三菱化学、田辺三菱製薬、三菱樹脂、三菱レイヨンという四つの事業会社の純粋持株会社である三菱ケミカルホールディングス(三菱ケミカルHD、小林喜光社長)。海外売上比率が全売上高のおよそ3分の1を占める。グローバルレベルでのタレントマネジメントの実践を目指して、ワークスアプリケーションズが開発・販売する「COMPANY グローバル人事」を採用した。急速に進展するグローバル化に対応し、競争力をさらに高めようとしている。
ユーザー企業:三菱ケミカルホールディングス
2005年10月、三菱化学と三菱ウェルファーマ(現・田辺三菱製薬)の共同持株会社として設立。2008年4月に事業統合に伴い三菱樹脂が誕生、2010年4月に三菱レイヨンが傘下となった。
プロダクト提供会社:ワークスアプリケーションズ
プロダクト名:「COMPANY グローバル人事」
【課題と狙い】個別最適でデータはバラバラ

三菱化学
二又一幸執行役員 三菱ケミカルHDの中核企業の1社である三菱化学がワークスアプリケーションズの「COMPANY」導入を検討し始めたのは2003年。三菱化学の二又一幸・執行役員人事部長兼人事部人権室長は、「『COMPANY』は、ノーカスタマイズでバージョンアップ料が不要。標準機能は充実しているし、製品コンセプトがしっかりしている」と評価する。SAPシステムのバージョンアップのタイミングで「COMPANY」に移行した。
当時は、グローバルレベルでのタレントマネジメントは検討事項に入っていなかった。それが変わり始めたのは、三菱化学と三菱ウェルファーマの共同持株会社として三菱ケミカルHDが誕生した2005年頃である。2010年に現在の4事業者体制となった。「企業規模が大きくなり、グローバル事業が飛躍的に拡大した。だが、グローバル化が進展するなかで、世界で抱える人材を十分に活用できずに眠らせていた」(二又執行役員)。各国の拠点では、現地で人材を採用して個別に管理していた。日本本社は、どのような人材がどの国にいるのかという情報はもちろん、拠点間の人材交流を行うこともできていなかった。
国内外の人材の把握と適正配置、優秀な外国人スタッフの採用、発掘、育成──。二又執行役員はタレントマネジメントについて、「学歴や仕事、年齢など、現在の属性データを把握するだけではなくて、これからどうするのかをきちんとサポートできるもの」と捉える。現地法人の経営幹部や将来の幹部候補などの人材を把握し、キャリアアップを見据えたローテーションを実施できるようにすることを目標に掲げる。
【決断と挑戦】システム構築のスピードを重視
日本本社が主導するグローバル人事データベース(DB)の整備を進めるにあたって、まず取りかかることを決めたのが「人材の見える化」だった。三菱化学グループのシェアードサービス企業は、国内の1万9000人程度の給与計算や人事データの管理を担っているが、未だカバーできていないグループ企業が少なくない。こうした未カバー分に加えて、田辺三菱製薬、三菱樹脂、三菱レイヨンが共通して導入している「COMPANY」の国内人材データベースを統合する。
国内だけならまだしも、グローバルレベルでタレントマネジメントを実践するのは難しい。主に外資系企業のタレントマネジメントシステムの構築プロジェクトをみると、グローバルレベルでシステムを一元化する「統一型」が目立つ。このタイプは、業務評価制度やグレードなどを統一することが多い。だが、従来システムや制度がバラバラで個別管理だった企業の場合、コストと時間がかさんでしまう。日本企業は、現地法人が独立独歩で事業を展開しているケースが多く、「統一型」は実現のハードルが高い。
三菱ケミカルHDが選択したのは、多様性を認めた「共生型」のタレントマネジメントだった。評価や制度の仕組みは各国の個別最適に任せて、システム構築のスピードを重視する方法である。これを実現するのが、新たに導入する「COMPANY グローバル人事」のグローバルリンク機能で、各国が独自に採用している評価方法やグレードの情報をそのまま吸い上げてグローバル人事DB用の管理項目に自動変換。同一の指標上で情報を蓄積できるようになる。
まずは、2013年3月に三菱化学グループのDBを統合し、順次他の事業会社でも同様の取り組みを進める予定だ。三菱ケミカルHDで、地域ごとに人事責任者を据えるグローバル人事チームを組織し、グローバルレベルで人材ニーズを把握できるようにする意向も示している。(信澤健太)
3つのpoint
目的を明確にする
日本特有の事情を踏まえる
構築のスピードを重視する