大手ディストリビュータの間で、クラウドなどのサービスを提供する動きが出てきた。モバイル端末と通信回線に加えてクラウドサービスを組み合わせたセットモデルや、インフラ構築サポートをメニューとして揃えるなど、リセラーがハードやソフトを売りやすくするために、サービスを加えて売るための環境整備に力を注いでいる。ポイントは、サービスを“モノ”として捉えるということ。ディストリビュータがリセラーにハードやソフトを提供するという商流を、クラウドなどのサービスにも適用していく。クラウド時代を意識した新しい取り組みによって、ディストリビュータのあり方が変わろうとしている。
ハード/ソフト+サービス

ソフトバンク C&S
溝口泰雄
社長 ソフトバンク コマース&サービス(ソフトバンク C&S、溝口泰雄社長)では、iPadを中心とするスマートデバイスの法人向け提供が拡大している。ユーザー企業のニーズが高まっていることに加え、リセラーが売りやすいようにしたことが大きな要因になっている。これまでもスマートデバイスと通信回線をセットで提供してきたが、それだけでは、ユーザー企業の導入意欲を高めるのは難しい。そのため、リセラーは独自のサービスを加えるなどの対応をしてきた。ただし、すべてのリセラーが最適なサービスを加えることができるとは限らない。
そこでソフトバンク C&Sは、リセラーがさまざまな角度から提案できるようにするために、「モバイル」「クラウド」などを切り口にさまざまな専任部隊を設置した。各分野のエキスパートを揃えることで、リセラーを支援しようというわけだ。
溝口社長は「ハードやソフトを提供するだけが、ディストリビュータの役目ではない。販売パートナーが不得意な部分を補完するのも、重要な役目だと捉えている。とくに、クラウドを起点とするソリューションであれば、スマートデバイスの提案も説得力が増す。当社はそこを支援していく」としている。

シネックスインフォテック
松本芳武
社長 シネックスインフォテック(松本芳武社長)は、米国本社で「Solv」という名称のリセラーがサービスを発注できる仕組みをもっている。Solvでは、キッティングサービスやケーブリングなど、インフラを構築するためのサポートをメニューとして用意している。また、パブリッククラウドの導入もサービスの一つに入っている。松本社長は、「日本でも、個別の案件で有料サービスとして提供しているが、多くの販売パートナーが当社のサポートによって案件を獲得しやすくなるように、今後はメニュー化することを検討する」と語っている。
サービスを“モノ”として卸す
ソフトバンク C&Sは、グループ会社のソフトバンクテレコムとともにヴイエムウェアと協業して合弁会社のヴイエムウェア ヴイクラウドサービスを設立。パブリッククラウドサービスとして「VMware vCloud Air」の提供を2014年11月10日に開始した。「VMware vCloud Airの提供拡大には、販売パートナーの力が不可欠。ただし、VMware vCloud Airを販売パートナーに提供するだけでなく、ハードやソフトも売りやすくなるようなソリューションにして、クラウドサービス専業ベンダーとは異なる新しい商流をつくっていく」と、溝口社長はアピールする。
「ディストリビュータは目に見えるモノだけでなく、目に見えないサービスも“モノ”と捉えて卸すことが重要になっている。米国では、メーカーやディストリビュータなどが提供するサービスを利用して、社内の作業を可能な限り省くことで、自社のリソースをコア事業に集中させている」(松本社長)。ユーザー企業からみても、サービスは“モノ”という考え方が定着しているのである。近い将来、日本でも米国と同じような状況になってくるだろう。
クラウドが普及したことで、サーバーを中心にハードの販売が厳しくなったといわれて久しい。ディストリビュータ各社は、サービスの流通に活路を見出そうとしているのだ。(佐相彰彦)