チーズタルト専門店やシュークリーム専門店の実店舗、デコレーションケーキのECサイトを運営するBAKE。「売れる商品」に的を絞り、商品ごとに専門ブランドで展開するビジネスモデルが成功し、この1年で業績を急激に伸ばしている。現在、実店舗は関東で4店舗になるが、2015年中に10店舗を新たに増やす計画で、成長のスピードをさらに上げようとしている。このスピードに対応できる業務システムをいかに構築するか──。同社の長沼真太郎代表取締役は、クラウドアプリケーションの導入を決断した。
【今回の事例内容】
<導入企業>BAKE2013年4月に創業。チーズタルトの専門店3店舗、シュークリームの専門店1店舗、デコレーションケーキのECサイトを運営する
<決断した人>代表取締役
長沼真太郎 氏
トップダウンでクラウド業務アプリの導入を決断
<課題>短期間での多店舗展開を前提としたビジネスモデルに対応できる業務システムが必要だった
<対策>クラウド業務アプリを導入
<効果>店舗別や部門別の業績が可視化され、リアルタイムに把握できるようになった
<今回の事例から学ぶポイント>経営者がITを有益なツールとして捉え、主体的に情報収集しながら導入のリーダーシップを取るとともに、ビジネスパートナーとして会計事務所としっかり連携することで、最適なIT商材の選択に近づく
多店舗展開を前提としたビジネス
長沼代表取締役は、自身の父親が経営する札幌市の洋菓子店「きのとや」の商品を、まったく別のビジネスモデルで展開しようと構想し、2013年4月にBAKEを立ち上げた。まずは、きのとやの看板商品でもある「焼きたてチーズタルト」を専門に扱うブランドを、社名と同じ「BAKE」と名づけ、東京都内、さいたま市の計3店舗で展開。2014年9月には、新ブランドであるシュークリーム専門店「クロッカンシュー ザクザク」の店舗も都内にオープンした。いずれも、きのとやから半製品を仕入れ、店舗内で焼成して販売する。工房一体型の店舗で焼きたてのお菓子を提供することを特徴としている。
長沼代表取締役は、「創業から2年に満たないが、年商ベースでは10億円を超える勢い」と手応えを語る。2015年はさらに10店舗増やす計画だ。また、カスタマイズ型のデコレーションケーキを販売するECサイト「PICTCAKE」も、売り上げの2割を占める規模になっている。「お菓子の世界ははやり廃りがものすごく激しい。うちは単品商売なので、利益を出しやすいが、お客様に飽きられてしまうのも早い。だから、毎年、新しいブランドを出していくつもり」(長沼代表取締役)と話す。
多店舗展開を前提としてスピード感のある経営をするためには、売り上げの情報を店舗・部門単位でリアルタイムに把握する必要がある。そのための業務システムをどう構築するかは、大きな課題だった。
2014年2月にBAKEの1号店を出してからしばらくして、まずはレジまわりの改革に乗り出した。ちょうどこの時期に米国の行列店を視察した長沼代表取締役は、タブレット端末とクラウドPOSレジアプリが半ば常識のようにどの店でも使われているのに驚いたという。「ニューヨークでもロサンゼルスでも人気店はiPadとクラウドアプリでレジをこなしていた。それを見て、自分たちもすぐにやったほうがいいと判断した」(長沼代表取締役)。
帰国後、国内のクラウドPOSレジアプリを比較検討し始めた。そして、「精算レシートをしっかり出せるなど、1号店が入居していた商業施設のオペレーションに対応できる製品は、これしかなかった」という理由で、2014年夏にプラグラムの「スマレジ」を導入した。

タブレット端末でPOSレジアプリも活用している機能拡充のスピードを評価
続いて着手したのが、クラウド会計ソフトの導入だ。もともと経理業務は顧問税理士に任せていたが、経営の状況をリアルタイムに把握するためには自計化しなければならないとの意識を当初からもっていた。レジにクラウドアプリを導入したことも一つのきっかけとなり、将来的なデータ連携のしやすさも考慮して、会計ソフトもクラウド製品を導入したいと考え始めた。
クラウド会計ソフトは、近年、多くの製品が世に出ている。当然、BAKEも複数の製品を俎上に載せて検討した。その結果、採用したのはマネーフォワードの「MFクラウド会計」だった。決め手となったのは、顧問税理士の助言だった。長沼代表取締役は、「顧問税理士が、MFクラウドのパートナー『MFクラウド公認メンバー』で、われわれが入力した情報を常に共有できて、アドバイスもいただけるというメリットが大きかった」と振り返る。
MFクラウド会計のオペレーションを行う機会が多い三宅啓司営業部長は、「UI(ユーザーインターフェース)がわかりやすく、使い勝手がいいので、自計化して新たに発生した入力作業などもストレスが少ない。さらに、機能拡充がすごいスピードで行われていて、勘定科目をまとめて変更できたり、部門別会計ができたり、要望したことがどんどん機能に反映されている」と評価する。とくに複数のブランド、業態を展開するBAKEにとっては、部門別に業績を可視化して分析することは喫緊の課題。顧問税理士と二人三脚で、部門別会計機能の活用にも取り組んでいて、成果を出しつつあるという。
ただし、課題もある。スマレジとMFクラウド会計のデータ連携ができないことだ。マネーフォワード側も、さまざまなクラウドアプリとの連携を進めてはいるが、「スマレジとの連携は早急に実現してほしい。さらに、人事給与・勤怠管理システムなどの統合もできると、経営者としてスピーディに次の手を打ちやすくなる」(長沼代表取締役)と要望している。(本多和幸)