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中国で戦う現地キーパーソンが語る今 日系IT企業の勇姿をみる
2015/09/17 20:48
週刊BCN 2015年09月14日vol.1595掲載
「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌を遂げつつある中国。日系ITベンダーは、どのようにビジネスを拡大しようとしているのか。現地のキーパーソンに、これまでの進捗状況や現在の市況感、今後の戦略を聞いた。(構成:真鍋武)
北京凱迪迪愛通信技術
塩崎靖彦 総経理
生年 1960年
出身 北海道
●第3の事業の柱を構築
中国本土に13拠点を保有し、約300人の従業員を抱えている。これまでは、主に現地の日系企業を中心としたネットワークなどのIT構築事業と、現地パートナーとの共同展開でデータセンター(DC)事業を手がけてきた。
近年では、DC事業が好調だ。KDDIは、香港を含めると中華圏に6拠点のDCを構えている。北京は先行して売れており、ほぼ埋まっている状況。上海も残り少なく、規模が大きい香港も順調だ。DCの顧客は、過半数がローカル系や欧米系などの非日系企業。競合のDC事業者とは、顧客を取り合うのではなく、切磋琢磨しながらともに顧客を開拓している状況にある。
一方、日系企業を中心としたIT構築事業は、今後も伸ばしていくものの、日系マーケットだけでの売上2ケタ成長は厳しい。中国で売上高の2ケタ成長を維持していくためには、新たな事業の柱を構築する必要がある。
そこで小売・流通や教育、介護、環境など、中国で今後の成長が期待できる産業向けのITソリューションを新たに開発する。例えば、小売・流通業に対しては、小規模・多店舗型の経営を考慮したクラウド型ソリューションや販売・マーケティング支援の分析ソリューションなどを検討している。販売面では、すでに非日系企業の大規模な顧客基盤を有している中国の通信キャリアやDC事業者など、パートナー企業をチャネルとして活用する構想だ。ユーザーに新たな価値を提供するKDDIの商品をパートナーに提案し、Win-Winの形を構築していきたい。
南京富士通南大軟件技術
中村 実 副董事長・総経理
生年 1958年
出身 東京都
●多方面にビジネス展開
約1340人の従業員を抱え、主に日本向けオフショア開発を手がけている。プラットフォーム製品やミドルウェア、業務アプリケーション、車載などの組み込みシステムと製品開発の案件を請け負っており、現状では、富士通グループ向けの案件が、全体開発量の9割程度を占める。
オフショア開発の市場環境は厳しい。事業範囲の広域化によって、持続的な成長を遂げたい。これまで、富士通のソフトウェア部門を大口顧客としてきたが、現在は受注量が増えている状況ではない。今後は、富士通グループの他部門に対する営業を強化する。富士通グループは“ヒューマンセントリック”を掲げており、未来医療や教育イノベーション、モビリティなどを手がける部門からの案件を請け負いたい。
中国国内でのシステム開発案件にも力を注いでいる。ハードウェアやミドルウェア分野の技術力をもっている現地企業は少なく、当社が15年かけて蓄積してきた経験・ノウハウを生かせる場面が、中国で広がっている。すでに華為技術やZTE、中国電信など、中国の大手企業の案件も手がけており、顧客に占めるローカル企業の割合は4割程度に拡大している。
自社プロダクトにも挑戦中だ。例えば、タブレット端末を活用した小中学校向けスマート教育システム「Smart Class」は、現在、南京市内の学校で試験運用を実施している。
2014年度(14年12月期)の売上高は3億元弱。今年度は売上高を10%成長させたい。
上海特思尓大宇宙商務咨詢
山下栄二郎 董事長総経理
生年 1968年
出身 大阪府
●唯一のEC支援トータルサービス
中国国内で、コールセンター、EC支援サービス、デジタルマーケティング、ITOの4事業を手がけている。中国4地域に6拠点を抱え、従業員数は約1850人。受注堅調につき、2015年内には、これを2200人規模まで拡大したい。
とくに、屋台骨であるコールセンターとEC支援サービス事業が好調だ。コールセンターでは、中国の労働法改正による派遣労働者の利用制限などの影響で、アウトソーシングの需要が伸びている。競合は香港系や欧米系のグローバル企業だが、当社のグローバルでのブランド力と、日系企業ならではの徹底したコンプライアンスや管理体制が高く評価されている。顧客の7割方は非日系の超大手企業だ。
