事業継続などの観点から、多くの企業がデータのバックアップに関心を高めつつある。そのことは、ITベンダーであっても同様だ。ウイングアーク1stでは、社内システムにおいて仮想化環境の構築を進めており、WindowsやLinuxなど、さまざまな環境で開発したものをバックアップしなければならない状況にあり、アクロニス・ジャパンが提供するバックアップソフトを導入。これによって、社内の技術者が自社製品を開発しやすい環境を整えながら、システムの効率的な運用を実現した。
【今回の事例内容】
<導入企業>ウイングアーク1st帳票基盤ソフト「SVF」シリーズや、BIソフトの「Dr.Sum EA」「MotionBoard」などを提供しているソフトメーカー。社員数は約400人
<決断した人>チームリーダー
岡部雅人 氏
2006年の入社以来、一貫して社内システムの運用に携わっている
<課題>社内システムで仮想化環境を構築。そこでLinuxを利用したいという社内の技術者から要望が出たが、バックアップ環境が整っていなかった
<対策>2013年当時、WindowsとLinuxのバックアップに対応していたアクロニス・ジャパンが提供する「Acronis Backup」を導入した
<効果>Linuxを含めた仮想化環境を構築できるようになったほか、バックアップに対するコストや運用時間などを大幅に削減
<今回の事例から学ぶポイント>システム面で社員が業務しやすい環境を構築しながら、社内データを守り、少数精鋭でシステム運用の効率化を図ることを実現した
Linuxに対応していない!?
データは紛失しないということが大前提だ。特定の企業に限らず、すべての企業のシステム担当者がそう考えており、万一、システムにトラブルが生じた場合でも、データをリカバリできる環境を構築しておくことがシステム運用上のポイントになる。ウイングアーク1stでもデータをバックアップしておくことは必要不可欠の要件。社内システムで物理環境がメインだった頃、バックアップについて物理サーバー1台につきソフト1ライセンスを導入するという方法を採用していた。物理環境ではあたりまえのことで、これによって仮にシステムにトラブルが生じた際でも、データをリカバリすることができる。ただ、「物理環境では、効率的な運用を行うことができない」。ウイングアーク1stで社内インフラ全般の運用を担当する岡部雅人・開発本部ITサービスグループインフラチームチームリーダーは、そのように考えていた。そこで2011年、仮想化環境へのシステム刷新に踏み切った。
当時は、ミニマムスタートで仮想化環境を構築していき、徐々に効率的にシステムを運用することを実現していった。しかも、ライセンス体系が物理環境とは異なるので、コストを大幅に抑えることができた。
ただ、一つ課題として出てきたのが、さまざまなOSに対応できる仮想化環境を構築したものの、当時導入していたバックアップソフトがWindowsにしか対応していなかったことだ。Windows以外の環境で開発したものをバックアップしておくことができないのは、ソフトベンダーにとっては致命的ともいえる。そこで、岡部チームリーダーは、「Linuxにも対応したバックアップソフトを早急に導入しなければならない」と判断した。2013年のことだ。
リソース追加で試しに導入
当時、Linux環境のバックアップに対応していたのは、アクロニス・ジャパンが提供している「Acronis Backup」だった。仮想化環境への移行が道半ばだったということもあり、「技術者のテスト環境で使うシステムに、試しに使ってみよう」ということで導入。その結果、「社員(技術者)の要望に応えることができただけでなく、重複排除を含めてコストや運用にかける時間などを大幅に削減することができた」という。導入し始めた当初は、一部分のシステムにだけAcronis Backupを導入していたが、「仮想化環境に移行したシステムにAcronis Backupを採用するようになった」と経緯を語る。ウイングアーク1stでは、管理系システムでWindowsを採用しているが、管理系にも導入した。これによって「Microsoft SQL ServerやActive Directoryでも効率的にバックアップできるようになった」と、岡部チームリーダーは満足げだ。
少数精鋭でシステムを運用する
ウイングアーク1stでは、社内システムの運用に携わっている担当者が2人。少ないようにもとれるが、効率的な運用を実現できていることから、適した人数ともいえそうだ。岡部チームリーダーは、「社内システムの担当者が多ければいいわけではない」との考えをもつ。少数精鋭で運用できているからこそ、収益につながるビジネスに人員を割くことができる。
今後は、引き続き仮想化環境の構築を進めながら、「レプリケーションも強化していく」方針。また、ウイングアーク1stは本社を含めて国内外に10地域に拠点をもっているため、「コスト面を踏まえて、基本的にはオンプレミスでシステムを運用していくが、技術者がテスト開発に取り組む際、クラウドを利用することがある。海外拠点でも、クラウドを利用したほうが効率的との声が挙がる。このような社員の要望に対して柔軟に対応していきたい」との考えを示している。その際、バックアップソフトに求めるものは、「クラウド環境も含めたバックアップの導入も視野に入れていく」としている。(佐相彰彦)