OpenStackのコアのみに注力
ミランティスにとって、市場での競合関係という観点では、AWSなどプロプライエタリなIaaSは当然有力な競争相手になる。その際は、「オープンなクラウド」を構築できることがメリットになるわけだが、ヒューレット・パッカード(HP)やレッドハットなど、OpenStackディストリビュータ同士の競争では、何を差異化要因として打ち出すのだろうか。レンスキーCMOは、「他社との一番の違いは、ミランティスがOpenStackのコアに特化していること。上のレイヤに位置する開発基盤やインフラのコンポーネントを自由に選択することができる。他社製品は、OpenStackの部分だけでなく、ホストOSやストレージなども彼らが用意する製品に固定されてしまう。お客様や市場のニーズに合わせた組み合わせをベスト・オブ・ブリードで行うことができるのが圧倒的な強み」と強調する。また、OpenStackディストリビューションの開発に携わる技術者数も多く、「信頼性、安定性などのクオリティも抜きん出ている」(レンスキーCMO)と自信をみせる。

(左から)ミランティス・ジャパンの下平中・リージョナルディレクター、米ミランティスのボリス・レンスキー・共同創業者CMO、CTCの安藤俊・情報通信システム事業グループ情報通信事業企画室室長 米ミランティスは具体的な業績を公開していないが、2016年の後半に株式公開を予定。日本市場には、将来的にグローバルの売り上げの20~30%を期待しているという。グローバルベンダーでは、一般的に日本の売上比率が10%を超えるだけでも大成功といえるだけに、相当意欲的な数字だ。しかし、レンスキーCMOは、「現実を踏まえての構想で、無理だとは思っていない」と言い切る。
そうした急成長を現実のものにするためには、パートナー網の拡充が必須になるだろうが、これはCTCも歓迎している。安藤室長は、「一社でできることは限られる。オープンソースをベースとしたテクノロジーは、パートナー同士で切磋琢磨して品質を高めていくことが非常に重要だと考えている」と話す。さらに同社は、「ビジネスの入り口はウェブサービスだが、通信事業者のプライベートクラウドや、課金・料金系のシステムも徐々にターゲットにしていく。最終的には、NFV(Network Functions Virtualization)のプラットフォームとしてOpenStack環境を適用していきたい」(安藤室長)とも話しており、OpenStackのビジネス拡大に向け、すでにビジョンを明確化しつつある。ミランティスにとっては、こうした良質なパートナーをどう日本市場で開拓していくかが課題となる。