米IBMは2月22日、米ヴイエムウェアとの提携を発表した。ヴイエムウェアの仮想化環境ソリューション「VMware」などのユーザーに対し、IBMのクラウドサービス「SoftLayer」で拡張性や柔軟性をもたらすというのが主な目的だ。発表から約4か月。米IBMでIBM Cloudのバイスプレジデントを務めるマーサー・ロウ氏に提携後の反響や、その後の更新情報、今後の展望などを聞いた。
高まるクラウド化へのニーズ
──ヴイエムウェアとの提携発表後、どのような反響がありましたか。
米IBM
マーサー・ロウ
バイスプレジデント
ストラテジック パートナー
IBM Cloud ロウ 予想以上に大きな反響がありました。ヴイエムウェアとのパートナーシップには長い歴史がありますし、VMwareをバンドルした製品も販売してきています。今回の提携は、その延長線上にあるため、さほど驚くようなものではありません。だから、こちらが驚いているほどです。
──2月22日の発表でしたが、なぜこのタイミングだったのでしょうか。ロウ あまり意味はないですね。IBMのクラウド事業が拡大していくなかで、VMwareユーザーから既存環境をクラウドネイティブで活用できるようにしたいという声が増えていました。また、IBMがハイブリッドクラウドを強調するようになったのも最近です。その意味では、今回の提携は自然な流れだったといえるでしょう。
──あらためて提携の狙いを教えてください。ロウ IBMはクラウド市場である程度の成功を収めてきています。そのなかで唯一できていなかったのが、VMwareユーザー向けのクラウド戦略です。今回の提携で、VMwareユーザーにクラウド環境を提供する体制がグローバルで整いました。
──具体的には、どのような体制が整いましたか。ロウ 大きく三つあります。一つは、「VMware SDDC(Software-Defined Data Center)」のフルスタックのソリューションをIBMが提供します。そこには、IBMクラウド上の「VMware vSphere」「NSX」「Virtual SAN」が含まれています。フルスタックで提供できるのは、IBMのみです。
二つ目は、VMware SDDCのフルスタックをそのままベアメタル環境に実装できることです。フルスタックをそのまま移行できるわけですから、ユーザーはこれまでの投資をムダにすることなく、クラウド環境へと継承できるのです。三つ目は、プライスモデル。VMware SDDCのフルスタックがIBMクラウドのサービスとして月単位で課金されます。
クラウドをボーダレスに
──提携発表から時間が経ちましたが、アップデート情報はありますか。ロウ 先ほどの三つのポイントが、すべて実装可能になりました。これまでは、ユーザーがクラウドとVMwareを別々に購入していましたが、現在ではワンストップですべて導入できます。発表からほぼ1か月で対応しました。
──他社のクラウド環境とは、そこが大きな違いになりますか。ロウ それもありますが、他のクラウド環境ではデータセンターの環境をそのままクラウドへと移行することができません。ツールも管理方法も、セキュリティ対策も変わってきます。IBMのクラウド上では、まったく同じ環境を提供できます。しかも、クラウドからデータセンターに戻すこともできます。
また、すべてのユーザーが完全クラウド化を望んでいるわけではありません。データセンターの環境を残しつつ、部分的にクラウドを採用するハイブリッドクラウドのニーズも確実にあります。そのときにデータセンターとクラウドでまったく違う環境となるようでは、運用管理が煩雑になってしまいます。IBMのクラウドであれば、共通基盤として運用できるのです。
──完全クラウド化には、何が障害になるのでしょう。ロウ 主に、セキュリティ、ロケーション、パフォーマンス、特殊なハードウェアが要因として挙げられます。こうした事情があると、クラウドに移行するのは難しい。
──両社の提携で、パートナーには何を期待しますか。ロウ ヴイエムウェアはとてもすばらしいパートナーエコシステムをもっています。今回の提携では、オンプレミスのノウハウがクラウドでも生きるわけですから、これをきっかけにビジネスを伸ばしていただきたい。また、IBMのパートナー企業で、ハードウェア販売を中心としていたベンダーには、ビジネスモデルを変えるきっかけになると期待しています。実際に大きな反響がありました。
ヴイエムウェアは常に新しいテクノロジーを追求する企業です。そのテクノロジーがIBMのサービス上で利用できるわけです。幅広くリーチしていくので、今後の展開を期待してください。