【南京発】聯迪恒星インフォメーションシステムズ(沈栄明総経理)は、開発人員1000人規模の中国の有力SIerだ。日本のSIerであるSJI(李堅社長)グループの一員で、中国でのオフショア開発や、中国地場のSI案件の受注を精力的に進めている。だが、これまで事業の柱としてきた日本からのオフショア開発案件の伸びが鈍化。一方で、中国でのIT投資は拡大し続けており、日本向け開発案件を柱とした従来型ビジネスモデルの変革に迫られている。事業環境が大きく変わるなか、聯迪恒星の将来を担う若手SEに、意識改革への意気込みや将来展望について、縦横に語ってもらった。
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| 沈栄明総経理 |
聯迪恒星インフォメーションシステムズは、中国南京市に本社を構える大手SIerである。1990年に事業をスタートし、近年では日本のSJIグループの中国における主要開発拠点の役割を担ってきた。SJIは、2009年11月に中国トップクラスのSIerであるデジタル・チャイナ・ホールディングス(郭為CEO)との資本業務提携を発表。日本国内の情報サービス市場の飽和感が強まるなか、営業力のあるデジタル・チャイナとの提携によって中国の情報サービス市場への進出を本格化させる。また、今年に入り、日本IBMのトップソリューションプロバイダであるJBCCホールディングスの中国現地法人JBCN上海とも業務提携。日系有力SIerからのノウハウ取り込みにも力を入れる。
聯迪恒星の沈栄明総経理は、「ITライフサイクル全般をカバーするサービスメニューの拡充を急ぐ」と、設計から開発、運用までのトータルSIerとして、ビジネスモデルの刷新とスキルの拡充、社内の意識改革を急ぐ。
日本との関係に変化
意識改革、着々と進む
日本と中国の両方を意識 ──本日ご登場いただいた3人のSEの皆さんは、日本語がとてもお上手ですね。  |
第2システム事業部 王小鳳サブリーダー 開発経験豊富の実力派SE |
王 聯迪恒星はSJIグループで、日本の顧客との取引が多いですから、私たちのような技術職でも、原則として日本語ができます。新卒者は、当社内定後に日本語の研修を受け、日本語検定の3~4級レベルに達しないと本採用されない仕組みになっています。
朱 僕は日本語学科を卒業していますので、できるのは当然です。ただ、SEとしては素人でしたから、入社してから本格的に学びました。文系でも基礎からITを学べる当社の人材育成制度に助けられた格好です。
曹 私は、4年ほど日本のITベンダーに勤めていた経験があります。日本でのプロジェクトで聯迪恒星のSEの方々と一緒に仕事をする機会があり、その方たちがとても優秀だったので、2009年10月に聯迪恒星に転職しました。
──本日、私(記者)は上海から新幹線と地下鉄を乗り継いで、ここ南京に来たのですが、インフラ整備のスピードに舌を巻きました。中国の目覚ましい経済発展など、外部環境は大きく変わっています。中国の地場市場に向けたSIビジネスについて、皆さんはどう感じておられますか。
王 当社のSEは、これまで日本の銀行間即時決済システムや証券会社向け銘柄管理システムなど金融系、それに製造や運輸業のシステムの開発を担ってきました。日本型システムの優れた点は少なからずありますので、例えばこれを中国に売り込んでいくにはどうしたらいいのかといったことなどを、いつも気にしています。
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第1システム事業部 朱宗建氏 日本語学科卒業、 語学力に自信あり |
朱 日本のプロジェクト管理手法はよく研究されており、中国でも活用できます。当社はCMMIレベル4認定企業であり、これに日本の管理手法を加味すれば、差異化要素になるのではないかと考えています。
曹 日本で仕事をした経験上、システム提案やコンサルティング、要件定義など、もっと顧客に近い、上流工程へ積極的に出ていかなければ収益に結びつかない。中国地場の顧客に向けては、まさに当社が上流工程を担うべきポジションにあるわけですから、ここの経験値をもっと高めていく必要があると思います。
視野広げ、可能性を追求 ──聯迪恒星の将来を担う若手SEの立場からみる、当面の課題はなんでしょうか。今後はグループ会社のSJIだけでなく、デジタル・チャイナやJBCCグループとの協業も拡大していくと思うのですが…。
王 挑戦の機会になるとわくわくしています。皆さんに学ばせてもらい、自らの強さ、弱さ、会社の目標を明確にして、弱い部分はさらに勉強して補っていきたい。
朱 僕は、オフショア開発も当社の重要な柱の一つであり続けると思っています。これまでは日本向けオフショア開発が大半を占めていましたが、欧米の顧客から受注を増やす体制づくりも必要。当社SEの日本語力は問題ないですが、英語は私も含めて苦手な人がいる。多言語化による多様化がさらに求められます。
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第3システム事業部 曹婕氏 日本での勤務経験あり、 社内きっての日本通 |
曹 中国をはじめとする世界のIT市場の変化は、当面は続く。こうしたなか、金融系システムの開発など既存の強みや枠組みに収まるのではなく、もっと視野を広げていくことが大切だと思います。提案・設計から開発・運用まであらゆるビジネスの可能性を追求するとともに、CMMIレベル5の取得や、新たな人材の育成、プロジェクト管理の徹底など基盤部分は手堅く押さえる必要があります。
王 市場環境や会社が大きく変わるなか、自分自身の意識も、職場の仲間とともに変えていくことが、ビジネスの成功に不可欠な要素だと捉えています。
──皆さんの意気込みがひしひしと伝わってきます。ありがとうございました。

南京に本社を置く聯迪恒星の社屋