているものの、サーバー管理系のツールやソリューションを先に導入しがちで、あまり進んでいる状況ではない」と説明した。
そのうえで、「昨年は、クラウドなどサーバー関連の市場が盛り上がったが、今年はクライアント端末に関心が向く」と予測。「クライアントPCの運用管理に悩んでいる中堅・中小企業は多く、既存のPC環境を壊さずに解決したいと考えている傾向が強い。シンクライアントやDaaSといったソリューションではなく、PC(ファットクライアント)をパッケージソフトウェアベースで効率管理する方法が、SMBのPC運用管理ソリューションの提案には最も適している」との見解を示した。
PC運用管理ツールのなかでも「エージェントレスで、自動的に社内PCを認識する機能をもつことは必須条件。分かりやすいレポート作成とセキュリティポリシーのテンプレートが用意されているツールがSMBには受け入れられる」と話した。また、「PC運用管理ソリューションを提案し導入できれば、その後にバックアップやセキュリティ対策など派生ソリューションが売り込みやすい」とも述べた。
「簡単・シンプル・低価格」な製品  |
| 日立製作所の関芳治主任技師は、「JP1/Desktop Navigation」を開発する前に手がけた調査・分析施策を解説 |
岩上氏の後には、PC運用管理ツールのなかでもSMB向けに開発された日立の「JP1/Desktop Navigation」を紹介。日立と同社のパートナーであるアシストの担当者が同製品の詳細について語った。同製品は、日立が2009年9月に発売した従業員1000人未満のSMBをターゲットにしたPC運用管理ツールだ。IT資産管理とセキュリティ対策を同時に施すことができ、導入と運用が容易な点と低価格(50ライセンスで42万円)を“売り”にした日立の戦略商品だ。
日立の関芳治・ソフトウェア事業部JP1マーケティング部主任技師は、「JP1/Desktop Navigation」を開発するために手がけて調査・分析施策を説明した。従業員100人以上の企業に対して行ったIT資産管理についてのアンケート調査結果や、ユーザー企業のIT資産管理関係者に行ったインタビュー結果を披露。SMBの管理者の要望を徹底分析して「JP1/Desktop Navigation」を開発したことを強調した。
関氏は、「メーカーは『業界初』とか『先進テクノロジー』などを追い求めがちだが、事前調査では、そんなことをSMBは求めていないことが分かった。SMBの約半数はIT資産管理業務に関して無関心で、とにかく手間をかけずに効率管理したいと思っている」と説明。「簡単・シンプル・低価格」というコンセプトにたどり着いた経緯を語った。
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| 日立のパートナーであるアシストの蛯名裕史部長。販社の立場から「JP1/Desktop Navigation」の優位性や提案方法などを詳しく解説した |
一方、有力販売パートナーであるアシストの蛯名裕史・システム基盤ソフトウェア事業部技術2部部長は、「JP1/Desktop Navigation」の機能と効果的な提案方法を解説。「すぐに使えてリーズナブルで高品質。それが『JP1/Desktop Navigation』の利点と認識している。SMBのセキュリティ対策ソリューションを提案する場合に最適なツール」と賞賛した。
アシストは、大規模システムの運用管理ツール「JP1」の有力販社でもあり、そのノウハウを生かして、「JP1/Desktop Navigation」の販売網づくりも進めている。「マーケティングから技術情報の提供やインセンティブプログラムなど、さまざまな支援体制を用意している」と話し、参加者に向けて協業を提案した。
SMBのIT利用実態からメーカーと販社からのツール紹介まで網羅した内容に、会場に詰めかけたITベンダーは終始聞き入っていた。セッション後には登壇者に個別で質問する参加者も見られ、PC運用管理ツールにチャンスを感じている様子がうかがえた。(木村剛士)