2015年12月、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)主催の「MCPC award 2015」の表彰式が都内で開催された。業界の枠を越えてモバイルコンピューティングやIoT/M2Mシステムの普及促進を目的に掲げる同コンソーシアムでは、03年からIoT/M2M分野でモバイルシステムの導入成果を上げた事例を顕彰している。13回目となる今回の表彰式には、各部門で受賞した17社が集結した。(取材・文/小池晃臣(フリージャーナリスト))

「MCPC award 2015」の表彰式が都内で開催されたユーザー部門のグランプリは「JR東日本アプリ」が受賞
13人からなる作業部会によって評価され、その後7人のアワード審査委員による最終審査で議論を重ねて各賞が決定されるMCPC award。表彰式の冒頭では、MCPC普及促進委員長を務めるNTTドコモの松村智久氏が登壇し、各受賞者を称えるとともに、今回の審査の概要や受賞事例の傾向などについて言及した。「MCPC awardは社会から高い評価を受けている賞だと自負している。今回の受賞を機に、ぜひ業務拡大やビジネス拡大につなげていただきたい」と話し、今年の特徴として少子高齢化対策や医療、防災、人命救助など、社会課題の解決につながるサービスが目立った点を強調した。
ユーザー部門のグランプリとモバイルビジネス賞、さらに栄えある総務大臣賞に輝いたのは、東日本旅客鉄道(NTT東日本)だった。対象となったシステム「JR東日本アプリ」は、鉄道の利用が便利・快適になる情報の提供を目指したもので、14年3月にアプリをリリースして以来、ダウンロード数は140万件を超えるほどの人気を博している。NTT東日本が保有する時刻表や駅構内図など静的情報や運行情報、列車の在線位置などリアルタイム情報のなかから、利用者がその場で必要としている情報をスマートフォンですばやく簡単に入手できる。JR東日本アプリは、乗客が利用するアプリと、それを実現するための車上・地上システムで構成されている。
表彰を受けた同社の担当者は、「JR東日本アプリは、当社としてお客様に出せる情報をいかにわかりやすくご提供するかというコンセプトで開発を進めた。リアルタイムな情報提供によってお客様の不満を少しでも解消できればという思いが、これだけのダウンロード数につながっているのだと自負している。今後も、お客様に便利な情報をご提供できるようアプリをブラッシュアップしていきたい」と、感想と抱負を述べた。

「MCPC award 2015」の受賞企業プロバイダー部門のグランプリは「FASTIO」が受賞
「プロバイダー部門」のグランプリ/優秀賞はエコモットが受賞した。受賞したシステムは「IoTプラットフォーム FASTIO(ファスティオ)」。FASTIOは、各種システムやサービスのIoT化を支援するもので、1アカウントから約5000アカウントまで導入が可能というスケーラビリティを誇る。同社は、創業時よりIoT関連事業を展開しており、そこで培った要素技術や知見を投入。さまざまな市場のユーザー企業が簡単に自社の設備やサービスのIoT化を可能とするプラットフォームとして、FASTIOを開発した。すぐに使えるアプリやデバイス、通信回線、センサまでを含めたパッケージとして、シンプルな価格体系で提供している。現在、同社では多岐にわたるセンサへの対応や、外部のクラウドサービスとの連携を可能とするAPIの拡充などを通じて、より顧客ニーズに対応したものへとFASTIOを進化させ続けているという。
エコモットの担当者は、「(グランプリを受賞して)ようやく長年の夢がかなった。創業以来8年間、M2M一筋に取り組むなかで培ってきたものをパッケージ化することができ、FASTIOはさまざまなお客様から評価をいただいている。そうしたなかでも、このアワードこそが、われわれにとって最も大きな意義があるものだと思っている」と表彰式の場で想いを語った。
表彰式の後には、受賞者祝賀会とMCPC年末懇談会も行われ、会員同士、2016年への意気込みを語り合っていた。