企業内外のシステムには、さまざまなプラットフォームが混在しているケースが多い。しかも、クラウドサービスを利用する傾向も高まってきた。このような環境下で行うファイル転送やデータ連携は難しいとの見方が強い。システム担当者にとっては課題の一つになっているわけだが、そんな悩みを解決してくれるデータ連携ミドルウェアがある。セゾン情報システムズの「HULFT(ハルフト)」だ。8000社を超える企業が国内外でユーザーになっている。今年12月には新製品の発売を控えており、新規領域でユーザー企業がさらに増える可能性を秘めている。(取材・文/佐相彰彦)
「Harmonius Universal Link」がコンセプト

小野和俊
CTO HULFTの名称は、もともとは「Host Unix Linkage File Transfer」の頭文字を取ったものだった。1993年に発売し、当初はUNIX環境に適したミドルウェアとしてユーザー企業を獲得した。その後、さまざまなプラットフォームに対応。クラウド内でのファイル転送やデータ連携にも適している。そこで、昨年12月にHost Unix Linkageの部分を「Harmonius Universal Link」としてコンセプトを変更。セゾン情報システムズでは、さまざまなプラットフォームやシステム環境、ネットワークを超えてデータをつなぐ製品としてHULFTを位置づけた。ユーザー企業数は、今年3月時点で国内外を合わせて8100社。販売本数は累計17万3000本だ。小野和俊・取締役CTOは、「最近では、1年間で平均1万本は増えている」と自信をみせている。
実際、さまざまなプラットフォームやシステム環境をつなぐ製品として、世界41か国でユーザー企業を獲得しているわけだが、これは日本語だけでなく英語や中国語など複数言語をカバーしていることが大きな理由だ。電話やメールなどのサポートについても複数言語に対応。小野CTOは、「中国で地場企業を獲得したり、今年4月にシンガポール拠点を開設したことでASEANで広がる可能性があったりと、とくに海外での伸びが顕著にあらわれている」という。
今年末をめどに新バージョンを発売
セゾン情報システムズでは、順調にユーザー企業を増やしているなか、年末をめどに新バージョンとなる「HULFT8.1」の提供を開始する予定だ。新バージョンでは、「HULFT7」でカバーしていたメインフレームへの対応や言語の拡充などを図っている。小野CTOは、「(現バージョンの)『HULFT8』で要望の高かった機能を強化した」としている。
昨年度(15年3月期)は、HULFTビジネスで前年比5%増の70億1100万円だった。小野CTOは、「当面は堅調に売り上げを伸ばしていく」との方針を掲げる。その決め手となるのが「AWSユーザーがHULFTを導入するケースが多くなるなど、クラウドと親和性が高いことを認識するユーザー企業が増えている」ということだ。日本では、オンプレミス型システムの構築とクラウドサービスの利用というハイブリッド環境が進みつつあることから、「HULFTを求める傾向が高まるのではないか」と捉えている。販社にとっては、ハイブリッド環境を促すうえでHULFTを商材の一つに据えることで、案件を獲得する可能性を秘めている。
HULFTの「すべて」がわかる「HULFT DAYs 2015」を開催
セゾン情報システムズでは、HULFTの機能やシリーズ製品の紹介、導入事例、市場環境などの情報提供イベント「HULFT DAYs 2015」を東京と大阪、名古屋で開催する。ユーザー企業をはじめ、ディストリビュータやSIerなどが対象だ。
イベントのテーマは「つながる価値、ひろがる未来。 ~データ連携は新たな時代へ~」。基調講演では、アイ・ティ・アールの生熊清司・シニア・アナリストが、「国内IT投資の方向性とデジタル・イノベーションに求められるデータ活用サイクルの重要性」をテーマに登壇する。メインセッションでは、セゾン情報システムズの小野CTOが「HULFTとDataSpiderで実現する これからのシステム連携のありかた ~HULFT製品最新情報」と題して講演。ユーザー企業による導入事例の紹介では、りそな銀行をはじめ、王子ビジネスセンター(東京)、共同印刷西日本(大阪)、CKD(名古屋)が登壇する。
参加者から、有益な情報を得ることができるイベントとして好評を得ていることから、データ連携を切り口にビジネスを拡大しようとしているベンダーにとっては、参加する価値がありそうだ。