JBグループの中核事業会社であるJBCC(東上征司社長)は、ユーザー系開発会社の亀田医療情報と協業して、次世代電子カルテの大型商材を早ければ2017年にも投入する。外販に先立って千葉県の地域医療を支える亀田総合病院を中核とする医療法人グループに年内をめどに納入。並行して外販に向けたプレセールスをこの7月から本格的に始める。次世代電子カルテ商材が加わることで、JBグループと亀田医療情報は協業を通じて、向こう3年間で100案件の受注を目指す方針を示している。(安藤章司)
次世代電子カルテの名称は「AoLani(アオラニ)」。ユーザーインターフェースを抜本的に改善するとともに、医師が所属学会に報告するための治療成績など各種診療データも電子カルテのなかで一元的に管理できる「診療支援システム」を実装している点が、最大の“目玉機能”となる。
病院向けの電子カルテビジネスを巡っては、富士通やNECといった大手が幅を利かす寡占市場で、JBグループは大手をどう牽制し、存在感を高めるかが長年の課題だった。そこでJBグループは、亀田医療情報に30%近く出資をするかたちで「JBグループ×亀田医療情報」の連携の枠組みを形成するとともに、医療関連ベンダーが参加する「JBCCヘルスケア・コンソーシアム」も10年余り運営している。
亀田医療情報は、バックに控える亀田総合病院と密接な連携をとり、「病院ユーザーの医師や看護師の視点で、電子カルテを改善・開発する手法」(JBCCの岡田英樹・医療ソリューション事業部営業本部事業企画担当部長=亀田医療情報から出向中)によって、「診療支援システム」などで競合大手との差異化を推進している。

山本陽次常務(左)と岡田英樹担当部長
医師は電子カルテに診断情報を記述し、それをもとに検査や調剤の指示を出すのが基本だが、それとは別に所属学会への治療成績、臨床結果のデータを提出する役割を負っている。例えば、五大疾病をはじめとする各種疾病は、全国の専門医から集まるデータを学会に集約して分析し、診療のガイドライン作成の基礎にするなどして役立てている。これまでは専門医が独自に表計算ソフトなどで集計するケースが多かったが、「二重入力」による二度手間や、貴重なデータを病院のシステム内で管理できないという課題があった。
一見すると地味な機能のようだが、「ユーザー系システム会社ならではの、医師に喜ばれる機能」(岡田担当部長)として、開発に協力している医師からの評判は上々だという。
主に全国への拡販を担当するJBCCでは、今年度に入ってから岡田担当部長を筆頭に、亀田医療情報の営業の精鋭人員を出向者として受け入れ、「両社の営業部門が一丸となって、この7月からのプレ・セールスを本格的にスタートさせる」と、JBCCで医療ITビジネスを統括する山本陽次常務は話す。
これまでJBグループと亀田医療情報は、協業の枠組みのなかで、ベッド数100~400床の中堅・準大手の病院を中心に約200病院に医療システムなどを納入してきた実績を誇る。今回、「AoLani」の投入によって、地域の中核病院と周辺の診療所などを含めた医療法人グループをメインターゲットに、既存顧客のバージョンアップや新規顧客の獲得も含めて向こう3年間で100案件の受注を目指していくと、強い意欲を示している。