日本と、中国陝西省西安市でオフショア開発関連事業などを手掛けるソフトロード(劉忱社長)は中国・陝西省商務庁、西安ソフトウェアパークとともに「中国陝西省と日本TOP企業が進めるオフショアの新たなステージ」と題して、セミナーを開催。IT業界関係者やユーザー企業の情報システム担当者に向けて開いたもので、陝西省のアウトソーシングビジネス体制とソフトロードの手がけるオフショア開発を用いた「システム・リフォーム開発手法」の有効性を訴求。後援として同社のパートナー企業であるNEC、NECソフト、NTTソフトウェアなどの大手コンピュータメーカーや、SIerも多数参加した。
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| 劉忱社長 |
西安ソフトウェアパークは、中国政府に最初に認定されたアウトソーシングモデル都市として、成長を続けているという。優秀なアウトソーシング企業を育成し、大型プロジェクトを受注する能力をすでに備えているとしている。陝西省商務庁の李若東副巡視員(副庁長)は「ソフトロードをはじめ陝西省のアウトソーシング企業は、金融危機に直面した際、自社の競争力を高めるためにいかに顧客のコストを低減できるかを真剣に考え、先進的ソリューションやソフトを創出した。多くのソフトウェア開発企業の協力によって共同発展を図りたい」と述べた。
ソフトロードの劉忱社長は「日中共同開発の共同パターン」と題して講演。劉社長は「今、一般的に行われているオフショア開発は品質、納期、コストともにあまりメリットを享受できない。経験豊富なオフショア会社ならば、製造品質自体のレベルは高いが、製造や単体テストにおける業務確認工程が欠けていることやユーザー企業に直接ヒアリングできないために業務がわからないからだ」と指摘した。
新たなシステム開発手法として、同社が推進するシステムリフォームなどの手法ならば、中国のオフショア側、協力する日本SIerそれぞれの負荷を軽減できるとメリットを訴求する。劉社長は、「陝西省でも力を入れていて、将来的には日本においての開発モデルの一つになるのではないか」とみている。
ユーザー企業の既存システムを活用して、新しいIT環境に適応させるシステムリフォームだという。既存システムから業務フローとプログラムソースを分析して仕様書、設計書を作成し、それをもとに新しい環境に移行。移行後、機能改善や新たな機能を追加しやすくなるという。イチから開発を始めるよりも、ベンダー側がプロセスを通して業務を勉強して理解をするため、品質が高いのが特徴。ユーザー企業との認識ギャップが小さく、精度の高い概算見積もりが出せるという。オフショアを積極的に活用し、最初の移行分析フェーズから、結合フェーズまで請け負うことで、トータルコスト削減ができるのも強みの一つだ。
セミナーでは、出光興産の事例も紹介された。出光興産は、ホストコンピュータからオープンシステムへのマイグレーションや、老朽化によるシステム更新に迫られていたことから、安価に的確に実現する方法を模索。NECソフトとの協力体制のもと、オフショアを活用したシステムリフォームに挑戦したという。結果、オフショアについてもQSD(品質安定化設計)を確保した依頼ができ、ホストのオープン化、設備システムといった一般システムの更新で約3割のコスト抑制につながったと説明する。
オフショアにおいては、コミュニケーションの壁など、さまざまな問題点が指摘されている。セミナー参加企業の間では、将来の開発手法の有効な手段として期待が高まっている。(鍋島蓉子)