アクロニス・ジャパン(大岩憲三社長)が、クラウドバックアップ事業での国内パートナー拡大に力を入れている。4月には「ニフティクラウド」のバックアップサービスとして採用が決定。今後はデータセンターやクラウド事業者のみならず、SIerやリセラーに対しても売上拡大のツールとして提案を図り、1年で150社のクラウドパートナーの獲得を目指す。(日高 彰)
アクロニスは、仮想マシンやオンプレミスのサーバー・PCを同社のクラウド上にバックアップするSaaS型のデータ保護ソリューション「Acronis Backup Service」を提供している。アクロニス・ジャパンの大岩社長によると、欧米ではバックアップSaaSベンダー間で競争が激しくなりつつあるが、日本国内はまだ“ブルーオーシャン”だといい、このタイミングでパートナー網を構築することで、クラウドバックアップ市場において優位なポジションを確立していく考え。クラウドの普及により外部にデータを保存することへの抵抗感が薄れつつあるほか、ITインフラの構築・運用に十分な人手が割けない中堅・中小企業でもディザスタリカバリや事業継続体制の確立が求められていることから、国内でも需要が期待できるとしている。
最近では多くのバックアップ製品が、WAN経由で遠隔地にバックアップを作成する機能を実装しているが、アクロニスでは遠隔バックアップ機能自体に加え、バックアップ先となるクラウドストレージや顧客管理コンソールなどを用意しているのが特徴。「当初からパートナービジネスに最適化した形でサービスを設計した」(大岩社長)といい、パートナーや顧客を階層構造で管理し、バックアップ/リストアの運用を遠隔で行うことができるようになっている。また、アクロニスのブランドを伏せたOEM形態での提供も可能なほか、自社でデータセンターを運営するパートナーは、自社のストレージとアクロニスのソフトウェアを組み合わせてバックアップサービスの基盤を構築することもできる。

大岩憲三
社長 大岩社長は、「まず当社のSaaSを利用してサービスをスモールスタートし、市場ニーズを確認してから自社インフラを用いた提供に移行することも可能」と説明。「クラウドバックアップへのニーズを感じてはいるが、新規ビジネスに投資するリスクをすぐには負えない」というパートナーも、アクロニスのSaaSを活用すれば初期投資なしで顧客にバックアップサービスを提供できる点を強調する。4月にはニフティが同社のパブリッククラウドサービス「ニフティクラウド」で、アクロニスのプラットフォームを利用したバックアップサービスの提供を開始した。イメージバックアップソフトとしての実績が評価され、OEMではなくアクロニスブランドでのサービス展開となっている。
アクロニスでは、SIerがクラウドバックアップを手がけるべき理由として、今まさにサーバーのクラウド移行が進行している点を挙げる。OSからデータまでを丸ごと保存する同社のイメージバックアップ製品では、オンプレミス環境で取得したイメージをクラウド環境にリストアすることもできる。このため、ふだんから顧客の環境を預かっておけば、顧客がクラウド移行を行う際に、自社が取り扱うクラウド基盤へスムーズに誘導できる。データ保護を提供しながら、顧客との長期的な関係づくりにも活用できる商材として、現在パッケージ版のアクロニス製品のみを販売しているパートナーに対しても、クラウドバックアップサービスの取り扱いを勧めていく考えだ。