中国の物流都市、臨沂
臨沂市は、山東省の南東部に位置する地方都市だ。面積は1.72万k㎡、人口は1090万人で、山東省では最大規模を誇る。2014年の市内GDPは前年比10.1%増の3569.8億元となっている。
中国国内では、物流が盛んな都市として知られている。市内中心地区には、128の専門卸売市場があり、全国の約30省・市・自治区および約20の国・地域と取引している。物流配送網はおよそ2000拠点あり、物流コストは全国平均よりも27%低い。2011年8月には、中国交通運送協会から「中国の物流都市」と認定を受けている。また、2014年には、国務院の批准を受けて臨沂総合保税区が成立し、2015年には臨沂空港の国際線が開通する予定。今後はますます物流の活発化が見込まれる。
そんな臨沂市が現在、力を注いでいるのが、物流都市としての優位性を生かした電子商取引(EC)産業の発展だ。臨沂市の2014年のEC取引額は826億元で、2012年から3年間の年平均成長率(CAGR)は43%と大きく伸びている。フォーラムの開幕式で、臨沂市の張術平市長は、「EC産業を最も重要なプロジェクトとする。2000億元の取引額を目指す」と意欲を示した。

(左から)臨沂市政 張術平 市長、
臨沂市商務局 呉昌力 局長、
臨沂総合保税区管理委員会 李宗涛 主任、
東忠集団 丁偉儒 董事長EC産業が急速に発展
続いて登壇した臨沂市商務局の呉昌力局長は、臨沂市のEC産業の進捗について講演。「すでに臨沂市内には、ECプラットフォームを提供する企業が24社あり、関連業者は4万社、関連従事者数は20万人に達している。小売企業のEC普及率は40%に及んでいる」と説明した。
こうした発展の背景には、政府の優遇政策がある。臨沂市政府は、「電子商取引の発展加速に関する意見」などの政策を制定しており、「電子商務推進指導グループ」を組成。また、市財政当局は、ECの特定項目に対する「電子商取引発展基金」を設立している。
呉昌力局長は、今後の展開として「ECプラットフォームの発展」「県(行政区画)レベルのEC発展」「越境ECの発展」「ECパークの発展」「物流配送システムの整備」「EC人材の育成」の六つを重点的に推進していくことを示した。
その後、臨沂総合保税区管理委員会の李宗涛主任が、臨沂総合保税区の詳細について講演。中国では41番目、山東省では3番目の総合保税区となる臨沂総合保税区は、「すでに112社が工商登記手続きを実施済み」だという。
総合保税区内の企業は、国家禁輸貨物を除いて、商品の輸出許可書・税関申告が不要となり、税関に取引報告を行うだけで、自由に免税輸出できるといった優遇を受けられる。
偽物の流通を防ぐ「01世界」
東忠集団の丁董事長は、ECに関する自社の取り組みについて基調講演した。同社は、対日アウトソーシングやIT人材育成、日系企業との合弁会社設立による中国市場進出の支援などで知られているが、近年では、臨沂市と連携したEC事業に注力。グループ会社の臨沂東忠科技を通して、ECサイト「01世界(01world.com)」を運営している。
丁董事長は、中国のEC産業が急速に発展している一方で、消費者にとって望ましくない“バーチャル汚染”が進んでいることを指摘。具体例として、中国の大手ECサイトは、実店舗をもたない個人登録の店舗が多いことから、「偽物の商品が氾濫している」と説明した。そのうえで、実在する加盟店舗を通して商品を提供することで、偽物の流通を防止する「01世界」の優位点を示した。
また、フォーラムには、60人余りの日系企業関係者が参加。ECサイトを通じて日本の商品を海外で販売する「越境EC」の手段として、「01世界」の可能性を模索していた。

「01世界」は直営店舗も運営。日本企業の商品を多数展示・販売している