インフォテリア(平野洋一郎社長)は、2012年4月、韓国の保寧(ボリョン)製薬グループ傘下のITシステム子会社であるBRネットコムと、情報配信ツール「Handbook(ハンドブック)」の販売契約を締結し、韓国での事業展開に乗り出した。両社は韓国で会見を開き、平野社長が韓国企業の関係者を前にスマートデバイスの市場性や「Handbook」の特徴や導入事例などを紹介。韓国事業に対する強い意気込みを示した。(取材・文/信澤健太)

韓国企業の関係者を前にスピーチしたインフォテリアの平野社長
保寧製薬グループは、龍角散や救心など、日本企業との業務提携を通じて、韓国初の高血圧新薬を開発した企業。バイオテクノロジーやヘルスケア、アパレルなどの新規事業を立ち上げて、多角化戦略を採ってきた。
2011年12月に「Handbook」の採用を発表。医薬情報担当者(MR)の営業支援やグループ各社での社内教育に活用している。具体的には、複雑な薬理作用や専門的な医学情報を常に最新の状態で共有。ネット接続に制限がある病院内では、ダウンロード機能を駆使している。
「Handbook」を高く評価した保寧製薬グループは、インフォテリアに対して「『Handbook』を販売したい」と提案を持ちかけた。交渉がまとまって、2012年4月、図書館や公共機関向けのシステム構築を手がけるBRネットコムが、販売代理店として韓国企業に販売を開始した。今後3年間で12億ウォンの売り上げを目指している。
使い勝手のよさをアピール
会見の冒頭で、インフォテリアの平野社長は、スマートデバイス市場が急速に成長していることを紹介。日本国内で、法人向けスマートデバイスの出荷台数が2011年から2016年にかけて約5倍伸びるという予測データ(富士キメラ総研調べ)を引用して解説した。続いて韓国の市場に言及し、「韓国はITデバイス利用の先進市場で、スマートデバイスのさらなる普及が期待できる。スマートデバイス時代に最も必要なのは情報共有のためのプラットフォームであり、クラウドの利用はあたりまえになるだろう。企業の情報をクラウド上で管理することができる『Handbook』は、こうしたニーズに対応する」とアピールした。
日本では、野村證券や日本食研、九州大学など、200以上の企業や教育機関に納入した実績をもつ。2011年度第3四半期の「Handbook」の売り上げは、前年同期比で6倍以上の伸びを示した。平野社長は、「三大通信キャリアであるNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクはユーザーであるというだけでなく、パートナーとしても法人向けに販売している」と状況を話した。
用途の比率は、「営業資料」を筆頭に、「社内の情報共有」「ペーパーレス会議」「教育・研修」「その他」と続く数値を提示。57%のユーザーが複数の用途で利用していることを明かし、さまざまな業界における具体的な事例について説明した。
例えば、エーザイは、全MR・学術担当1700人にiPadと「Handbook」を配布し、医薬品情報の管理に活用。野村證券については、単なるペーパーレス化のみならず、「Handbook」の活用で常に最新の資料配信が可能になり、締め切りが不要になったという利点を強調した。
平野社長は、「Handbook」が選ばれるポイントを五つ挙げた。(1)情報をサーバー側で一括管理して、閲覧履歴やユーザー管理ができるセキュリティの高さ、(2)年齢を問わず全社員が使える利便性、(3)ユーザーや資源の集中管理、(4)各種ファイルや動画などの既存データのフル活用、(5)高いコストパフォーマンス──である。
<BRネットコムに聞く拡販戦略>
韓国事情に応じた提供モデルを考案
──「Handbook」を採用するに至ったきっかけは?
イム 2011年に、保寧製薬はMR用に200台のiPadを導入した。iPadをビジネスに生かすためのアプリケーションを調査するなかで、「Handbook」の存在を知った。インフォテリアに相談したところ、韓国ではまだ事業を展開していないということだった。その後、自社に導入するだけでなく、販売代理店にもなれないかと提案を持ちかけたというのが経緯だ。
──「Handbook」の魅力は?
ビョン 一番の魅力は、カスタマイズいらずで、汎用的に使えるところだ。韓国製品では、カスタマイズが発生してしまう。
──3年間で12億ウォンの売り上げを目指しているが……。
ビョン 2012年に1億7000万ウォン、13年に3億9000万ウォン、14年に6億8000万ウォンの売り上げ達成と60社への納入を目指している。これらの数字は非常に控えめだと思っている。
日本国内では、SaaSモデルの利用が中心のようだが、韓国ではオンプレミスモデルを中心に営業活動を展開する。韓国の企業には、自社のデータを外部に預けたくないという傾向があり、SaaSが十分に普及していないからだ。当社としても売り上げを早く伸ばしたいので、オンプレミスに力を入れるという事情がある。
──日本とは異なる価格体系を採用している点については?
キム 韓国企業はビジュアルコンテンツを多用するので、日本の基準値の500MBではすぐに容量を満たしてしまうという事情を考慮し、SaaSモデルは1GBで400万ウォンからという設定にした。オンプレミスモデルは基本料金が2700万ウォンからで、企業規模に応じて高額になる仕組みを採っている。
──どのように拡販するのか。
キム まずは、同業である製薬会社への直販営業に力を入れ、図書館向けシステムの構築などで実績をもっている教育関連、自治体などに手を広げる。その先の戦略として、通信キャリアとの提携を模索していきたい。

(左から)イム・キジュン課長、ビョン・ジュンウ次長、キム・ソンス常務、チェ・ヘウン課長、ユン・ソンミン代理