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トレンドマイクロ 中国子会社の全事業をAsiaInfoが取得 狙いは“ローカル化”による市場開拓
2015/10/15 20:48
週刊BCN 2015年10月12日vol.1599掲載
【上海発】トレンドマイクロ(エバ・チェン社長)は、中国の子会社であるトレンドマイクロ(中国)の事業のすべてを、現地IT大手の亜信科技(中国)(AsiaInfo)が取得する契約を交わした。契約内容には、トレンドマイクロ(中国)の株式51%以上の売却も含んでいるとみられる。取引完了後、トレンドマイクロ(中国)は社名を「亜信安全」に変更する模様。ローカル企業化したうえで、中国政府による“安全で自主制御が可能”な国産IT製品として、セキュリティ商材を提供していく。(上海支局 真鍋武)
9月1日、トレンドマイクロは、「中国市場における製品のライセンスや技術の著作権を含めたトレンドマイクロ(中国)のビジネスのすべてを、AsiaInfoが取得する」とするプレスリリースを発表した。諸条件は非公開。背景や狙いも明らかにしていない。これについて、市場では「トレンドマイクロは中国から撤退するのではないか」という憶測が飛び交ったが、同社は「撤退ではない」と否定。しかし、今後の中国事業については、「具体的な情報は公開できない」として口を噤んでいた。
今回の発表内容の事実関係について、BCN上海支局は、トレンドマイクロ(中国)の関係者から回答を得た。それによると、トレンドマイクロは、トレンドマイクロ(中国)の製品のライセンスや技術の著作権とともに、同社の株式51%以上をAsiaInfoに売却する。その後は、筆頭株主となったAsiaInfoの子会社として、社名を「亜信安全」に変更。同社には、トレンドマイクロが中国に保有する研究開発センターの一部人員も加わる予定だという。
トレンドマイクロにとって、今回の売却の狙いは、むしろ中国事業を拡大することにあるようだ。トレンドマイクロ(中国)は、北京、上海、広州に拠点を抱え、従業員数は約200人。中国国内で、セキュリティ関連ソリューションを法人・個人に対して提供してきた。しかし、中国政府は、2013年のエドワード・スノーデン氏による「PRISM事件」以降、セキュリティ分野への監視・統制を強化しており、国内で“安全に自主制御が可能”とする国産IT製品の導入を推進している。昨年には、政府機関のIT調達リストからシマンテックやカスペルスキ―が除外される事態が生じており、外資系IT企業の製品は、中国のローカル市場を開拓しにくい状況だ。そこでトレンドマイクロは、中国子会社の株式の過半数超をAsiaInfoに売却して“ローカル企業化”させるとともに、製品ライセンスや著作権も同社の所有物とすることで、“国産IT製品”として中国国内で拡販しようとしている。
すでに、同様の動きは欧米のIT企業でもみられる。今年5月には、米ヒューレット・パッカード(HP)が、中国子会社の杭州華三通信技術(H3C Technolgies)の株式51%を、現地IT大手の紫光に売却することを発表した。調査会社のIDC中国は、中国政府による国産IT製品の導入推進が大きく影響しているとみており、同買収について、「外資IT企業から中国ローカルIT企業への転換を図った」と分析。今後も、中国ローカル企業への株式売却が、外資系IT企業の市場開拓の手段として使われる可能性が高い。
一方、AsiaInfoにとって今回の買収には、自社の製品ラインアップを強化して、ユーザー層の拡大を図る狙いがある。同社は、グローバル約10か国でITソリューション・サービスを提供している。中国大手ITプロバイダで、とくに通信事業者向けビジネスを得意領域としている。現在は、セキュリティ事業に力を注いでおり、買収によって、「通信業界でのリーダーとしての優位性を保つと同時に、金融・教育・製造・医療などの各業界のユーザーを開拓できる。さらに、国家の情報セキュリティを保障し、“自主制御可能”な情報産業の発展を実施できる」と説明している。
取引は2015年末までに完了する予定。その後、AsiaInfoは、セキュリティ関連の研究開発センターを設立し、将来は2000人以上の組織を構成して、中国市場を開拓する方針だ。
【上海発】トレンドマイクロ(エバ・チェン社長)は、中国の子会社であるトレンドマイクロ(中国)の事業のすべてを、現地IT大手の亜信科技(中国)(AsiaInfo)が取得する契約を交わした。契約内容には、トレンドマイクロ(中国)の株式51%以上の売却も含んでいるとみられる。取引完了後、トレンドマイクロ(中国)は社名を「亜信安全」に変更する模様。ローカル企業化したうえで、中国政府による“安全で自主制御が可能”な国産IT製品として、セキュリティ商材を提供していく。(上海支局 真鍋武)
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