インターネットイニシアティブ(IIJ・勝栄二郎社長)が、IaaSサービスと企業向けネットワークサービスのラインアップを刷新した。自社開発要素も含めてSDN/NFVなどの先進技術を積極的に採用。クラウド需要への対応と競合に対する差異化を図り、基幹システムのクラウド化を推進する。(日高彰)

新サービスを発表する勝栄二郎社長 IIJでは、2009年にクラウド基盤の提供を開始して以来、「IIJ GIO」のサービスブランドでクラウド関連のサービスを順次拡充し、ストレージ、セキュリティサービス、VDIやERPのクラウド上への構築など、幅広いサービスメニューをそろえてきた。しかし、パブリッククラウドとプライベートクラウドが別個のサービス体系となっており、運用・管理はそれぞれ個別に行う必要があった。また、プライベートクラウドではサービスの追加や変更に書面申し込みを要する場面が多く、ロードバランサやセキュリティ機器も物理アプライアンスを主に用いていたため、ユーザーからの依頼に対応するまでに数日を要し、リードタイムの面でも改善の余地があった。
今回、PublicとPrivateの二つの「P」を融合した新しいクラウドサービスとして「IIJ GIOインフラストラクチャーP2」を発表。また、ユーザー拠点とクラウドを結ぶネットワークについても新サービスの「IIJ Omnibus」を投入し、運用の効率化とセキュリティ向上を図る。P2は10月、Omnibusは9月にそれぞれ提供を開始する。
これらの新サービスは従来のものから単に体系を改めただけでなく、SDNやNFVといった新技術を積極的に取り入れ、コストやリードタイムの削減、システムの柔軟性向上を図っているのが特徴。ユーザーがコントロールパネルでサービスの追加や設定変更を行うと、IIJが独自に開発したオーケストレータがリソースの割り当てやネットワークの経路変更を自動的に行い、プライベートリソースも含めて、即日での利用が可能となる。「Omnibus」では、クラウド上にファイアウォールやVPN機能などをモジュールとして用意し、ユーザーは専用ネットワーク機器の購入なしでこれらの機能をサービスとして利用できる。
勝社長は、「P2ではパブリッククラウド、プライベートクラウドの両方のメリットを同時に享受でき、Azureなど他のクラウドサービスへの接続も可能。Omnibusでは、複雑な設定なしでIIJのリソースを活用でき、簡単、迅速、セキュアにクラウドへ接続が可能。この二つを融合的に提供する」と話し、一つの企業が用途に応じて複数のクラウド基盤を使う現代においては、仮想化されたコンピューティング基盤とネットワークをユーザーが自在に組み合わせて利用できるサービスが求められていると背景を説明する。
IIJは基幹システムのクラウド化推進を戦略の主軸としているが、大多数の企業ではすべての業務システムを一度にクラウド化するのは不可能で、オンプレミスとクラウドの両システムを運用・管理していく必要がある。また、最近はセキュリティに関する要求も急速に高まっている。コンピューティングリソースとネットワークの配置・構成はますます複雑化しており、今回のIIJの新サービスはそれらを一元的に管理したいというニーズに応えるものになっている。
新サービスでは、ソフトウェアによる管理を全面的に取り入れ、管理コンソールの機能も大幅に拡充している。パートナー向け画面も強化し、複数の顧客を効率よく管理できるので、再販パートナーや、IIJのクラウドを利用してユーザー企業向けのサービスを提供するSIerにとってもより取り扱いやすいサービスとなっている。