デスクトップ環境を仮想化してサーバー上に集約する「VDI(仮想デスクトップインフラ)」。パソコン自体にOSやソフトが入った従来の方式に比べて、サーバーで集中管理するので、ソフトの追加や更新、修正などのメンテナンスが容易になる。米国では、デスクトップ環境を完全に仮想化するVDI本来の使い方が一般的だが、日本ではデスクトップの物理環境を残したままVDIを取り入れるケースが多いという。VDI関連ビジネスに力を入れるネットワールド(森田晶一社長)では、「既存OSを残したままVDI化する」という提案で案件を獲得している。
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ジョセフ アン バイスプレジデント |
ネットワールドは、何社かの海外メーカーのVDIソフトを販売している。そのなかの一つ、米Liquidware Labs製のソフトが、「検討開始」「移行」「展開後」の製品ラインアップがあって、VDIのライフサイクルを網羅するもので、ネットワールドでは販社が売りやすい製品として期待している。デスクトップ環境が複雑化しており、VDI化するにあたってユーザー企業の多くが「どこから始めればいいのか」「どのような手順で移行すればいいのか」といった疑問を抱いている。藤森譲・マーケティング部ビジネス開発グループ係長は、「日本では、ライフサイクルのなかで『検討開始』を求める傾向があり、アセスメント(環境)やPOC(概念実証)を実施するケースが多い」という。そして、「ユーザー企業から『既存OSを残すことができるのか』と質問されることが多い。物理環境とVDI環境を混在させることがポイントになる」とみている。
米国では、すべてのデスクトップ環境をVDI化するケースが多いようだ。米Liquidware Labsのジョセフ アン・バイスプレジデントは、「米国の企業の間では、オフィスを構える意識が薄れている。社員がオフィス以外で仕事をこなすのがあたりまえになっている環境なので、VDIを導入したいというニーズが企業のなかで高まっている」と認識している。実際、同社の昨年度(2011年12月期)の売上高は、前年度の3倍に成長。さらに、今年度は2倍に膨れ上がると見込んでいる。
日本では、企業の多くが本社や支社などオフィスを構えている。本社内のデスクトップ環境をVDI化する必要性を認めないユーザー企業が多いので、物理とVDIの混在環境を提案するのが有効とみられる。
ただ、アン・バイスプレジデントは、「VDI化が進むにつれてすべてのデスクトップをVDI化する米国での導入の仕方が普及することは間違いない」と断言する。そのため、同社はライフサイクルをサポートする製品ラインアップを用意した。ネットワールドは、まず検討段階の製品を販売し、タイミングを見計らって次のステップを提案する。(佐相彰彦)