海外市場戦略
足枷はあるが、自信もある
●会計ソフトは売りにくい 
劉予杰
海外事業部
助理総経理 用友の海外事業は、アジア地域が中心だ。香港・マカオ・台湾・シンガポール・マレーシア・タイ・ベトナムなどに販売拠点を設置。ヨーロッパ地域では、仏アトスオリジン(Atos Origin)と合弁会社を設けており、日本市場に対しては、パートナーを中心に提供している。
現在の海外売上比率は10%程度。華僑が多い香港やシンガポールでは、中国資本の会社を中心に、その他の地域では、中国に拠点をもつ外資系企業を中心に開拓している。現在は、海外のグループ会社による直接販売が主流だが、劉予杰・海外事業本部助理総経理は、「今後は、海外の間接販売比率を40%程度まで引き上げたい」としている。
販売戦略は、中国国内のそれとは大きく異なる。海外では、各国が固有の財務諸表をもっているので、中国の財務局用に開発された用友の会計ソフトでは、言語の対応こそできても、細かな違いまでを完全にカバーすることは難しい。安価だといっても、会計ソフトの切り口では、ユーザーのハートには刺さらないのだ。
●周辺モジュールから攻める そこで、新規案件を開拓していくのではなく、すでに基幹系システムは他社製品を使っているユーザーに対して、HRM(人材管理システム)や生産管理システムなど、ERPの周辺モジュール単位で販売することに力を注いでいる。まずは小さくてもいいので、周辺モジュールから導入してもらい、他社製品のリプレースの際に、導入範囲を広げていこうという戦略だ。劉・海外事業本部助理総経理は、「用友製品は、価格が安いだけでなく、品質も高い。実際、周辺モジュールを高く評価して、基幹系も導入するというユーザーが増えている」と説明する。
海外では足枷もあるが、用友が掲げる目標は挑戦的だ。「今後5~10年で、グローバルトップ3のISVを目指している」(同)。SAPやオラクル、マイクロソフトに真っ向から立ち向かうというのだ。「自信はある。過去10年間の海外事業の年平均成長率(CAGR)は30%を超えている。リーマン・ショックの時も30%伸びた。海外市場向けのローカライズは、グローバルベンダーよりも進んでいると自負していて、大手がカスタマイズに1~2年かかるところを、用友ならば2~3か月で終えることができる」と、劉・海外事業本部助理総経理は強気の姿勢を示している。
パートナーにとっての用友
変革の姿勢に魅力
●独自の連携ソリューションで差異化 
ANWILL
寧宏暉
総経理 中国ローカル企業の上海安為信息技術(ANWILL、寧宏暉総経理)は、中国に進出している日系企業の現地法人に対して、用友のU8を中心とするSIを専業としている。同社の強みは、ライセンスの販売や導入支援だけでなく、カスタマイズまで手がけられることだ。寧総経理は、「用友製品は、価格は安いが、日系企業にとって機能が十分でないケースが多く、カスタマイズのニーズが大きい」と説明する。2014年末からは、U8と連携するデータ分析・帳票作成ソフト「Acube」の開発に着手。今後はこれを、用友の補完ツールとして、広く外販していく方針だ。
また寧総経理は、日系企業の動向について、「すでに大半の日系企業が、用友の会計ソフトのユーザーとなっている。本社主導で導入しているグローバル用の基幹系システムとは別に、中国当局に提出する財務報告書に対応するために活用している」と説明。そこで今後は、購買管理・販売管理・人事管理といったERPの周辺モジュールの提供に力を注ぐ。寧総経理は、「中国では、人事・勤怠制度に、日本と違った独特の仕組みが求められるケースが多く、用友のHRMに優位性がある」と期待している。
●価格以外のメリットを訴求 
SOT
許炎
総経理 オージス総研グループ会社の上海欧計斯軟件(SOT、許炎総経理)は、約20人の用友ビジネス組織を設けて、中国の日系企業にU8やU9を中心とするSI事業を展開し、すでに100社超の導入実績を積みあげている。
しかし、中国に進出している日系企業の現地法人は、予算が潤沢ではない場合もある。許総経理は、「U8やU9でも、まだまだ高いと感じる顧客が多くて、導入を見送られたケースもある。顧客は、見積金額だけで導入の可否を判断することがあるので、価格だけでない導入支援や保守サポートのメリットを効果的に訴求することが欠かせない」という。
用友の魅力については、「ビジネス環境への変化を機敏に感じ取って、常に自身に変革を求める姿勢に魅力を感じる」(同)と説明。インターネット企業への転換を掲げた今回の方針についても、「正しい方向だと考えている。顧客に理解を得られるまでには、少し時間がかかるだろうが、iUAPや金融サービスは積極的に提案していきたい」と許総経理は語った。
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