「数年後にはAWS(Amazon Web Services)を利用するのが一般的になり、10年後には現在では想像もできないようなビジネスがAWSを使って行われるようになる」と、アマゾン データ サービス ジャパンの今野芳弘・パートナー・アライアンス本部本部長は考えている。この状態をアマゾン データ サービス ジャパンでは“New Normal(ニューノーマル)”と呼ぶ。ニューノーマルには、AWSの活用が一般化するとの意味が込められている。これを実現するために、パートナー施策とトレーニングの強化に取り組んでいる。(取材・文/畔上文昭)
“プレミア”の基準を公開

パートナー・
アライアンス本部
今野芳弘
本部長 昨年11月、APNプレミアコンサルティングパートナーが発表され、日本から、アイレット(cloudpack)、野村総合研究所(NRI)、クラスメソッド、サーバーワークスの4社が認定された。cloudpackとNRIは3年連続、クラスメソッドとサーバーワークスは初の認定となった。
APNプレミアコンサルティングパートナーは、AWSのパートナープログラム「Amazon Partner Network(APN)」において、最上位に位置づけられる。ただし、その基準が発表されていなかったため、AWSの発展に貢献したという「名誉タイトル」(今野本部長)という意味合いが強かった。
それが昨年、明確な規定が示され、下位層にあたる「アドバンスド」や「スタンダード」のAPNコンサルティングパートナーが、「プレミア」を目指しやすくなった。その基準が5月に日本語化された(下表参照)。APNプレミアコンサルティングパートナーは毎年更新されていて、この条件を満たし続けないと、認定から外れることになってしまう。APNプレミアコンサルティングパートナーには、プロジェクトの推進にあたって「専任AWSパートナーアカウントマネージャー」や「専任AWSパートナーソリューションアーキテクト」をアサインするなど、プレミア独自のサービスがAWSから提供されるというメリットがある。
また、今野本部長は、APNに参加することの意義の一つとして、「ニューノーマル」を掲げている。5年後には、意識せずにAWSを活用する時代になり、10年後には「現在の既成概念を超えたIT活用が始まる」(今野本部長)とし、その状況がニューノーマルというわけだ。ニューノーマル時代をパートナーとともにつくっていくという思いが込められている。
6月2日と3日の2日間で開催される「AWS Summit Tokyo 2015」においても、ニューノーマル関連の話題が出てくると予想される。なお、AWS Summit Tokyoでは「ESPカタログ」が配布される予定。ESPは「エコシステムソリューションパターン」の略で、AWS上で稼働可能なソフトウェア製品やSaaSの情報が掲載される。ライセンスや費用、推奨システム構成、主要導入パートナーなどが掲載されているため、ユーザー企業でもソフトウェアが選択しやすいようになっている。掲載には、スタンダード以上のAPNパートナーであることが条件となっている。
技術者不足の解消へ

AWS
トレーニング
サービス本部
杉村由美子
トレーニングマネジャー 「クラウド技術者が足りていない」とアマゾン データ サービス ジャパンの杉村由美子・AWSトレーニングサービス本部トレーニングマネジャーは語る。APNパートナーを増やしたいと考えても、クラウド技術者が不足していては前に進まない。そこでアマゾン データ サービス ジャパンは、トレーニングプログラムの充実にも注力している。
なかでも最近人気なのが「クラスルームトレーニング」である。単純にトレーニングに参加するだけでなく、グループに分かれてディスカッションするところがポイントとなっている。受講者同士でディスカッションすることによって、わかっているようでわかっていなかった部分が明確になるとして、好評を博しているという。「日本の技術者はディスカッションが苦手だと思われがちだが、そんなことはない。IT分野の人たちはしゃべりたいと思っている」と杉村トレーニングマネジャーは実感している。
このほかにも、オンラインのトレーニングプログラムを充実させており、そこでは演習環境も提供される。例えば、ウェブサイトの立ち上げを2時間くらいで体験できるコースや、APNパートナーの条件となる認定試験向けのトレーニングコースも提供されている。なお、AWS Summit Tokyo 2015では、トレーニングコースと認定試験がセットで提供されるため、試験会場が遠い地方からの参加者にお勧めしたい。
「AWSには“足りない”がない。いつでも簡単にIT資産を調達できて、いつでも追加できる。そのため、足りなくなるということはない。ところが、クラウド技術者が足りないと、クラウドのメリットを生かせなくなってしまう」という考えに立って、杉村トレーニングマネジャーは今後もクラウド技術者の育成に注力していく。