EC支援では、サイト構築や運営、代行、カスタマサービス、データ分析といったトータルサービスを提供している。中国最大のECモール「TMALL(天猫)」は得意分野で、2014年下半期には、優れた「TMALL Partner」として、4部門で認定を取得した。
さらに近年は、アパレルEC向けコンサルティングに強いマジックパンダや、コスメ・パーソナルケア商品のEC向け流通に強いUNQ、ECソリューションベンダーのShoupex、大手ECフルフィルメント・物流企業のFineEXなど、EC関連サービスを提供する企業との資本・業務提携を進め、ECに関わる業務を面でサポートできる体制を構築した。ここまでのサービスを提供できるのは、当社が唯一だ。
2015年度(15年12月期)の売上高は、前年度比で約2倍となる50億円を目指している。
東芝信息系統(瀋陽)
北川浩昭 董事長総経理
生年 1972年
出身 石川県
●新たな出発
今年5月29日付で、東芝ソリューションは東軟集団との合弁関係を解消し、当社を完全子会社化した。これによって社名を瀋陽東芝東軟信息系統から東芝信息系統(瀋陽)へと変更し、再出発を果たした。今後は、中国の東芝グループ向け共通ICT基盤の構築、東芝グループと連携したIoT(Internet of Things)関連ビジネス、自社単独で行う日系企業を中心としたITソリューション・サービスの提供を3本柱として、事業規模を拡大させていく。
その一環として、上海分公司を設立した。営業・技術部門をここに集中させて、上海中心のビジネスに切り替える方針だ。瀋陽本社は、人件費の安さを生かして、ヘルプデスクやDC運用、管理などバックオフィス系の業務を手がける。
とくに今後3年間では、東芝グループと連携したIoTビジネスを伸ばしたい。競合の日系大手ITベンダーとは異なり、原子力発電所や鉄道、医療機器など、IoTの監視対象となる“モノ”を手がけている東芝グループの強みを中国でも生かす。
すでに、東芝グループの中国法人とは、センサを活用したエレベータの遠隔監視事業で連携した。現在、システム環境を構築中で、来年4月をめどに、まずは中国で導入済みのエレベータ1万台の遠隔監視を稼働させる。今後も、鉄道や医療機器など、東芝グループ間での連携先を増やしていきたい。
生まれ変わった東芝信息系統(瀋陽)では、2017年度(17年12月期)の売上高20億円を目指す。
雅馬哈楽器音響(中国)投資
小野田充宏網絡会議企画室 室長
生年 1968年
出身 静岡県
●ローカル市場にくい込む
楽器や音響機器のイメージが強いヤマハだが、中国でも5年ほど前からルータやスイッチなどのネットワーク機器を販売している。総代理店であるエレクトロニクス専門商社の伯東と、SIerなどの特約代理店を通して提供する100%代理店ビジネスだ。
日本の製品を、中国向けにローカライズして提供しているものが多いが、中国の企業にとっては、過剰品質なうえに価格が高くて、受け入れられないこともある。そこで昨年、戦略商材として投入したのが、中国向けの品質基準とコスト感を実現したスマートゲートウェイ「SGX808」だ。通常のルータとしての利用はもちろんのこと、Linuxサーバーの機能も搭載しており、サードパーティ製のアプリケーションを稼働させることができる。例えば、位置情報を活用した客流解析アプリケーションなどを提供しており、飲食店やコンビニ、アパレルなどのリテール業を中心に販売している。開発パートナーを通して、店舗向けのPOS機能や飲食店のオーダー機能、ディーラー向けの受発注管理機能などのアプリケーションも提供する予定だ。
今後は、市場が大きい中国ローカル企業向けのビジネスを強化したい。現在の特約代理店は、日系企業を主要顧客としているので、中国の各地域で、特定エリアに強いローカルSIerと協業していく構想だ。とくに、成都や西安、重慶などの内陸地域に注目している。中国政府が掲げている新シルクロード構想「一帯一路」の重要地域で、今後のリテール業の活発化が期待できる。
上海求歩申亜信息系統
顧永斌 総経理
生年 1973年
出身 上海市
●穏健
