日本KFCホールディングスは、固定資産管理システムを手組みのものから、パッケージソフトへと切り替えた。従来は手組みの「建築システム」のなかに固定資産管理機能を組み込んでいたが、「税制改正のたびに固定資産管理部分を手直ししなければならない」(日本KFCホールディングス情報システムユニットの渡邊敦子氏)ことから、パッケージへの切り替えを決めた。選定したパッケージはプロシップが開発する「ProPlus固定資産システム」。国内外3700社というユーザー数の多さが決め手になった。
【今回の事例内容】
<導入企業>日本KFCホールディングス三菱商事のグループ会社で、全国にケンタッキーフライドチキン約1160店、ピザハット約360店などを展開している
<決断した人>情報システムユニット
渡邊敦子 氏
2003年、パソコンのインストラクターとして店舗での操作指導を手伝ったのがきっかけで入社。以来、財務会計や固定資産などの情報システム管理を担っている
<課題>手組みの固定資産管理システムを使っていたが、制度改正のたびにシステムを手直ししなければならず、コストがかさんでいた
<対策>プロシップが開発するパッケージソフト「ProPlus固定資産システム」に切り替える
<効果>制度改正への対応はプロシップが期日までに行ってくれるので、制度改正の対応にかかる時間やコストを削減することができる
<今回の事例から学ぶポイント>「ProPlusシリーズ」のユーザー会の活動が活発で、ここで得られる制度対応のノウハウも役立っている
制度改正の期日に追われる
日本KFCホールディングスは、独自に構築した「建築システム」で固定資産の管理を行っていた。ケンタッキーフライドチキンやピザハットなどを運営する同社は、店舗の内装や厨房機器、机・椅子など固定資産(償却資産)に該当するものを3万件ほど保有している。店舗をつくる(建築する)ときに、固定資産も一緒に管理したのが始まりだが、いかんせん固定資産は税制改正のたびに、毎年のように細かな修正が入り、大規模改正のときは、システムの大幅な手直しに追われることになる。
自社の会計部門や専門家の分析や意見にもとづいて、システムの該当部分を手直ししていたが、「会計部門から何日までに直してほしいというリクエストがくる。限られた期日のなかで改修しなければならず、私たち情報システム部門にとっては負担が大きく、コストもかかる」(渡邊氏)という状態が続いていた。
こうしたなか、財務会計のシステムを、従来の手組みのものからSCSKのパッケージソフト「ProActive E2」へ2010年4月に切り替えたタイミングで、固定資産管理も翌年に建築システムから切り離して、パッケージを使うことを決めた。
「パッケージソフトならば、税制改正時の改修は、基本的にパッケージベンダー側でやってくれる」(渡邊氏)ので、運用コストまで含めたTCO(総所有コスト)が安くなるとみたからだ。詳しく調べてみたところ、導入時の初期費用だけをみれば、従来と大差ないものの、渡邊氏が事前に想定した通り、その後の改正対応の改修費まで含めると、手組みは運用負荷が大きく、コストも高くつくことが判明した。そして、数ある固定資産管理システムのなかで、日本KFCホールディングスが選んだのが、プロシップが開発する「ProPlus固定資産システム」だった。
活発なユーザー会が支えに
固定資産管理システムは、基本的に国や自治体が定める税制に沿って固定資産を管理するためのシステム。機能に大きな違いがないなかで、選定の決め手となったのが「ユーザー会の大きさと、活発に活動しているかどうか」だった。「ProPlus固定資産システム」は、国内外3700社に納入してきた固定資産管理の定番ソフトであり、「ユーザー会での活発な情報交換が期待できる」(渡邊氏)ことが、選定に大きな影響を与えた。

プロシップ
山形知義
システム営業本部リーダー 固定資産管理の重要な役割の一つである固定資産税の支払いでは、制度改正をどう解釈し、「システムに落とし込んでいくのか」が非常に重要なポイントになる。パッケージを採用したことによって、一義的には開発元であるプロシップが期日まで対応する。だが、そこから財務会計につなぎこんだり、あるいは会計部門から「こんな使い方はできないか?」との問い合わせがきたとき、他のユーザー企業がどのように対処しているかは、「とても参考になる」という。
情報システム部は会計や税務の専門家ではないので、他のユーザーの取り組みを参考にできるかどうかは、システムの運用効率を大きく左右するというわけだ。例えば、納付関連の書式を各自治体のものに合わせたり、店舗が自治体の境にまたがって立地している場合の処理など、開発元からの情報やフォーマットの提供、ユーザー会に参加している他のユーザーの取り組みは、大いに参考になったそうだ。
プロシップ側も、「ユーザー会で要望が多い機能については、優先して実装している」(山形知義・システム営業本部リーダー)というように、ユーザー会を重視している。最近の例では、「過年度のデータを参照しやすくしてほしい」というユーザーの要望を製品に反映するなどの取り組みを行っている。こうしたユーザーの利便性向上に努める姿勢が評価され、日本KFCホールディングスのような新規ユーザーが増える好循環につながっている。(安藤章司)