九州・福岡でデータセンター(DC)事業を展開するキューデンインフォコム(田嶋正彦社長)とBCN(佐藤敏明社長)は、11月19日、東京・大手町のフクラシア東京ステーションで「SIer必見!データセンター活用セミナー」を開催した。多くのDC事業者が市場に参入している状況にあって、クラウドサービスを提供しようとしているSIerやISV側からみれば、どのDCを使えば自社サービスの強みを生かせるのかの選定が難しくなってきている。セミナーでは、SIerがクラウドビジネスと取り組む際のポイント、遠隔地(福岡)DCの特徴と事例を交えた活用法などを紹介した。(取材・文/木村春生(フリージャーナリスト) 写真/長谷川博一)

セミナーにはSIerやISVなどが参加したSIerのクラウド提供は不可避
自らITを使って価値を生み出す
セミナーは基調講演から始まり、ネットコマースの斎藤昌義代表取締役が登壇。「システムインテグレーション崩壊~ポストSIビジネスのシナリオ~」をテーマに今後のSIerのあるべき姿について示唆した。
斎藤代表取締役は、「ユーザー企業とSIerとの間にある、ゴールの不一致と相互不信という『構造的不幸』『生産年齢人口の減少』『意思決定権をユーザー部門へシフトする動き』によって、人月ベースの従来型SIモデルは崩壊する」と述べたうえで、「SIerがクラウドをベースにビジネスを手がけることは不可避になる」と訴えた。
また、独自技術など自社の強みを生かしてビジネスを創出するという「シーズ起点」ではなく、ユーザー企業の「こういうものがあったらいい」という要望からビジネスを生み出す「ニーズ起点」でアプローチするべきと説いた。さらに、顧客価値を追求したSIビジネスを実現するために「クラウドとオープンソースソフトへの対応を強化し、生産技術を追求することで、お客様にITを使わせるビジネスから、自らITを使って顧客価値を生み出すビジネスにシフトしていくべきだ」とした。

(左から)斎藤昌義 ネットコマース 代表取締役、
石井基大 キューデンインフォコム iDCソリューション営業部 部長兼サービス企画 グループ長「低リスク」「利便性」が魅力
「データセンター福岡空港」を紹介
続くセッション1では、キューデンインフォコムの石井基大・iDCソリューション営業部部長兼サービス企画グループ長が「大切なものほど、安全な場所へ 事業継続を支える『データセンター福岡空港』の魅力とは」と題して講演した。石井部長は、2003年からサービスを提供している同社のDC事業について触れながら、地震などの災害リスクが低いだけでなく、利便性が高い「福岡」の優位性を訴求。東京に本社を置く企業などが、BCP対策や交通アクセスのよさに注目して同社のDCを利用している事例を紹介した。加えて、2015年8月にオープンする予定の新しいDC「データセンター福岡空港」について、「DCに適した安全な立地で、強固なファシリティ、安定した電力供給、厳重なセキュリティを備え、人にもやさしい快適な環境を実現している」と強みをアピールしたうえで、「企業にとって重要な業務機能の確保には、地域分散が最も効果的」と訴えた。

(左から)柴田尚明 日立ソリューションズ西日本 産業流通ソリューション事業部 事業部長付、
並河孝和 日立ソリューションズ西日本 クラウドビジネス推進センタ グループマネージャ「高信頼性」が活用の決め手
キューデンインフォコムのDC
セッション2では、日立ソリューションズ西日本の柴田尚明・産業流通ソリューション事業部事業部長付と並河孝和・クラウドビジネス推進センタグループマネージャが、「地方SIer発!クラウドビジネスを全国に展開~iDC選択の勘所と活用法について~」と題して講演を行った。柴田事業部長付は、同社がこれまで手がけてきたクラウドビジネスの経緯を説明。次いで、並河グループマネージャがクラウドサービス事業でのDC活用事例を紹介した。日立ソリューションズ西日本は、SaaS基盤としてキューデンインフォコムのDCを使ってクラウドビジネスを手がけている。ユーザー企業の基幹システムとして、またユーザー企業のDR対策として最適で、信頼性が高いと評価しているからだ。講演でも、キューデンインフォコムのDCを活用しているからこそ、ユーザー企業に最適なクラウドサービスの提供を実現していることをアピールした。
このほか、『週刊BCN』の谷畑良胤編集委員が「取材を通して感じたSIerのDC所有、利用の現状と今後の展望」と題して講演。セミナーには、クラウドビジネスに着手・拡大を目指すSIerやISVなどが参加して各セッションを熱心に聴講していた。