空調設備のメンテナンス会社として2002年に創業したエコ・プランは、空調設備の新規設置工事、省エネコンサルティングなど、徐々に業務範囲を拡大してきた。近年ではBEMS(エネルギー管理システム)にまでサービスラインアップを広げ、業績も順調に伸びている。しかし、企業としての成長に合わせて情報システム部門の人員もすぐに増えるとは限らない。いかに効率的に運用できる社内システムを構築するかも、情シス担当者の腕の見せどころだ。
【今回の事例内容】
<導入企業>エコ・プラン2002年に、空調設備のメンテナンス会社として発足。現在は、空調設備の新規設置工事、省エネコンサルティング、BEMS工事なども手がける。社員数は2015年4月現在で282人
<決断した人>管理本部経営管理部経営管理課主任
佐久間大輔 氏
社内唯一の情報システム担当。社内システム構築の企画から運用まで、1人で責任をもつ
<課題>情報システム専任の担当者が1人しかおらず、オンプレミスシステムではサーバーの運用に付随する業務が大きな負担となっていた
<対策>クラウド会計ソフトをはじめ、業務システムにクラウドのパッケージソフトを導入し、社内システムをほぼすべてクラウド化
<効果>クラウド化によりリアルタイムのデータ共有が可能になり、業務効率が向上したほか、情報システム担当者もサーバーの“お守り”から解放され、業務の負担が大幅に軽減された
<今回の事例から学ぶポイント>情報システム担当者にリソースを割けない企業にとっては、クラウドに大胆にシフトし、社内のIT資産を減らすことで、安全かつ無理のないシステム運用が可能になる
業務の継続性を重視
2015年4月現在で300人弱の社員を抱えるエコ・プランだが、専任の情報システム担当者は1人しかいない。その重責を担う佐久間大輔・管理本部経営管理部経営管理課主任は、近年、社内システムのクラウドへの移行を検討してきた。「運用の負荷などを考慮すると、サーバーを社内でもたずに、情報システムはすべてクラウド化すべきだと考えていた。また、クラウドなら、データの一元管理もしやすいのではという期待もあった」と経緯を話す。
企業経営の屋台骨を支える会計システムのクラウド化も、2013年に検討し始めた。実質的に、1人の経理担当者が専用のパソコンで会計のパッケージソフトをオンプレミスで使っている状況だったが、サーバー運用の負担はもちろん、専用パソコンが14年4月にサポート切れを迎えるWindows XP機だという課題もあった。そこで、将来的なバージョンアップコストの抑制効果も見込み、OSのバージョンに依存しないクラウド会計ソフトの導入を決断した。
社内システム整備の企画立案は、すべて佐久間主任の仕事だ。これを決裁する役員には、「業務を実際に担当する人間が使いやすければ、何を入れてもいい」というゴーサインはもらっていた。そこで、経理担当社員とも密にコミュニケーションを取り、オンプレミスで使っていた「PCA会計」の最新バージョンである「PCA会計X」のクラウド版「PCA会計X クラウド」、さらには他社製の会計・ERPソフトも俎上に乗せて、比較・検討した。その結果、PCA会計X クラウドを採用することに決めた。
製品選定でとくに重視したのは、業務の継続性が担保できることだ。佐久間主任は、「システムを移行するための時間がごく短期間で済むという点が最大の魅力だった。さらに、過去のデータもシームレスに移行でき、過去の数字との比較も今までどおりに簡単にできる点も大きかった。また、経理担当者がすぐに違和感なく使えるインターフェースであることももちろん重要なポイントだった」と説明する。
データ共有の効果は大きい
2014年3月から本格的に運用を開始しており、すでに多くの導入効果を実感しているという。「まず、当社の顧問会計士とのデータ共有が飛躍的に楽になった。以前は、メールでデータをやりとりしていて、どこか一件修正があると、データを全部送り直してそれをインポートして見なければならなかった。それが、PCAクラウドを導入してからは、同時接続、同時入力が可能になり、ほぼリアルタイムに情報を共有できるようになった」(佐久間主任)。
また、データの管理という面でも、安全性が高まったと実感している。佐久間主任は、「社内の重要なデータをどう管理しているかは、取引先に与える信用にも直結する問題。BCP対策の面からもクラウド導入は正解だったと考えている」と話す。会計士との情報共有がしやすくなったこと、データを毎日バックアップしなくてもよくなったことは、経理担当者の負荷も軽減することになった。
さらに、当初は想定していなかった効果も出てきている。業務拡大に伴い、経理の事務作業量は年々増加している。そのため、繁忙期は会計ソフトへの入力業務を外注することもある。この場合も、外注先と同時接続、同時入力ができるため、業務効率が大幅に向上した。「経理でテレワークまでできるようになるとは思わなかった。柔軟で効率的な業務運用が可能になる」と、佐久間主任は手応えを語る。
サーバー管理からやっと解放
現在は、ほぼすべての社内システムをクラウド化している。「見込み客と商談の管理には、Sansanの名刺管理サービスを活用している。また、セールスフォース・ドットコムのCRMも導入し、受注後の納品データ、現場スケジュール、さらには売上データを入れて、これをPCA会計X クラウドに流している。仕事の受注から経理まで、一貫してクラウド上で対応できるようになった。また、メールやファイルストレージとしては、『Office 365』を使っている」(佐久間主任)という。さらに、これまでExcelを使っていた人事管理業務にパッケージソフトを導入することを決めており、「PCA人事管理X クラウド」も導入準備中だ。
今後も、クラウドで社内システムを運用していく方針は変わらない。佐久間主任は、2005年の入社以来、サーバーのトラブル時に即座に駆けつけるために、会社から徒歩圏内に住み続けてきた。社内システムのクラウド化に踏み切ったことで、「10年ぶりに徒歩通勤から解放された(笑)」と話す表情は、明るさに満ちている。(本多和幸)