今年で25回目を迎えた「全国高等専門学校プログラミングコンテスト(高専プロコン)」の本選が、10月18~19日の2日間にわたって開催された。会場は岩手県一関市の一関文化センター。一関市での開催は、2011年を予定していたが、東日本大震災の影響で開催場所の変更を余儀なくされた。今回は節目の25回目ということで開催が実現。3年の歳月を経て一関市で開催されるとあってか、会場は熱気に包まれた。そして、全国から集まった高専生たちの競い合いが繰り広げられた。(取材・文/佐相彰彦)

復興は進みつつあるが、郊外にはまだまだ荒地が目につく一関市
東日本大震災の際に避難所になった一関市役所
2011年開催の第22回で使うはずだった一関大会の幻のポスターキャッチコピーは「イーハトーヴ」 プログラミング技術で希望郷をつくる
東日本大震災で、全壊した住居が57棟、半壊734棟、一部損壊3367棟という被害を受けた一関市。JR一関駅前には飲食店をはじめ多くの店舗が建ち並んでいるが、郊外には至るところに荒地が残っている。復興に向けた作業は進んでいるとはいうものの、元に戻るのには時間がかかりそうだ。
東日本大震災の影響は高専プロコンにも及んだ。2010年に高知県高知市で開催され、次は一関市での開催が予定されていたが、東日本大震災が発生して断念せざるを得なかったのだ。しかし、主催の全国高等専門学校連合会や共催の高専プロコン交流育成協会、高専の教師や生徒など、関係者の誰もが一関市での開催を待ち望んでいた。そして第25回を迎えた今年、節目ということもあって一関市で開催されることになった。
高専プロコンは、情報処理技術の向上や、教員・学生の交流機会の拡大などを目的として、高専の学生が備えている若くて力強いエネルギーや柔軟な発想力を世の中に紹介したいという願いを込めて開催しているプログラミングコンテストだ。1990年に京都府京都市で第1回の大会が開催され、今年で25回目を迎えた。今年の大会キャッチコピーは岩手県にふさわしく「とどけよう、イーハトーヴの風~僕らが創る希望郷~」だ。「イーハトーヴ(理想郷)」は宮沢賢治の造語。「岩手(イハテ)」をもじったとの説があるだけに、高専生たちがプログラミング技術で新しい未来を切り拓き、一関市に希望を与えるという熱い想いがひしひしと伝わってくる。
テーマは「防災・減災対策と復興支援」 課題部門は高知高専が最優秀賞
事前審査を勝ち抜いた高専が集う本選は、「課題部門」「自由部門」「競技部門」の3種類があり、それぞれの部門でテーマに沿ってプログラミング技術を競い合う。課題部門は、「防災・減災対策と復興支援」をテーマにITで何ができるのかを模索。最優秀賞は、津波避難タワー間を結ぶ安心防災システム「つながっタワー」を開発した高知工業高等専門学校(高知高専)が獲得した。自由部門は、「風」の表情を感じさせるシステム「すくえあ」を開発した香川高等専門学校(詫間キャンパス)が最優秀賞、競技部門は大阪府立大学工業高等専門学校が優勝した。
総括では、審査委員長を務めた情報処理学会フェローで高専プロコン交流育成協会理事長の神沼靖子氏が登壇し、「年を追うごとにレベルアップしている」と評価したうえで、「今回のコンテストが終わると、すぐに次回のコンテストに向けたプロジェクトが始まる。1年間、新しいアイデアを生み出すことにとことん力を尽くしてほしい」と激励して、コンテストの幕を閉じた。
なお、BCNは、ITジュニア育成交流協会(A.JITEP)などの協力を得て、高専プロコンをはじめとする全国のコンテストで優秀な成績を収めた個人・チームなどを表彰する「BCN ITジュニア賞」を2006年から開催している。来年1月には、「BCN ITジュニア賞 2015」を開催し、10回目という節目を迎えることになる。

「つながっタワー」で課題部門最優秀賞の高知工業高等専門学校に表彰状とトロフィーが授与された
自由部門は香川高等専門学校(詫間キャンパス)が最優秀賞。「風」の表情を感じさせるシステム「すくえあ」を開発
切り分けられた断片画像を原画像に並べ替えるパズルゲーム(写真下)。この競技部門で大阪府立大学工業高等専門学校が高専プロコン優勝の座を獲得