中国のIT企業は、巨大なマーケット規模を誇る中国国内だけでなく、その存在感を他の国でも示し始めており、世界のIT市場において無視できない存在になった。中国の有力IT企業は今、どのような戦略で世界市場を深耕しようとしているのか。中国で有力なソフト開発企業、ハードメーカー、ディストリビュータが今進めている戦略を紹介する。(再編集/『週刊BCN』編集部)
東軟集団(ニューソフト)
クラウド型業務プラットフォームの新版を発表
●知的財産権を有する製品を強化 東軟集団(ニューソフト)は、10月10日、アプリケーションプラットフォームの「SaCa(Secure Social Active Connected Cloud with Awareness) v2」と、「UniEAP(Unified Enterprise Application Practices) v4」を発表した。
東軟集団の王勇峰総裁は、製品発表会の冒頭、「直近2年は、先月の東軟雲科技(ニューソフトクラウドテクノロジ)の再編も含め、大幅に組織再編を行った。私たちは、東軟集団の成長の原動力が何かを、絶えず探し続けている。今はそれが知的財産を蓄積した製品と知的財産権だとみている」とし、その代表例としてSaCaとUniEAPを挙げ、両製品の販売を強化する姿勢を鮮明にした。
SaCaとUniEAPは、東軟集団がおよそ20年の間、ノウハウを蓄え続けているプラットフォーム製品で、業界向けソリューションとアプリケーションソフト・サービスを迅速に構築するうえでのベースになる戦略的製品だと王総裁はいう。

王勇峰総裁 ●顧客のニーズに応える基盤 UniEAPは、ソリューション統合アプリケーションプラットフォームで、東軟集団が手がけたアプリケーションの製品化や部品化にも活用してきている。今回発表した新バージョンのUniEAP v4は、ソフト開発のサポート機能が加わり、変化の激しいビジネス環境のなかで、ユーザーの業務を迅速に支援することを目的に改良されている。
一方、SaCaは、東軟集団がBtoBtoCビジネスモデルへの転換を図るために開発したサービス群である。シリーズには、プッシュ型のクラウドプラットフォーム「CloudPush」、開発プラットフォーム「WWF」、クラウドアプリケーションサポートプラットフォーム「ACAP」、データ可視化プラットフォーム「DataViz」、移動端末管理プラットフォーム「EMM」などが含まれる。
東軟集団は、SaCaとUniEAPで、企業向けのインターネットアプリケーションの迅速な構築を支え、モバイルインターネットによる業務効率の向上をサポートする。(『SP/計算機産品与流通』2014年10月 第11期第17巻より)
神州数碼(デジタルチャイナ)
3Gのモバイル端末向けミドルウェア「zBuilder」を発表
●モバイルアプリの課題を解決 モバイルインターネット時代にアプリケーションソフトの開発者を最も悩ませるのは、異なるOSの互換性だろう。開発者はこれまで、主に二つの方法のどちらかでこの課題を解決してきた。一つはHTML5で、もう一つがOS専用言語で開発するネイティブ形式。前者はOSにマルチ対応するけれども高度なスキルが必要となり、後者は効率が悪いという問題があった。
9月19日、神州数碼(デジタルチャイナ)は、モバイルアプリケーションの開発者向けサービスの充実を図るために、自社開発のモバイル開発プラットフォーム「zBuilder」をリリースした。
zBuilderは、過去数年の間、デジタルチャイナの社内で使用してきたツールだ。デジタルチャイナのスマートシティ戦略において、zBuilderはすでに300種類以上のアプリケーションを開発してきた実績がある。「この数年で、zBuilderはすでに4回バージョンアップしており、現在のVer4.0は十分に成熟している。今が絶好のチャンスだ」と、デジタルチャイナのモバイルインターネット事業部の朱斌総経理はアピールする。

モバイルインターネット事業部の朱斌総経理 ●三つのモバイル環境に自動対応 デジタルチャイナは、製品発表会で、IDE(統合開発環境)開発ツールや基本バージョン、そして関連するサービスを完全に無償にすることを発表した。個人の開発者であっても申請すれば、無償ですべてのサービスを利用することができる。来年にはソースコードも公開する。
モバイルアプリケーションの開発プラットフォームの一つとしてzBuilderがすぐれている点は、iOSとWindows Phone、Androidで稼働するアプリケーションを一度に開発できることだ。ユーザーインターフェースも、種類が豊富なさまざまな形状のディスプレイに自動的に対応するので、開発者の負担は劇的に少なくなる。
「zBuilderはさまざまな開発現場で有力なツールになることは間違いない。ユーザーの競争力を強めることができるだろう」と朱斌総経理は展望を語る。(『SP/計算機産品与流通』2014年10月 第11期第17巻より)
聯想集団(レノボ)
法人向け事業戦略「騰雲計画」 50か所のクラウドセンターを設置
聯想集団(レノボ)は、今秋、法人向け事業戦略「騰雲計画」および新サーバーシリーズ「ThinkServer Gen5」を北京で発表した。発表会では、独自開発のクラウドプラットフォーム管理ソリューション「Think Cloud」も披露した。
レノボ・グループの中国区およびアジア太平洋新興市場の陳旭東・総裁は、「騰雲計画によって、中国国内に50か所のクラウド(コンピューティング)センターを設置し、クラウドインフラを構築する専門家を、1000人以上育成する予定だ。クラウドのオープンなエコシステムをつくり、クラウドを中心に業務を展開する100社のソリューションパートナーを募集する」とコメントした。
レノボグループのジェリー・スミス・エグゼクティブバイスプレジデントは、「法人向け事業はレノボにとって、PC事業と同じく重要なビジネス。IBMのx86サーバー事業を買収したこともあり、グローバルのサーバー市場でトップを狙っている」と話し、PCと同様にマーケットシェアNo.1に対する意気込みを示した。
レノボは、モバイル端末からPC、法人向け製品をラインアップすることを強みに、クラウドのコンサルティングから設計、構築、運用までを手がけ、中国のユーザーに対してエンド・トゥ・エンドのクラウドソリューションを提供する。さらにマイクロソフトやインテル、シトリックス・システムズ、阿里雲(Aliyun)といったパートナーとの協業をさらに深め、PaaSやSaaSに対するユーザーのニーズに応える。
また、阿里雲のクラウドパートナープログラム「雲合計画」の重要なパートナーの1社として、アリババのクラウドプラットフォームとレノボのクラウドインフラを組み合わせたソリューションを顧客に共同で提供する予定だ。(『SP/計算機産品与流通』2014年10月 第11期第17巻より)
『週刊BCN』は、季刊発行(3月、6月、9月、12月)する中国特集号で、中国ITベンダーの動向や欧米系ITベンダーの中国でのパートナービジネス戦略情報を発信しています。そのなかで、BCNの中国子会社・比世聞(上海)信息諮詢は、中国IT業界のパートナービジネスの領域でメディア・コンサルティングサービスを展開するSPと協業し、情報収集・発信体制を強化。その一環として、SPのコンテンツの一部を活用しています。この記事は、SPが発行する中国IT専門メディア『計算機産品与流通』(「コンピュータ製品と流通」の意味)で掲載した記事を、BCNが翻訳・再編集したものです。