ワールドワイドで、クラウドサービスの標準化に取り組む動きが出てきている。クラウドサービス事業者などが集まる団体「オープン・クラウド・コネクト(OCC)」と、イーサネットの標準化を進める団体「メトロ・イーサネット・フォーラム(MEF)」は、大手クラウドサービスプロバイダだけでなく、中小規模のプロバイダでも簡単にクラウドサービスが提供できるインフラの整備を進めている。中小事業者の競争力を高めることによって、クラウドサービス市場をさらに活性化させていくことを狙いとしている。(佐相彰彦)
13社がテスト環境の構築に参画

オープン・クラウド・コネクト
ジェフ・シュミッツ
会長 OCCが現在、力を入れているのは複数の異なるものを接続したり組み合わせて使用した際にきちんと全体として正しく動作する相互接続性だ。クラウドサービスプロバイダやネットワーク関連の製品・サービスを提供するメーカーが参画しており、さまざまなデータセンター(DC)をつなげるためのインターフェースの開発に取り組んでいる。
現段階でクラウドサービス標準化に向けたプロジェクトに参画しているのは13社。OCCのジェフ・シュミッツ会長は、「カリフォルニアやシリコンバレーにあるOCCのDCをベースにして、参画しているクラウドサービス事業者のDCを連携させてテストを進めている」という。この検証が成功すれば、ユーザー企業にとっては一つのクラウドサービスプロバイダに縛られることなく、自由にデータを預けることができ、「特定の製品・サービスしか使うことができないという“ベンダーロックイン”のような状態を防ぐことができる」とアピールしている。
本来は、AWS(Amazon Web Services)をはじめ、GoogleやMicrosoft Azureなどにも参画してもらい、相互接続性を検証するプロジェクトとして進める予定だったが、大手クラウドサービスプロバイダは参加していない。大手にとっては、OCCのプロジェクトに参加することが現段階ではビジネスに旨みがないと判断したのだろう。そのため、OCCでは「標準化したインターフェースを中小クラウドサービスプロバイダに広めていく」(シュミッツ会長)との方針を示しており、複数のプロバイダが連携することによって、「中小規模でも大手に匹敵するクラウドサービスを提供することができる環境を整えていく」としている。
成長プログラム「MEF-SI」を提供

メトロ・イーサネット
・フォーラム
ケビン・バーチョン
COO OCCは、もともと「クラウド・イーサネット・フォーラム」という名称で、VLANスケーリングレイヤ2スイッチの性能やイーサネットへのストレージネットワーク技術の統合などが可能な独自フレームワークの開発を目的として設立したMEFから派生して、クラウドサービスに特化して性能や規制、運用コストの最適化に取り組んできた団体だ。そのため、MEFと密に連携して標準化を目指している。MEFでは、4月下旬から中小規模のサービスプロバイダ向け成長プログラム「MEF Services Interconnect Program(MEF-SI)」を提供。中小規模のサービスプロバイダは、MEFが提供するマーケティングプラットホームやトレーニングツールを使ってビジネスを拡大することができる。
すでにアイルランドやカナダなどで参加企業が出てきており、「中小事業者であっても、企業や消費者に対して高速で広帯域のイーサネットサービスを提供できるようになる」と、MEFのケビン・バーチョンCOOは説明する。さらには、「中小事業者の成長につながる取り組みで、高速イーサネットを普及させる」と意気込んでいる。
OCCやMEFが進める策によって、中小事業者のクラウドサービス提供が拡大すれば、「クラウドサービスを利用する企業が、さまざまなサービスプロバイダを選択できるようになり、健全な市場環境が生まれる」(OCCのシュミッツ会長)と捉えている。そして、標準化団体として大手を含めて多くのプロバイダが参加することを促して、ユーザーにとって最適なクラウドサービスを普及、市場がさらに活性化していくことこそがOCCとMEFが目指しているところだとしている。