ネットワークにつなげてリアルタイムに広告や動画コンテンツを配信し、ディスプレイなどで情報を発信する「デジタルサイネージ」。その用途といえば、広告や販促、街中で情報を提供する案内板としての役割が中心になっている。しかし、三菱電機は業務効率化を切り口にして、企業の間接部門をターゲットに案件の獲得に力を入れている。液晶ディスプレイの販社を通じて、オフィス内への導入を促しているのだ。
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阿良田剛 室長代理 |
三菱電機のデジタルサイネージ関連ビジネスは、これまで直販がメインだったが、ビジネスを拡大するためにはユーザー層の拡大が重要と判断し具体的な策を打ち出した。同社製の液晶ディスプレイなどを取り扱うAV(音響・映像)機器の販社がデジタルサイネージシステムを販売できるように、価格11万円と低価格に設定したオールインワンパッケージ「VISEO SMART」を市場に投入した。昨年夏のことだ。この施策によってデジタルサイネージ関連の販社網を構築し、昨年度(12年3月期)の売上高は、前年度比10%増に成長した。デジタルサイネージ関連ビジネスに携わる阿良田剛・戦略事業開発室長代理映像プロジェクト担当は、「今年度は、昨年以上の成長が期待できる」と自信を示している。
「VISEO SMART」の発売当初は、デジタルサイネージのメインターゲットである流通業を対象にして拡販を図った。しかし、この業種をユーザーとして獲得している販社が少なかったこと、流通業の市場環境が厳しく、デジタルサイネージの導入意欲が低いことを判断材料として、他社とは一線を画したユーザー層を模索することになった。着目したのは一般のオフィスだ。販社がユーザー企業の総務部を窓口にしてオフィス向けにAV機器を販売していたことから、「広告や販促といったデジタルサイネージの主流の用途ではなく、業務効率化を前面に打ち出してオフィスへの導入を促すようにした」という。ほとんどの企業は、オフィスの掲示板などに印刷物を貼付して社員への連絡事項を告知する。阿良田室長代理は、「印刷物のコンテンツは、パソコンで作成することが多い。印刷せずに、デジタルサイネージでコンテンツを発信するようにすれば、例えば総務部のスタッフが掲示板に文書を張り付ける時間を短縮できるし、印刷費の削減につながるという提案をしたところ、導入に意欲をみせる企業が多かった」という。
東日本大震災のときには、デジタルサイネージは災害時のパブリックメディアとして評価が高まった。さらに、三菱電機は「オフィスの業務効率化」という切り口を新たに創出した。デジタルサイネージの新たな用途提案が、これまで手つかずだった市場を開拓する際の武器になりそうだ。(佐相彰彦)