オフショア開発の売上高が全体の7割程度を占めている。発注元は日本本社が100%。日本本社は、2020年までの中期経営計画として、大規模案件を一括受託できるSI会社への変貌を掲げており、中国法人では、これに技術面で貢献することが使命となっている。
しかし、オフショア開発の市場環境は厳しい。利益を捻出するための対策は不可欠となる。そこで、日本本社とともに品質、生産性を向上するための取り組みを強化した。その結果、2014年度(14年12月期)は黒字で終えた。
また、14年には中国国内向けのビジネスも開始した。現在、日系の製造業を中心に、主にITシステムのエンハンスサービスを提供している。中国のIT企業では、日本とエンハンス業務のやり方が違って、担当者が頻繁に入れ替わったり、管理体制がきちんと構築されていなかったりするケースが多い。日本品質を提供できる当社の強みを生かせると考えている。
今後は、2~3年かけて、特定業種向けの業務ノウハウを蓄積し、コンサルティングまで手がけられるようになりたい。現在は、製造業のなかでも、すでに取引実績のあるエレベータメーカー向けに特化する構想だ。
中国の市場環境は、最近、大きく変化していて安定していない。そのため、多くの企業は焦りを感じている。しかし、IT企業は技術がすべてだ。地道に、穏健に、人材を育てて、技術力を磨いていくことが不可欠だ。現在の従業員数は約40人。中長期的には100人体制を目指す。
上海思達典雅信息系統
柴田 淳 総経理
生年 1970年
出身 山形県
●個性あるサービスで飛躍
当社の主力商材は、日中間のインターネット高速化を実現するサービス「Global Gateway」だ。中国のインターネット接続は回線が細く、日本とのアクセスは複数の経路をたどるため、日中間の通信スピードは遅いのが一般的だ。日本とテレビ会議をしたり、大容量のデータ通信を行う企業の多くが、この事情に悩んでいる。
日中間のインターネットを高速化するサービスには専用線もあるが、品質はよくても価格が高い。また、安価なVPNサービスも存在するが、安定した接続を確保しづらい。これに対しGlobal Gatewayでは、専用のルータを経由して、中国の大手通信キャリアが保有する日中間の海底ケーブルを通じて接続することで、安定した品質での高速通信を実現する。価格も1ユーザーあたり月額500元に抑えてある。
ターゲットは、日中間のインターネットを利用するすべての企業だ。とくに今年は、日中間のインターネットが不安定な状態が続いており、問い合わせが増えている。無料トライアルですぐに品質を確認することができ、「こんな便利なサービスがあったんだ」と驚いてくれることも多い。
目標は、中国の日系企業の間で、Global Gatewayをスタンダートなサービスにすることだ。そのために現在、代理店を募集している。IT企業だけでなく、不動産業など、多方面のパートナーを増やしていきたい。また、今後は、他の日系IT企業が手がけていない独自性のある他のサービスも提供していきたい。
若尓丹(上海)軟件開発
結川昌憲 董事長総経理
生年 1968年
出身 福井県
●日本・中国・ASEANで顧客層拡大
日本向けには、本社と連携して、急増する訪日観光客に対するマーケティング支援事業を4月に開始した。中国のチャットアプリ「微信(WeChat)」の日系企業向けアカウントサービスだ。微信のアカウント取得申請代行や情報発信用インターフェースの開発、運営代行、イベントなどの発案・企画・実施といったトータルサービスを提供しており、営業は日本本社、開発・運営は中国が担当している。2020年の東京五輪開催まで、訪日観光客は増え続けるとみており、すでに相当数の引き合いがある。
一方、中国国内では、クラウド型で提供しているモバイルOAシステムが好調だ。GPS機能を搭載したモバイル端末を活用して、管理者が外勤者の位置を一元的に把握したり、外勤者が現場から簡単に営業報告や日報を送ったりできるサービスだ。これまでの実績を事例集にまとめて提案するなど、工夫を凝らしたこともあり、営業マンや物流網、保守要員を多く抱える日系大手企業からの引き合いが増えている。
最近では、日系物流企業のシンガポール拠点から初受注を果たした。モバイルOAシステムをベースに、バーコードリーダを活用した車両貨物トレースシステムなどを構築した。今後は、これをパッケージ化して外販したい。
当社は上海を起点に、日本、中国、ASEAN地域へと顧客層を広げており、2015年度(15年12月期)は、売上高の前年度比倍増を見込んでいる。2016年度には、ローカル企業の開拓も本格化させて、売上高をさらに50%成長させたい。
