マイクロソフト(樋口泰行社長)は、新年度(2010年7月~11年6月)がスタートしたことに伴い、恒例の新年度経営方針説明会を開いた。就任3年目を迎えた樋口社長は、壇上に立って三つの注力分野を示した。「クラウド」「ソリューションビジネス」「クライアントインフラ(PC)」がそれだ。なかでも、声が強まったのはやはりクラウドだった。「クラウドに懸ける」との意気込みを示し、今後の施策、目標数値を語った。
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| 壇上に立つ樋口泰行社長。クラウドへのシフトを述べながら「中期的な視点で戦略を推進する」という点も強調した |
本社の移転先となる品川区の高層ビル内イベント会場で開かれた説明会には、100人程度の記者が集まった。新年度を迎えたこの時期に毎年開かれる恒例会見である。樋口社長が登壇し、市場が回復傾向にある感触を話した後、今年度の経営方針を説明した。
マイクロソフト日本法人にとって、今年度は設立25周年を迎えて本社を移し、社名も「日本マイクロソフト株式会社」に変更する重要な年。それだけに昨年の会見よりも力が入っている印象を受けた。そんな大切な年度に注力事業として掲げたのは、やはりクラウドだった。樋口社長は、「今年度はクラウドに懸け、社内のリソースをクラウドにシフトさせる」とまで言い切った。
その言葉通りに新戦略を打つ。今年度期首に全法人向け事業部門にクラウド専任担当者を配置。その数は現状100人で、今後も順次拡大させる計画を示した。将来的には、「全社員の90%は、クラウド関連事業に何らかの形で従事させる」(樋口社長)。
その一方でパートナーにもクラウド対応を求める。マイクロソフトが推進する「認定パートナー」にクラウド関連ビジネスを手がけてもらえるように提案・支援する。約7000社にのぼる「認定パートナー」のうち、今年度内に1000社、3年後には全パートナーがマイクロソフトのクラウドソリューションを再販・活用する基盤を築く計画だ。現状は350社程度なので、一気に増強することになる。
マイクロソフトがもつクラウドソリューションは多岐にわたるが、一つのビジネス目標として、コミュニケーションソリューション「Exchange」と情報共有ソリューション「SharePoint」では、「オンプレミス(自社運用型)製品の販売と同等規模のビジネスに育てる」とした。
マイクロソフトにとっては、オンプレミス型システム向け製品の販売額が大きいだけに、クラウドは“もろ刃の剣”でもある。ただ、樋口社長は、「自己否定的な面もあるが、リソースを集中するのはクラウド」と話し、今後の主軸がクラウドであることを印象づけた。
会見で樋口社長は、こうも語っている。「四半期ごとの数字(売り上げ)を追うのではなく、中長期的な視点で戦略を推進し、ユーザーとパートナーにコミットする」。
クラウドという新潮流を短期的ではなく、長い目で育て上げる──。就任3年目を迎えた樋口社長は、腰を据えてIT業界のターニングポイントに挑む姿勢を示した。(木村剛士)