CAテクノロジーズは11月16日から20日まで、同社の年次イベント「CA World '15」を米ラスベガスで開催した。同社のマイク・グレゴアCEOは、破壊的イノベーションが次々と押し寄せる現代において、企業が生き残るには「ビジネスをソフトウェアで書き換える」ことが求められると主張。その実現のための手段を提供するのが同社の役割と説明した。(日高彰)

マイク・グレゴア
CEO CA Worldの基調講演の冒頭でグレゴアCEOは、配車アプリケーション「Uber」や、民泊マッチングサービス「Airbnb」などが人気を集め、ここ数年の間でいわゆる“シェアリングエコノミー”が急速に確立されたことに触れた。
グレゴアCEOは、各サービスの成功そのものよりも、タクシーや宿泊といった既存の業界を破壊するような新しい経済圏が形成されるまでの、スピードの速さに注目する。PCが登場してから、ウェブブラウザが開発されるまでには15年以上の長い時間を必要としていたのに対し、スマートフォンの登場からそれを活用したシェアリングエコノミーの事業化までの期間は、わずか5年程度に短縮されている。革新のサイクルは年々短くなっており、次々と押し寄せる変革の波を乗りこなすことがビジネスの継続的な成長には不可欠になりつつある。しかし、豊富な知見を有するはずの大企業であっても、市場の変化のスピードを見誤り、革新的な技術やアイデアをビジネスに取り入れるタイミングを逃すという失策をしばしば犯している。
イノベーションをいち早く捉え、その力をいかにしてビジネスに転化するか。グレゴアCEOは、「答えはソフトウェアだ」と断言する。同社は「Business, rewritten by software(ビジネスはソフトウェアによって書き換えられる)」をスローガンの一つとしているが、これは単にITの導入で生産性を上げるという意味ではなく、シェアリングエコノミーの成功にみられるように、ソフトウェアの力がビジネスモデルそのものになるという考えが込められている。
CAテクノロジーズでは、旧来型のソフトウェア開発では、現代のビジネスが求めるスピードに対応することはできないとして、DevOpsやアジャイル開発関連の製品ポートフォリオを積極的に拡充している。今年に入ってからだけでも、アジャイル開発ソリューションのRally Software Development、自動ソフトウェアテストのGridーToolsなどの買収を相次いで発表している。
同社はメインフレーム時代からの顧客を多数抱えており、そのなかには業界リーダーの地位にある大企業も多い。しかし、ビジネスのスケールや保有する情報システムの規模が大きい企業ほど、ニーズに応じて柔軟にソフトウェアを開発し、市場の反応を敏感に嗅ぎ取って継続的に改善を加えていくことを苦手としていることが少なくない。グレゴアCEOは、API管理、DevOps、アジャイル開発など同社が提供する製品を利用すれば、大企業もスタートアップ企業と同様の俊敏性を手に入れることができると主張。米GEやオランダのフィリップスといった老舗の巨大企業が、CAの製品を活用してアプリケーションの市場投入のスピードを大きく向上させていると紹介したほか、日本の顧客としては全日本空輸(ANA)を挙げ、プロジェクトポートフォリオ管理の導入により、ITと経営の距離を縮めることに成功したとアピールした。
グレゴアCEOは講演のなかで、デジタル変革の時代におけるスピードの重要性を繰り返し訴えた。「大企業も俊敏で破壊的になれる」と述べ、企業のアジャイル化支援を戦略の中心とする意向を強調した。