大きくなるスマートフォンとタブレットの存在感
個人向け情報端末の勢力図が大きく変わりそうな2013年。その中心は、やはりスマートフォンとタブレット端末だ。
スマートフォンは、市場の立ち上がりで急激に伸びていた状況からややスローダウンして、安定成長期に入った。従来型の携帯電話の巻き返しも考えに入れると、携帯電話全体に占めるスマートフォンの販売台数構成比は8割あたりを天井に推移していくとみられる。
こうした電話タイプの携帯端末は、より大容量データを必要とするサービスを利用するための情報機器として進化・拡大していくだろう。
また、昨年末に急速に立ち上がってきたタブレット端末は、今年、さらに大きく飛躍しそうだ。GoogleとASUSがタッグを組んで発売した「Nexus 7」の垂直立ち上がりは、近年にない現象だった。テレビCMの大量投下と価格の安さとが相まって、一気に7インチ台タブレットの市場を形成した。アップルの「iPad mini」を凌駕する勢いで、「iPad」のひとり勝ち状況から競争状態に突入して、ようやくタブレット市場が本格的に始動したといえる。
求められる「PC」の再定義
スマートフォンとタブレットの拡大がもたらすのは、情報消費型の用途での脱PC現象だ。これまでにも増してスローなスタートとなった「Windows 8」の状況を考え合わせると、メールとウェブの閲覧だけというライトなPCユーザーは、一気に安価なタブレットに流れる可能性がある。それを食い止めるのは、PCの存在意義の再確認と再定義だ。
文字入力や画像加工など、情報の加工生産では、依然としてPCのアドバンテージは大きい。ゲームやHD動画のハンドリングなど、大きなCPUパワーを必要とするような作業には、コストパフォーマンスの高いPCが不可欠。スマートフォン、タブレット、PCと、用途に応じた使い分けをどれだけ具体的に提示・提案できるかが、市場を維持・拡大していく鍵になるだろう。また、関連する周辺機器も、新しい端末環境に適応し、生じるすき間を埋める製品を提案し続けることができるかどうかが拡大のポイントになる。
高い製品が売れる「カメラ」に学べ
スマートフォンとの食い合いで、苦戦が続くコンパクトデジタルカメラ。平均単価は1万円台半ばまで落ち込み、メーカー各社はコモディティ路線を続けるだけではビジネスの継続すら危ぶまれる状況に追い込まれている。しかし一方では、1/1.7インチ以上の大きな撮像素子を搭載し、平均単価も4万円を超える「高級コンパクト」市場が立ち上がっている。販売台数構成比ではまだ5%にも満たないが、販売金額では1割を超えた。従来型製品の市場がじりじりと縮小するなか、この高級コンパクトは、前年比30~40%増の勢いで拡大が続いている。特徴は、画質のよさ。とりわけ暗所での少ないノイズと、速いレスポンスだ。画質や使い勝手といった本来カメラに求められる要素を満たすために、真正面から取り組んだ製品といえる。これは、スマートフォンではなかなか実現できないカメラとしての本質的な機能を高める姿勢ともいえる。高級コンパクト市場の拡大は、製品の本質をもう一度確かめ、進化させていくことで、新たな市場が生まれる好例だ。
同じものを同じように提案し続けていれば、最終的には価格競争に陥る。新しい価値を新しい製品で、新しい価値を新しい組み合わせで生み出す──。2013年はあらゆるカテゴリの製品の本質的価値と機能の再認識・再定義が必要な年になるだろう。
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