このOracle Databaseのライセンス体系変更にいち早く反応したのが、「SQL Server」を擁するマイクロソフトだ。今年3月には、近く正式リリース予定の最新版「SQL Server 2016」について、オラクルの移行ユーザーに無償でライセンスを提供することを明らかにした。さらに、6月までの受注を条件に、DB移行検証のためのコンサルタント費用などをマイクロソフトが負担するキャンペーンも行っている。これらは、日本を含むグローバル共通の施策だ。
日本マイクロソフトの斎藤泰行・クラウド&エンタープライズビジネス本部クラウド&サーバー製品マーケティング部部長は、「今回のライセンス変更だけでなく、以前から年次保守ライセンスの値上げや定価の値上げなどが相次いでいて、オラクル製品からの移行先を探しているというお客様の声を非常によく聞くようになっていた。それに応えるのが今回のキャンペーンの一番の目的」だと明かす。その意味で、当面、オラクルからの移行を促す新規顧客の対象は、やはり中小規模のSE、SE1ユーザーが中心ということになる。また、無償提供されるSQL Server 2016のライセンスは、SQL Server 2014にダウングレードして使うことも可能で、日本マイクロソフトも、現実的にはそうしたユーザーが多数派だと見込む。最新製品であるSQL Server 2016の浸透に向けたブーストというよりも、まずはSQL Serverシリーズの顧客基盤拡大を後押しする施策になるといえそうだ。
中長期的な視点では、今回のキャンペーンを、同社が国内DB市場での覇権を日本オラクルから奪取するきっかけにしたいとも考えているようだ。斎藤部長は、「以前は、SQL Serverに対して安かろう悪かろうという市場のイメージがあったが、製品としてもオラクルと同等どころか、凌駕するレベルに達したと自負している」と話す。とくに、SQL Server 2016については、「M&Aで取り込んだモバイルBIツールやビッグデータ解析プラットフォームなどを標準実装しており、データ活用の部分はOracle Databaseに対して明確なアドバンテージがある。また、SQL Server 2016は、Azure SQL Databaseをオンプレミスに切り出した製品であり、Azureで実績のあるセキュアな製品でもある。オンプレからクラウド、運用管理から開発まで一貫したエクスペリエンスを提供できる」と、その仕上がりに自信をみせる。SIerの営業の現場にも、SQL Serverのこうした価値は浸透しているとのことで、SIパートナーとともにDBの勢力図を塗り替えようともくろむ。