少額短期保険会社のチケットガード少額短期保険は、日立システムズの保険・共済業向け基幹業務システム「AGMate/SSI(エイジーメイト/エスエスアイ)」を採用した。チケットガードはコンサートなどのチケット購入者向けの保険。万が一、体調不良や急用などでコンサートに行けなかったとき、その分の保険金を請求できる国内保険業界に先駆けたサービスである。新しく事業を始めるにあたり、少額短期保険分野で実績のある「AGMate/SSI」を基幹業務システムに選んだ。
チケットガード少額短期保険
会社概要:チケットガード少額短期保険は、東京海上ホールディングスなどが出資するミレア・モンディアルのグループ会社。コンサートなどのチケット購入者向けの保険「チケットガード」を手がける。
プロダクト提供会社:日立システムズ
プロダクト名:AGMate/SSI
AGMate/SSIを活用した少額短期保険システムの概要
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日立システムズ 川崎純一主任 |
チケットガード少額短期保険は、2011年9月にサービスを始めた新しい保険会社だ。コンサートなどの興行チケットは、原則として払い戻しを受けられないものが大半を占める。とはいえ、現実には突然の体調不良や急な出張などで行けなくなるときがある。そこで、あらかじめチケットガードの少額短期保険に加入しておけば、一定の事由については保険金を請求できるという仕組みだ。
同社は、東京海上ホールディングスとアリアンツ・グローバル・アシスタンス・エスエーエスが出資するミレア・モンディアルのグループ会社として、2011年4月に準備会社を設立。情報システムに選定にあたっては、アリアンツが海外で手がけている同種のサービスのシステムを応用することも検討したが、「日本市場の特殊性から、別のシステムを採用することに決めた」(チケットガードの友岡勇次社長)という経緯がある。
“特殊性”の代表格に挙げられるのは、規制対応とiモードをはじめとする日本独自のモバイル規格への対応だ。チケットガードの小倉慎一・情報システム部長は、「各国とも保険サービスに対するルールは厳格ではあるものの、国によって細則は異なる。また、グローバル規格のスマートフォンが主流になったとはいえ、ユーザー目線でみれば日本独自の携帯電話の存在を無視することはできない」と背景を話す。業者選定にあたっては、まずパッケージソフトであることと、納期内に確実にシステム構築(SI)をこなせる体力があることを重視。その結果として少額短期保険会社向けシステムの契約件数ベースのシェアで50%近くを誇る日立システムズの「AGMate/SSI」を採用した。実際、日立システムズに見積もりを依頼したのは準備会社設立前の2010年暮れで、カスタマイズやSIをスタートしたのは2011年初め。システムの完成は11年6月を目指していたので、「実質6か月弱の開発・SI期間しかなかった」(チケットガードの秋山由美取締役)と振り返る。

チケットガード少額短期保険 秋山由美取締役(左)、友岡勇次社長(中央)、小倉慎一部長
最も苦労した点は、少額短期保険業者として業務を開始するための当局への登録準備と、システムの開発が同時並行で進んだことだ。しかも、チケットに対する少額短期保険は国内で先駆けたサービスで、システムの仕様が完全に固まりきらないまま、「ユーザーであるチケットガードの担当者と日立システムズのSE・営業が二人三脚で作業に当たる」(日立システムズの川崎純一・金融営業統括本部第一営業部第三課主任)ことになった。こんな条件下で、登録が完了する6月までにシステムを稼働できる状態にまでもっていったのだ。
5月の連休前後が作業のピークで、画面遷移の確認のために、操作画面を印刷したものをオフィスの壁一面に40~50枚ほど貼り付けて、両社の担当者が総出でミスや漏れがないかを確認。チケットガードは、こうした日立システムズの仕事に対する熱意を高く評価しており、小倉情報システム部長は「よきビジネスパートナーとして、今後もシステム面での協業を続けたい」と望んでいる。(安藤章司)
3つのpoint
・業界に先駆けた“チケット保険”システム構築に挑戦
・パッケージとシステム構築力を生かして、納期短縮を実現
・仕様が固まらないなか、顧客と二人三脚で柔軟に対応