「クラウドサービスはたくさんの種類があると思われがちだが、実は意外に少ない」とクラウドサービス推進機構(CSPA)の松島桂樹理事長は語る。ここでのクラウドサービスとは、中小企業でも手軽に導入できるSaaSを指す。世の中には、IaaS上にパッケージシステムを載せて、クラウドサービスとするケースがあるが、それはSaaSではない。また、SaaSであっても、クラウドのメリットを享受できるとは限らない。では、どのようなサービスであれば“クラウドサービス”と呼べるのか。CSPAは、クラウドサービスを審査、認定する「クラウドサービス認定プログラム」を開始した。(畔上文昭)
進まないクラウドの導入

CSPA
松島桂樹
理事長 CSPAは、中小企業の支援を目的に活動している一般社団法人。中小企業が強くなるための道具として、クラウドサービスの利活用を推進している。導入費用が安く、運用もしやすいということが、中小企業にはクラウドサービスが最適とする理由だが、CSPAの思い描いた通りには導入が進んでいないのが実際のところだ。
「中小企業にITを納入するベンダーの間で、クラウドの評価が定まっていない」のが中小企業で導入が進まない原因の一つだと、松島理事長は考えている。一般的に中小企業にはIT担当者がいないため、最適なクラウドサービスは何かを選ぶことはもちろん、クラウドサービスとパッケージシステムの違いを理解するのは難しい。そのため、ITベンダーやITコーディネータを頼りにすることになるが、クラウドを評価する基準がないため、クラウドサービスを推奨するための根拠に乏しい。例えば、いくらすばらしいサービスでも、急に撤退されてしまえば、パッケージシステムと異なり、ユーザーは継続して利用することができなくなってしまう。
CSPAがクラウドサービス認定プログラムを開始したのは、中小企業が安心してクラウドサービスを利用できるようにするためだ。認定したクラウドサービスは、ユーザー企業が安心して利用できるだけでなく、ITベンダーやITコーディネータも自信をもって推奨できるようにするのが目的である。
認知度の向上がカギ
クラウドサービス認定プログラムでは、サービス認定ガイドラインと自己点検チェックリストが用意されていて、認定を希望するクラウドベンダーに提供している。そのため、認定を申し込む前に、自社のクラウドサービスを点検することができる(下表を参照)。ちなみに、審査を担当する審査員も公開されている。
クラウドサービス認定プログラムは、2015年4月27日に第一回目の公募を開始し、5月31日まで受け付ける。松島理事長は、今回の公募で20から30のサービスの応募があると予測している。世の中には多くのクラウドサービスが提供されていることを勘案すれば少ないと思われるが、松島理事長は次のように考えている。
「クラウドサービスは『クラウドに対応しています』というものが多い。IaaS上にパッケージシステムを載せるのは、クラウドを利用しているが、クラウドサービスとはいえない」。これは認定プログラムの要件にもなっているため、自己点検チェックリストの段階で、認定をあきらめるベンダーがあるという。
とはいえ、認定サービスが少ないと、クラウドサービス認定プログラム自体が認知されない可能性がある。機能すればクラウドサービスの発展にも寄与すると期待できるだけに、そこをどうクリアするかが今後の課題として残る。