北京凱迪迪愛通信技術
KDDI

生年 1960年
出身 北海道
●第3の事業の柱を構築
中国本土に13拠点を保有し、約300人の従業員を抱えている。これまでは、主に現地の日系企業を中心としたネットワークなどのIT構築事業と、現地パートナーとの共同展開でデータセンター(DC)事業を手がけてきた。
近年では、DC事業が好調だ。KDDIは、香港を含めると中華圏に6拠点のDCを構えている。北京は先行して売れており、ほぼ埋まっている状況。上海も残り少なく、規模が大きい香港も順調だ。DCの顧客は、過半数がローカル系や欧米系などの非日系企業。競合のDC事業者とは、顧客を取り合うのではなく、切磋琢磨しながらともに顧客を開拓している状況にある。
一方、日系企業を中心としたIT構築事業は、今後も伸ばしていくものの、日系マーケットだけでの売上2ケタ成長は厳しい。中国で売上高の2ケタ成長を維持していくためには、新たな事業の柱を構築する必要がある。
そこで小売・流通や教育、介護、環境など、中国で今後の成長が期待できる産業向けのITソリューションを新たに開発する。例えば、小売・流通業に対しては、小規模・多店舗型の経営を考慮したクラウド型ソリューションや販売・マーケティング支援の分析ソリューションなどを検討している。販売面では、すでに非日系企業の大規模な顧客基盤を有している中国の通信キャリアやDC事業者など、パートナー企業をチャネルとして活用する構想だ。ユーザーに新たな価値を提供するKDDIの商品をパートナーに提案し、Win-Winの形を構築していきたい。
南京富士通南大軟件技術
富士通

生年 1958年
出身 東京都
●多方面にビジネス展開
約1340人の従業員を抱え、主に日本向けオフショア開発を手がけている。プラットフォーム製品やミドルウェア、業務アプリケーション、車載などの組み込みシステムと製品開発の案件を請け負っており、現状では、富士通グループ向けの案件が、全体開発量の9割程度を占める。
オフショア開発の市場環境は厳しい。事業範囲の広域化によって、持続的な成長を遂げたい。これまで、富士通のソフトウェア部門を大口顧客としてきたが、現在は受注量が増えている状況ではない。今後は、富士通グループの他部門に対する営業を強化する。富士通グループは“ヒューマンセントリック”を掲げており、未来医療や教育イノベーション、モビリティなどを手がける部門からの案件を請け負いたい。
中国国内でのシステム開発案件にも力を注いでいる。ハードウェアやミドルウェア分野の技術力をもっている現地企業は少なく、当社が15年かけて蓄積してきた経験・ノウハウを生かせる場面が、中国で広がっている。すでに華為技術やZTE、中国電信など、中国の大手企業の案件も手がけており、顧客に占めるローカル企業の割合は4割程度に拡大している。
自社プロダクトにも挑戦中だ。例えば、タブレット端末を活用した小中学校向けスマート教育システム「Smart Class」は、現在、南京市内の学校で試験運用を実施している。
2014年度(14年12月期)の売上高は3億元弱。今年度は売上高を10%成長させたい。
上海特思尓大宇宙商務咨詢
トランスコスモス

生年 1968年
出身 大阪府
●唯一のEC支援トータルサービス
中国国内で、コールセンター、EC支援サービス、デジタルマーケティング、ITOの4事業を手がけている。中国4地域に6拠点を抱え、従業員数は約1850人。受注堅調につき、2015年内には、これを2200人規模まで拡大したい。
とくに、屋台骨であるコールセンターとEC支援サービス事業が好調だ。コールセンターでは、中国の労働法改正による派遣労働者の利用制限などの影響で、アウトソーシングの需要が伸びている。競合は香港系や欧米系のグローバル企業だが、当社のグローバルでのブランド力と、日系企業ならではの徹底したコンプライアンスや管理体制が高く評価されている。顧客の7割方は非日系の超大手企業だ。
EC支援では、サイト構築や運営、代行、カスタマサービス、データ分析といったトータルサービスを提供している。中国最大のECモール「TMALL(天猫)」は得意分野で、2014年下半期には、優れた「TMALL Partner」として、4部門で認定を取得した。
