無線データ通信事業を手がけるUQコミュニケーションズ(野坂章雄社長)は、人材の戦略的活用を目指して、インフォテクノスコンサルティングが開発する「Rosic人材マネジメントシステム」の導入を決断した。検討にあたっては、社内から製品の知名度の低さや導入実績の乏しさを懸念する声が挙がったが、使い勝手のよさやデータ活用の柔軟性を高く評価した。労働時間シミュレーションや目標管理などに取り組んでおり、稼働開始から約半年が経過した現在、すでに確かな効果が出始めている。
ユーザー企業:UQコミュニケーションズ
2007年、KDDIの100%出資子会社としてワイヤレスブロードバンド企画を設立。2008年3月、UQコミュニケーションズに社名を変更。2009年、UQ WiMAXサービスの提供を開始した。
プロダクト提供会社:インフォテクノスコンサルティング
プロダクト名:「Rosic人材マネジメントシステム」
【課題と決断】懸念を払拭する使い勝手のよさ
UQコミュニケーションズは、人事情報や勤怠情報をMicrosoft ExcelやMicrosoft Accessで管理し、給与管理には市販のパッケージソフトを使用していた。インフォテクノスコンサルティングの「Rosic人材マネジメントシステム」は、手作業の管理を自動化し、人材の戦略的活用を進める目的で選んだ。長野修平・コーポレート部門総務・人事部人事グループマネージャーは、「社長の野坂は海外経験が長く、人材の見える化や目標管理をしっかりやりたいという思いを強くもっていた」と話す。
長野マネージャーは、2010年11月、ある人事関連セミナーでインフォテクノスの斉藤由美取締役が登壇した講演を聞いた際に、「Rosic」に関心をもったという。従業員のキャリアプランやスキルなどをポータル画面で一覧できる機能を実装している。「データを管理するだけではなく、データをいかに現場で使ってもらうか。人材情報を見える化して活用することを主軸に説明していて、従来製品との違いを感じた」。
他のITベンダーの製品を含めて社内での検討に入り、「Rosic」を高く評価したが、その知名度の低さと実績の乏しさゆえに、社内からは懸念する声が挙がった。製品のリリースは2003年で、現時点では50社弱のユーザー企業を抱えるが、売れ始めたのはここ数年。長野マネージャーは、「社内の説得が結構大変だったが、データ活用の柔軟性などをアピールして受け入れてもらった」と経緯を語る。例えば、組織時間外レポート機能では、従業員別に年間の労働時間シミュレーションを行い、時間外労働が限度として定められた時間を超えるかどうかを明示する。また、人件費のシミュレーションにも応用できる。
勤怠管理システムには他社製品のエンジンを使うが、インフォテクノスのパートナー企業であるT4Cがインターフェースをつくり込んで、ポータル画面から勤怠管理や目標管理の状況を確認できるようにした。UQコミュニケーションズにとって、こうした提案も魅力に映った。
【効果】機能を使いこなして効果を実感
2011年10月、勤務管理システムがひと足先に本稼働し、翌年4月には「Rosic」の目標管理機能を利用し始めた。現在、他のシステムと合わせてクラウド上で動いている。稼働から半年ほどが経過し、すでに手応えを感じている。長野マネージャーは、「これまでは上期、下期でそれぞれ目標を立てても、期末まで1回も確認しないことがあった。今は期中に進捗を確認して、部下が上長に相談できるようになっている。目標管理の質が改善できた」と語る。
このほか、コミットメント機能の活用による積極的な情報共有も行っている。部長級以上がもつ事業部門・個人のコミットメント(公約した目標)を全社で共有し、進捗や見直した内容もすべて追えるようにした。事業部門・個人のコミットメントを確認することで、会社の方向性や社員自身がなすべきこともみえてくる。長野マネージャーは、「半期ごとに誰でも参加できる発表会も開催しており、システムとリアルの両方で情報の共有を図っている」と説明する。ただ、コミットメント機能の活用は個人の評価を公表することに近い。反発は少なくなかったが、「社長が直に説明して、何でもオープンにしていこうという姿勢を示した」(長野マネージャー)という。
数値に現れる目に見える効果として、時間外アラート機能による残業時間の削減がある。残業がかさむと、上司に原因と対策をレポートしてもらう仕組みとなっており、結果的に規定の残業時間を超えることがなくなった。上期は、残業時間が前年度比で10%以上減ったという。
これから取り組むのが、人材の見える化だ。まずは資格やスキル、能力情報を入力したキャリアシートの作成を進めるという。(信澤健太)
3つのpoint
データ活用の柔軟性
要望に応える提案力
明確な目的と実行