都築電気は、シルバー市場でのビジネス拡大に強い意欲を示している。同社は富士通のビジネスパートナーとして医療・介護市場で盤石な顧客基盤を築いており、この基盤を生かすことで高齢者関連ビジネスの拡大を目指す。今年10月から主力の介護事業者向け統合管理システムを大幅にバージョンアップし、ソーシャルメディアやビッグデータ分析などの付加機能もオプションで拡充していく。こうした情報システムをベースに、将来的に高齢者の生活支援や介護予防、住まいなどの関連サービスへのシステムビジネスを加速させる考えだ。(取材・文/安藤章司)
すそ野が広いシルバー市場
高齢者人口の増加を受けて、シルバー市場は医療・介護を中核として、食材の宅配や独居老人の見守りサービス、生活用品の巡回販売などにすそ野が広がっている。都築電気はこれまで富士通系のパッケージソフトを中心に電子カルテで500か所余りの医療機関、介護事業者向け業務システムで約7000事業所への納入実績をもっている。約7000の介護事業所向けのうち約4000事業所は、都築電気が独自に開発した介護事業者向け統合管理システム「KitFit SilverLand(キットフィット シルバーランド)」シリーズを納入してきた。
同社は、シルバー関連市場を、大きく三つの領域に分けて捉えている。まず一つ目が当事者である高齢者自身。二つ目が高齢者にとって欠かせない医療・介護サービス。三つ目が高齢者向け仕出し弁当や、見守りサービス、生活用品の訪問販売といった街全体を捉えたビジネスである。都築電気の尾山和久・執行役員ビジネスソリューション本部副本部長は、「直近のシルバー市場向けビジネスの柱は、医療・介護領域のシステム販売だが、将来的には街全体をターゲットとしたシステムビジネスを視野に入れている」と話す。

タブレット端末の画面イメージ100兆円規模の市場に拡大
都築電気では高齢者当事者をシルバー領域、医療・介護をゴールド領域、さらに高齢者自身の消費や街全体のあらゆる高齢者向けサービスをプラチナ領域と位置づけ、戦略的に関連商材の拡充に取り組む。プラチナ領域まで含めると市場規模は2025年にざっと100兆円規模に拡大する「非常にすそ野が広いビジネス」(浅見哲也・社会システム営業統括部統括部長)とみていて、医療・介護分野で実績豊富な都築電気の強みを前面に押し出していく。
団塊世代が75歳を迎える2025年には、高齢者人口は今よりも730万人増えて、高齢化率は30%を超える(厚生労働省)。必然的に要介護の人口も増えることになるが、財政上、医療・介護にかかる費用を青天井で膨らませるわけにはいかない。そこで登場するのが在宅医療・介護情報ネットワークである。訪問介護や病院、歯科診療所、調剤薬局、訪問看護ステーションなど高齢者を支援する事業者をネットワークで結んで情報を共有。老人介護の効率化を図ることで費用の抑制を図る仕組みだ。厚生労働省では、「地域包括ケアシステム」の名称で、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的の下、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制の構築を推進している。都築電気は、こうした国の方針に沿うかたちでシルバー関連ビジネスの拡大に取り組む。
連携ビジネスを本格展開へ
10月に大幅リニューアルした都築電気の介護事業者向け統合管理システムであるKitFit SilverLandは、(1)電子カルテから介護記録を呼び出す機能を強化したり、(2)タブレット端末で介護記録を閲覧。さらに(3)介護版ソーシャル機能で本人や家族、ケアマネージャー、ヘルパー、医師、看護師などでの情報共有や、ビッグデータ分析機能を実装できるようにした。とくに(2)は投薬の時間や床ずれ防止の寝返り、水分補給などの時間を設定しておけば、ヘルパーの誰が、いつ、どのような処置をしたのかの情報を共有しやすくなる。

左から浅見哲也統括部長、尾山和久執行役員、小畑英介室長 都築電気の小畑英介・社会システム営業統括部福祉ビジネス推進室室長は、「タブレット端末対応のシステムは、従来のバインダー代わりにヘルパーが持ち歩くことを前提に開発した」と話す。(3)のソーシャル機能は、高齢者と離れて住む家族が、どのような介護サービスを受けているのか、容態はどうなのかといった情報を気軽に参照できるよう設計した。(1)の介護記録だけではわかりづらい非定型の情報を共有することで、「より心のこもったサービスになる」(小畑室長)とみる。
都築電気は、これまで医療・介護システムは直販主体で販売してきたが、街全体の高齢者向けサービスを提供するプラチナ領域になると「さまざまな業種・業態のビジネスパートナーと組んでいくことが欠かせない」(尾山執行役員)と捉えて、連携ビジネスを積極的に展開。これらの取り組みによってシルバー市場における事業拡大を目指す。