さらに近年は、アパレルEC向けコンサルティングに強いマジックパンダや、コスメ・パーソナルケア商品のEC向け流通に強いUNQ、ECソリューションベンダーのShoupex、大手ECフルフィルメント・物流企業のFineEXなど、EC関連サービスを提供する企業との資本・業務提携を進め、ECに関わる業務を面でサポートできる体制を構築した。ここまでのサービスを提供できるのは、当社が唯一だ。
2015年度(15年12月期)の売上高は、前年度比で約2倍となる50億円を目指している。
東芝信息系統(瀋陽)
東芝ソリューション

生年 1972年
出身 石川県
●新たな出発
今年5月29日付で、東芝ソリューションは東軟集団との合弁関係を解消し、当社を完全子会社化した。これによって社名を瀋陽東芝東軟信息系統から東芝信息系統(瀋陽)へと変更し、再出発を果たした。今後は、中国の東芝グループ向け共通ICT基盤の構築、東芝グループと連携したIoT(Internet of Things)関連ビジネス、自社単独で行う日系企業を中心としたITソリューション・サービスの提供を3本柱として、事業規模を拡大させていく。
その一環として、上海分公司を設立した。営業・技術部門をここに集中させて、上海中心のビジネスに切り替える方針だ。瀋陽本社は、人件費の安さを生かして、ヘルプデスクやDC運用、管理などバックオフィス系の業務を手がける。
とくに今後3年間では、東芝グループと連携したIoTビジネスを伸ばしたい。競合の日系大手ITベンダーとは異なり、原子力発電所や鉄道、医療機器など、IoTの監視対象となる“モノ”を手がけている東芝グループの強みを中国でも生かす。
すでに、東芝グループの中国法人とは、センサを活用したエレベータの遠隔監視事業で連携した。現在、システム環境を構築中で、来年4月をめどに、まずは中国で導入済みのエレベータ1万台の遠隔監視を稼働させる。今後も、鉄道や医療機器など、東芝グループ間での連携先を増やしていきたい。
生まれ変わった東芝信息系統(瀋陽)では、2017年度(17年12月期)の売上高20億円を目指す。
雅馬哈楽器音響(中国)投資
ヤマハ

生年 1968年
出身 静岡県
●ローカル市場にくい込む
楽器や音響機器のイメージが強いヤマハだが、中国でも5年ほど前からルータやスイッチなどのネットワーク機器を販売している。総代理店であるエレクトロニクス専門商社の伯東と、SIerなどの特約代理店を通して提供する100%代理店ビジネスだ。
日本の製品を、中国向けにローカライズして提供しているものが多いが、中国の企業にとっては、過剰品質なうえに価格が高くて、受け入れられないこともある。そこで昨年、戦略商材として投入したのが、中国向けの品質基準とコスト感を実現したスマートゲートウェイ「SGX808」だ。通常のルータとしての利用はもちろんのこと、Linuxサーバーの機能も搭載しており、サードパーティ製のアプリケーションを稼働させることができる。例えば、位置情報を活用した客流解析アプリケーションなどを提供しており、飲食店やコンビニ、アパレルなどのリテール業を中心に販売している。開発パートナーを通して、店舗向けのPOS機能や飲食店のオーダー機能、ディーラー向けの受発注管理機能などのアプリケーションも提供する予定だ。
今後は、市場が大きい中国ローカル企業向けのビジネスを強化したい。現在の特約代理店は、日系企業を主要顧客としているので、中国の各地域で、特定エリアに強いローカルSIerと協業していく構想だ。とくに、成都や西安、重慶などの内陸地域に注目している。中国政府が掲げている新シルクロード構想「一帯一路」の重要地域で、今後のリテール業の活発化が期待できる。
上海求歩申亜信息系統
キューブシステム

生年 1973年
出身 上海市
●穏健
オフショア開発の売上高が全体の7割程度を占めている。発注元は日本本社が100%。日本本社は、2020年までの中期経営計画として、大規模案件を一括受託できるSI会社への変貌を掲げており、中国法人では、これに技術面で貢献することが使命となっている。
しかし、オフショア開発の市場環境は厳しい。利益を捻出するための対策は不可欠となる。そこで、日本本社とともに品質、生産性を向上するための取り組みを強化した。その結果、2014年度(14年12月期)は黒字で終えた。
