富士通エフサス(高萩弘社長)は、複数のクラウドサービスやオンプレミス環境などを組み合わせ、ITインフラの企画から運用までをトータルでサポートする新サービス「FUJITSU Managed Infrastructure Service マルチクラウドLCMサービス」を提供する。保守・運用サービスやインフラインテグレーションのノウハウを生かし、クラウド領域で新たな成長事業を確立したい考えだ。(本多和幸)

高萩弘
社長 新サービスのコアとなる機能は、複数のクラウドサービスの運用状況を可視化する「マルチクラウド統合ポータル」だ。具体的には、クラウドサービスごとの利用状況のデータを比較可能なかたちに整形して一元的に集約し、それぞれの利用金額、サーバー稼働台数、障害発生状況などを分析したうえで、全体の最適化を図る。高萩社長は、「オンプレミスに比べてクラウドは設計・構築、導入が容易だが、そのために複数のクラウドが部門ごとに乱立する状態にもなっていて、とくに運用に多大な工数、コストが発生しているという課題がある。マルチクラウド統合ポータルは、クラウド運用の管理工数・コストを最大40%削減できる。複数のクラウドサービスを統合管理して最適化できるこうしたサービスは、国内初だと自負している」と、手応えを語る。
当面はIaaSへの対応が基本で、「K5」、「Trusted Public S5」、「A5 for Microsoft Azure」、「Nifty Cloud」といった富士通グループのサービスのほか、最大手であるアマゾン・ドットコムの「Amazon Web Services(AWS)」、ヴイエムウェアの「vCloud Air」もカバーする。ただし、マルチクラウドLCMを標榜するとおり、対応サービスは今後順次拡充していく方針。平野一雄・取締役執行役員常務サービス部門担当は、「将来的にはPaaS、SaaSへの対応も視野に入れる」と説明する。また、各クラウドサービスの調達や課金管理なども、富士通エフサスがワンストップで対応する。

平野一雄
常務 マルチクラウド統合ポータルを活用したクラウドサービスの運用最適化は継続的に行い、ここで抽出した改善点は、顧客の次期クラウドシステムの企画にフィードバックすることになる。また、同社のこれまでの構築実績をもとにシステム構成を共通テンプレート化し、これがマルチクラウド環境で確実に稼働するように、「マルチクラウド検証センター」を新設して徹底した検証も行ったうえで、検証済みの「クラウドデザインパターン」として提供するという。
これにより、システム構築の工数、コスト、納期を60%削減する。なお、センターでは、ハイブリッドクラウド環境での運用検証も手がける方針だ。東京に開設したセンターは、現在設備増強中で、関西、中部、東日本にも新設する予定がある。さらに、クラウドインテグレーション技術者の育成にも力を入れる。現在の技術者数は500人だが、今年度(2016年3月期)中に1000人、17年度末には2000人に増やす。
同社はクラウドビジネスだけで、17年度末までの3年間で累計売上高1000億円、17年度単年度売上高で440億円を目標にしている。17年度の時点で、クラウドビジネスの売上高の5割をマルチクラウドで占める計画だ。14年度の全社売上高が2830億円だったことを考えれば、社運をかけた新規事業として、この新サービスに大きな成長を見込んでいると言ってよさそうだ。