ソフトウェアの超高速開発を得意とするSIerのウイング(新潟市、樋山証一社長)は、独自の自動開発ツール「MagicLogic(マジックロジック)」を開発した。今年7月までをめどに本格的な商用化に移行する予定だ。主な販売対象は市販の表計算ソフトを使って経営管理をしている中小企業などで、属人的になりがちな表計算ソフトからの脱却を促すとともに、ユーザー自身が体系だった業務システムを構築できる完全ノン・プラグラミングの自動開発ツールである。
ウイングは、南米ウルグアイのアルテッチが開発したソフトウェア自動開発ツール「GeneXus(ジェネクサス)」を活用したSI(システム構築)の実績が豊富で、自動開発を指向する超高速開発コミュニティの幹事会社も務めている。だが、GeneXusは「大規模で本格的な開発に適したツール」(樋山証一社長)だけに、ウイングの地元・新潟の中小企業にはそぐわない課題を抱えていた。そこで、中小のユーザー企業がプログラミングなしで自らの業務システムを素早く構築し、自由に手直しできるツールとして独自に開発したのがMagicLogicだ。ユーザーの業容が拡大し、システムが大規模化してくればGeneXus活用につなげることもできる。
アプリケーションソフトの開発基盤は、IBMの「Bluemix」やサイボウズの「kintone」など、すでに数多く実用化されているが、MagicLogicは、市販の表計算ソフトを経営や業務管理に使っている、いわゆる「Excel経営の中小企業」にターゲットを絞り、クラウド環境だけでなく、「ユーザー先にサーバーを設置して運用するオンプレミスにも対応している」(樋山泰三専務)と、中小企業の“脱Excel経営”のツールとして役立てる。

左から樋山泰三専務、樋山証一社長、山内啓悦マネージャ 中小企業はさまざまな工夫を凝らして競争に勝ち抜こうと努力しており、どうしても既製品の業務パッケージでは自らがつくり出した業務フローに合わないことが少なくない。だからといって、本来は業務システム用途ではない表計算ソフトをカスタマイズしていては「システムの柔軟性、拡張性ともに損なわれてしまう」(山内啓悦・企画サービス担当マネージャ)し、SIerに個別のプログラム開発を依頼する予算もない。
ウイングでは、こうした中小企業の課題を見越したうえで、中小企業経営に詳しい全国のITコーディネータや税理士、中小企業診断士などと販売やサポート面での連携を進め、ユーザーがMagicLogic向けにつくった業務テンプレートをネット上の「MagicLogicストア」(仮称)で有償販売できる仕組みづくりも視野に入れる。向こう3年で1000社のユーザー獲得を目指す。
GeneXus、MagicLogicのいずれもノン・プログラミングが原則であり、少なくともSIerの主要収入源の一つであるプログラミングによる対価は得られない。それでも「競争力のある価格帯でユーザー企業の経営課題を解決する」点を突き詰めていったほうが、中長期的な観点から売り上げや利益を伸ばすことにつながるとウイングではみている。(安藤章司)