外国為替保証金取引(FX)サービスを展開するFXプライム(五十嵐眞社長)は、2005年、システムをデータセンター(DC)へ移行し、F5ネットワークスジャパンのロードバランサー「BIG-IP LTM」を導入。また、09年に、ディザスタ・リカバリ(DR)対策としてDCの二分化を決め、DC間でトラフィックを分散する「BIG-IP GTM」の導入を決断した。
FXプライム
会社概要:伊藤忠商事の100%子会社として、2003年に設立。外国為替保証金取引(FX)サービスを提供する。モバイル用取引ツールなど、取引に使用するアプリケーションを独自開発。東京・渋谷区に本社を構える。
プロダクト提供会社:F5ネットワークスジャパン
プロダクト名:「BIG-IP GTM」「BIG-IP LTM」
ソリューションの構成

FXプライムの阿部光・情報システム部長(右)とF5ネットワークスジャパンの帆士敏博・プロダクトマーケティングマネージャ
FXプライムが「BIG-IP GTM」を導入する決断を強く後押ししたのは、2006年8月14日、東京23区の東部に発生した首都圏大規模停電だったという。
「BIG-IP GTM」の導入を担当したFXプライムの阿部光・情報システム部長は、「当社は、お客様のお金を預かって事業を展開しているので、06年の大規模停電をきっかけに、システムの停止に対する危機感が高まり、万が一の場合に備えて、DCの二分化に踏み切った」と語る。同社は、05年、FXシステムを伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が首都圏で運営するDCに移行し、もともとは1か所のDCだけを利用していたが、ディザスタ・リカバリ(DR)対策を図ったDCの二分化を実現するために、DC間で負荷を分散するトラフィック管理ソリューションが必要になった。
F5ネットワークスジャパンの「BIG-IP GTM」を選んだのは、「以前、システムをDCに移行した際に、DC内のローカル・トラフィックを管理するF5のロードバランサー『BIG-IP LTM』を導入したことがきっかけ。『LTM』は性能が高く、安定性にすぐれているので、今回も同じラインの製品にしたいと考えた」(阿部部長)のが理由だという。「BIG-IP GTM」は、ユーザーのアクセスによって発生するトラフィックを、FXプライムが利用している2か所のDC間で分散し、仮に一つのDCで停電や災害が発生しても、すべてのトラフィックをもう一つのDCに振り分けることによって、システムの停止を避けることができる。阿部部長は、「停電や災害が発生した場合は、健全なサイト(DC)が30秒以内にサービスを引き継ぐことができる」と説明する。
DCの二分化、すなわち「BIG-IP GTM」の導入を検討・決断したのは、2009年だった。FXプライムは、新しく使うDCとして、すでに利用中のDCと同じように、CTCが首都圏で運営しているものを選択し、システムの稼働に影響がないIT資産から順に、システム設備の移行を始めた。機器の移行を完了し、システム稼働を開始した初期段階では、「アプリケーションが重いなどのちょっとした問題があったが、全体的に二分化のプロセスはスムーズに運んだ」(阿部部長)と振り返る。阿部部長は、「二分化の以前は、『DCに問題があった』というアラートが来るのをいつも心配していたが、今は二つのDCを使っているので、安心して眠ることができる」と笑顔を見せる。
FXプライムが「BIG-IP GTM」の導入によって実現したDCの二分化には、DR対策だけでなく、もう一つの大きな狙いがある。モバイル端末からFXシステムにアクセスするユーザーの増加によるトラフィック量の急増への対応がそれだ。FXプライムは、携帯電話やスマートフォンを使って外国為替保証金取引ができるサービスを、力を入れて展開しており、ここへきて「モバイルユーザーが日増しに増えている」(阿部部長)と、順調な推移に顔をほころばせる。
F5ネットワークスジャパンの帆士敏博・プロダクトマーケティングマネージャは、「BIG-IP GTM」に加えて、WAF(ウェブ・アプリケーション・ファイアウォール)などのセキュリティ製品をFXプライムに提案している。阿部部長は、「これまで提案してもらったセキュリティ製品を検討したが、運用が難しいと判断して、まだ導入に踏み切れていない」とためらいをみせる。次のIT導入を決断してもらうまで、F5には引き続き積極的な営業活動が求められるようだ。(ゼンフ ミシャ)
3つのpoint
・DC間でトラフィックを振り分けることができる
・性能や安定性にすぐれている
・トラフィック量の急増に対応できる