ソフトバンク コマース&サービス(ソフトバンクC&S、溝口泰雄社長兼CEO)は、11月18日、大日本印刷(DNP、北島義俊社長)の年次イベント「次世代コミュニケーション展 2015」(11月17~20日開催)において、DNPと共同でセミナーを実施した。テーマは、「実例に見るクラウド型ビジネスソフト活用最前線」。導入事例を交えながら、SaaSのメリットを解説するとともに、DNPのソフトウェア販売サイト「hyakka(ヒャッカ)」について紹介した。(取材・文/前田幸慧)
SaaSの利用で生産性の向上を

ソフトバンクC&S
伊藤孝太
統括部長 ソフトバンクC&S ICT事業本部モバイルクラウド販売推進統括部の伊藤孝太統括部長は、国内SaaS市場の動向とSaaSを利用するメリットについて解説した。
伊藤統括部長は、同社の商材がサーバーやソフトウェアパッケージ、ネットワークなどから、IaaS/PaaSといった基盤やクラウドサービス、IoTデバイスなどへと移り変わってきていることを背景に、現在のIT環境は「『所有』から『利用』へと変わってきている。とくに、国内SaaS市場は活況を呈しており、2018年まで堅調に拡大していく」と説明した。
SaaSを導入する最大のメリットは、「契約後、スピーディに利用を開始できること」(伊藤統括部長)にある。また、SaaSを利用する場合には、自社運用の場合とは異なり、保守メンテナンスにかかるコストを意識する必要はなく、月額や年額など、使用量に応じた料金を支払うだけでよい。
また、高齢化が進み、今後ますますの労働人口減少が予測されることから、「1人あたりの生産性の向上」を図ることが重要となる。伊藤統括部長は、クラウドサービスの導入により生産性向上が実現したとして、2社の事例を紹介。歯科用コンピュータソフトの開発・販売およびサポートを手がけるミック(木下邦男社長)が、グループウェアの「Office 365」の導入により、業務効率が上がったことや、全日本空輸(篠辺修社長)がソフトバンクの「スマートカタログ」を導入したことで、経費削減と従業員のスキル向上につながったという。
大企業がSaaSを使っていることから、うまく活用すれば、中小企業でも低コストで大企業並みのパフォーマンスを実現できる可能性がある。しかし、一概にSaaSといえども、さまざまなサービスが存在し、短サイクルで展開されるため、導入の検討にあたって、「効率よく情報を取れるサイトが重要になってくる」(伊藤統括部長)。そこで紹介するのが、DNPが11月4日に運用を開始したhyakkaだ。
hyakkaでSMB市場に参入

大日本印刷
太田圭規
部長 続いて講演した、DNP C&I事業部P&Iソリューション営業本部市場開発部の太田圭規部長がhyakkaを紹介。同サイトでは、現在、多岐にわたるソフトウェア100種類をラインアップ。購入したソフトウェアのライセンスは、管理者用のマイページで一括管理できる。また、購入の前に、一部を除き、最大1か月間無料トライアルが可能。また、請求書での支払いが可能など、「B2Bには必要なサービスを用意した」と自信をみせる。
DNPは創業から約140年という長い歴史があるなか、ビジネスの基本構造は大企業相手が中心となっており、「旧態依然として、中小企業へのアプローチできていなかった」という。hyakkaの立ち上げにあたり、「ソフトバンクC&Sをはじめとするパートナーの協力を得て実現できた」(太田部長)。満を持してのSMB市場参入となった。
現時点では、「新たに参入したSMB市場を開拓していく段階」としながらも、いずれは「世界から調達して世界で売りたい」(同)と、グローバル展開にも意欲をみせる。DNPは、「SMB向けソフトウェアライセンスマーケットプレイスとして、早い段階で日本ナンバーワンを目指す」とし、2020年度(2021年3月期)までの5年間で、累計50億円の売り上げを目標に掲げている。