また、14年には中国国内向けのビジネスも開始した。現在、日系の製造業を中心に、主にITシステムのエンハンスサービスを提供している。中国のIT企業では、日本とエンハンス業務のやり方が違って、担当者が頻繁に入れ替わったり、管理体制がきちんと構築されていなかったりするケースが多い。日本品質を提供できる当社の強みを生かせると考えている。
今後は、2~3年かけて、特定業種向けの業務ノウハウを蓄積し、コンサルティングまで手がけられるようになりたい。現在は、製造業のなかでも、すでに取引実績のあるエレベータメーカー向けに特化する構想だ。
中国の市場環境は、最近、大きく変化していて安定していない。そのため、多くの企業は焦りを感じている。しかし、IT企業は技術がすべてだ。地道に、穏健に、人材を育てて、技術力を磨いていくことが不可欠だ。現在の従業員数は約40人。中長期的には100人体制を目指す。
上海思達典雅信息系統
スターティア

生年 1970年
出身 山形県
●個性あるサービスで飛躍
当社の主力商材は、日中間のインターネット高速化を実現するサービス「Global Gateway」だ。中国のインターネット接続は回線が細く、日本とのアクセスは複数の経路をたどるため、日中間の通信スピードは遅いのが一般的だ。日本とテレビ会議をしたり、大容量のデータ通信を行う企業の多くが、この事情に悩んでいる。
日中間のインターネットを高速化するサービスには専用線もあるが、品質はよくても価格が高い。また、安価なVPNサービスも存在するが、安定した接続を確保しづらい。これに対しGlobal Gatewayでは、専用のルータを経由して、中国の大手通信キャリアが保有する日中間の海底ケーブルを通じて接続することで、安定した品質での高速通信を実現する。価格も1ユーザーあたり月額500元に抑えてある。
ターゲットは、日中間のインターネットを利用するすべての企業だ。とくに今年は、日中間のインターネットが不安定な状態が続いており、問い合わせが増えている。無料トライアルですぐに品質を確認することができ、「こんな便利なサービスがあったんだ」と驚いてくれることも多い。
目標は、中国の日系企業の間で、Global Gatewayをスタンダートなサービスにすることだ。そのために現在、代理店を募集している。IT企業だけでなく、不動産業など、多方面のパートナーを増やしていきたい。また、今後は、他の日系IT企業が手がけていない独自性のある他のサービスも提供していきたい。
若尓丹(上海)軟件開発
ジョルダン

生年 1968年
出身 福井県
●日本・中国・ASEANで顧客層拡大
日本向けには、本社と連携して、急増する訪日観光客に対するマーケティング支援事業を4月に開始した。中国のチャットアプリ「微信(WeChat)」の日系企業向けアカウントサービスだ。微信のアカウント取得申請代行や情報発信用インターフェースの開発、運営代行、イベントなどの発案・企画・実施といったトータルサービスを提供しており、営業は日本本社、開発・運営は中国が担当している。2020年の東京五輪開催まで、訪日観光客は増え続けるとみており、すでに相当数の引き合いがある。
一方、中国国内では、クラウド型で提供しているモバイルOAシステムが好調だ。GPS機能を搭載したモバイル端末を活用して、管理者が外勤者の位置を一元的に把握したり、外勤者が現場から簡単に営業報告や日報を送ったりできるサービスだ。これまでの実績を事例集にまとめて提案するなど、工夫を凝らしたこともあり、営業マンや物流網、保守要員を多く抱える日系大手企業からの引き合いが増えている。
最近では、日系物流企業のシンガポール拠点から初受注を果たした。モバイルOAシステムをベースに、バーコードリーダを活用した車両貨物トレースシステムなどを構築した。今後は、これをパッケージ化して外販したい。
当社は上海を起点に、日本、中国、ASEAN地域へと顧客層を広げており、2015年度(15年12月期)は、売上高の前年度比倍増を見込んでいる。2016年度には、ローカル企業の開拓も本格化させて、売上高をさらに50%成長させたい。
「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌を遂げつつある中国。日系ITベンダーは、どのようにビジネスを拡大しようとしているのか。現地のキーパーソンに、これまでの進捗状況や現在の市況感、今後の戦略を聞いた。(構成:真鍋武)
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