その他
過去の失敗に学べ
2010/11/04 14:53
週刊BCN 2010年11月01日vol.1356掲載
Googleがテレビ用のOSとして開発した「Google TV」搭載のテレビがこの10月、米国で売り出された。ハードウェアを供給したのはソニーだが、IT業界には「既視感がある」という関係者が少なくない。テレビだけではない。携帯電話の優等生であるスマートフォンでも、Androidや、AppleのiOSなど、メジャーOSの影響力が拡大。携帯電話メーカーは“Android搭載”などの製品開発に熱心だ。
不作為は許されない
15年余り前、Windows OSに対応したパソコンが登場して、飛ぶように売れた。今となっては懐かしい話だが、そのときに欣喜雀躍した日本のベンダーの末路は、結局どうなったか。周知の通り、OSというプラットフォームを提供する者がビジネスを優位に進めた。かつて日本が高水準の技術を誇っていた「ガラケー」にも、OSはある。メーカー主導で開発し、富士ソフトやコアなど組み込みソフトに強いSIerが全面的に協力した。ところが、プラットフォームとして世界に広げる戦略に欠けた。
では、なぜうまくいかないのか──。ひと言でいえば、ユーザー視点の欠落だ。先のGoogle TVの例でいえば、日本は放送のデジタル化で先行しているにもかかわらず、ネットとの融合で消極姿勢が目立つ。携帯電話でも、モバイル通信のインフラがまだ貧弱だったころに考案されたiモードなどの独自ネットワークに固執するあまり、インターネットとダイレクトでつながり、音楽や映像などのコンテンツも自由に操れるスマートフォンで出遅れた。ユーザーは魅力あるプラットフォームにしか興味を示さない。
野村総合研究所(NRI)の2009年の調査によれば、地上波テレビを放送時に生で視聴する時間が1年前に比べて減ったという層は20代で31.1%。50代の21.8%に比べ、10ポイント近くも高い。デジタルネイティブ世代を中心に、「オンデマンドやインタラクティブといったネット由来のコンテンツを好む傾向がみられる」(NRIの中村博之・上級コンサルタント)と分析する。昔ながらの手法でテレビの生視聴やiモードに若者を縛りつけようとしても、もはや無理なのである。
ただ、日本もまんざら捨てたものでもない。あの使い勝手の悪い地上波デジタルの著作権管理システムでさえ、ダビングは10回まで許され、モバイル機器でコンテンツを屋外に持ち出せる技術的な仕様はある。関連メーカーやソフトベンダーの技術力も高い。ここまで好条件が揃っても過去のプラットフォーム競争の失敗に学べないというのなら、それはもう不作為というしかない。
3Dテレビや電子書籍など、IT業界は次から次へと新しい要素が加わり、ビジネスチャンスが生まれる。今度こそ、世界でプラットフォームを押さえる戦略構築に業界を挙げて取り組むべきだ。(安藤章司)
Googleがテレビ用のOSとして開発した「Google TV」搭載のテレビがこの10月、米国で売り出された。ハードウェアを供給したのはソニーだが、IT業界には「既視感がある」という関係者が少なくない。テレビだけではない。携帯電話の優等生であるスマートフォンでも、Androidや、AppleのiOSなど、メジャーOSの影響力が拡大。携帯電話メーカーは“Android搭載”などの製品開発に熱心だ。
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