デル(平手智行社長)は、昨年8月の平手智行社長、松本光吉・執行役員副社長パートナー事業本部長の就任以降、パートナービジネスの拡大方針をこれまで以上に鮮明にしている。デルが直販ビジネスで培ってきた資産をパートナーに開放、共用し、相互の販路拡大を図る計画も打ち出したが、その具体例ともいえる協業事例がついに登場した。(本多和幸)

デル
清水 博
パートナー事業本部
マーケティング本部長 デルは、3月15日、メディアマートと協業し、IBMの統計解析ソフト「IBM SPSS Statistics」を、デルの検証済みハードウェアと組み合わせて販売すると発表した。メディアマートは、医療機関向けのSPSSの販売でトップシェアを誇るとともに、インテグレーションサービスの実績も豊富で、デルの競合メーカーのハードウェア製品を数多く取り扱ってきた。デルにとっては、かつて各種ハードウェアの競合メーカーでもあったIBMのソフトウェア製品と自社のハードウェアを組み合わせたソリューションを、新しいパートナーに売ってもらうことになる。一方で、今回の協業では、デルが保有する約30万件の顧客リストやインサイドセールスのリソースを、メディアマートも活用できるようにした。両社にとって、販路の拡大につながる取り組みといえる。
デルの清水博・パートナー事業本部マーケティング本部長は、「製品のディスカウントやリベートといった類の話ではなく、直販ビジネスで成長したデルならではの強みを生かした、新しいパートナー戦略の具体例の第一弾といえる」と、メディアマートとの協業の意義を強調する。

メディアマート
多田慶太
代表取締役 メディアマートがSPSSの販売・導入ビジネスでこれまでターゲットとしてきた顧客は、全国約1000施設の臨床研修指定病院だが、同社の多田慶太・代表取締役は、「SPSSは、医師が論文を書く時に使うデファクトのソフト。いわゆる大病院である臨床研修指定病院以外にも、全国には病院が約8000か所、クリニックまで含めれば10万か所ほどあり、潜在的な需要は中小規模の医療機関でも相当あると考えているが、そこまで手が回らなかった」と話す。そのうえで、「デルはそうした顧客層にくまなくリーチできる顧客データベースをもち、インサイドセールスのノウハウやリソースも豊富。これを活用できるというのは当社にとって非常に大きなメリットがある」と期待を寄せる。
また、メディアマートは、SPSSを主に医師向けに販売してきたわけだが、「デル製品は医療機関の事務方のITインフラに採用されている例も多く、SPSSの販路拡大だけでなく、インテグレーションサービスの新規顧客獲得にもつなげたい」(多田代表取締役)という思惑もある。
当面は、メディアマートが従来SPSSの営業対象としてきた病院よりもやや小規模な、200~500床程度の病院、約2200か所をターゲットに両社が協力して拡販を進め、2016年中に150か所への導入を目指す。デルとしては、今回の協業をモデルケースとして、メディアマートのように特定業種・業界に細分化された強みをもつパートナーを、月に2~3件のペースで徐々に増やしていきたい考えだ。