ITの比較的新しい商材として、タレントマネジメントシステムが大企業を中心に普及し始めている。インフォテクノスコンサルティングの「Rosic」も、多くのユーザーを獲得している。もともとSAPパートナーとしてのビジネスが事業の柱だったT4Cが、「Rosic」の販売パートナーとなったのは2010年。「Rosic」に惚れ込み、新規事業立ち上げをリードしたのが、森谷さんだ。変化が激しいIT業界で、新たな商材を売るための手法とは──。(構成/本多和幸 写真/大星直輝)
[語る人]
●profile..........森谷 多加志(もりや たかし)
2001年、法人向けITソリューションベンダーに入社。大手食品メーカーの営業担当として経営管理システムのソリューション営業に携わる。2002年、T4C設立時に転職してSAP ERPのコンサルタントや技術者のSES営業を担当。2004年以降は、SAP連結会計、BIソリューションの一括案件受託ビジネスを企画し、新規取引、大手ITベンダーとの協業案件を多数成約。2010年からはRosic人材マネジメントシステムの事業開発と営業を担当。
●会社概要.......... SAPソリューションの導入コンサルティングと、インフォテクノスコンサルティングのタレントマネジメントシステム「Rosic」の販売、導入支援が事業の大きな柱。2002年に設立。
●所属..........Rosicディビジョン
セールスグループ
マネージャー
●営業実績.......... 2010年にT4Cが新規事業として取り扱いを始めた大企業向けのタレントマネジメントシステム「Rosic」で、旭化成など16社のユーザーを獲得。2011年、2012年と2ケタ成長を成し遂げて、今年はそれを上回る販売額を見込んでいる。
●仕事.......... 「Rosic」のマーケティング、プリセールス、営業、クロージングまでを担当する。商談全体をデザインして自ら実行するプレイングマネージャー的な活躍をみせる。「Rosic」事業の立ち上げ時から、ほぼ1人で営業を担ってきた。
大手攻略で業界標準に
「Rosic」は、今年8月現在で58社のユーザーを獲得しているが、T4Cの営業協力が決まった当初から、従業員数1000人以上の企業には必ずニーズがあると、私は確信していた。ただし、こうしたエンタープライズ系のソリューションは、案件のリードタイムが長くなる。事業を立ち上げて1年ほどは、具体的な成果まで結びついた案件は出てこなかった。「Rosic」の知名度はこの時点ではまだまだ低く、販売には苦労した。
この時期に私が考えていたのは、まだ未成熟なタレントマネジメントの市場で、デファクトスタンダードとしての地位を獲得できれば、後が楽になるということ。そのためには、とにかく大手の案件を獲得することが決め手になる。セールスはほぼ一人で担当していたので、お客様との出会いの演出から実際のコンタクトの仕方、プリセールスのやり方、そしてクロージングまで、商談全体をデザインしたうえで、お客様に数多く会って、「Rosic」のメリットをPRして回った。
タレントマネジメントのように、比較的新しい商材を売り込む場合、ユーザー企業1社につき、説得しなければならないキーパーソンは2人いるとみている。1人は、新しいソリューションの導入を企画して、社内の変革を推進しようとしている人。そしてもう1人は、それを決裁する人だ。基本的に、一度デモを見てもらえさえすれば、前者を説得するのに苦労することはなく、そこで「Rosic」の商品力の高さを実感するのだが、後者を説得するのはハードルが高い。
ITベンダーとしては、前者であるユーザー企業内の変革者と同じ方向を向き、一緒にプロジェクトを推進するという意識が大事で、法人向けのITソリューション営業の本質はそこにあると思っている。その人が、どうしたら社内を説得できるのかという視点で、協力しながら論理を積み上げていく。ヒアリングなどの情報収集をしたうえで仮説を立て、それを検証するという作業をとにかく繰り返す。ここで説得力のあるシナリオをつくることができなければ、相手にも迷惑をかけてしまうので、責任は重大だ。
そうした取り組みが実を結び、これまで私が営業で関わっただけでも16ユーザーを新たに獲得することができた。なかでも、昨年7月に発表した、旭化成からの受注は大きなインパクトがあり、これをきっかけに、「Rosic」のユーザーは加速度的に増えている。大手を切り崩してデファクトスタンダードを狙うという戦略が、成功しつつあるという手応えがある。
(編集部)次号では、森谷さんの営業パーソンとしての基礎をつくったSAPビジネスの営業時代のエピソードを紹介する。