レノボ・ジャパン(レノボ、留目真伸社長)のエンタープライズビジネスの成長に向けた青写真がようやくみえてきた。IBMからx86サーバーの「System x」事業群を買収して本格的にスタートした同事業だが、IBM時代に比べ市場でのプレゼンスが低下した感は否めず、パートナー資産もスムーズに引き継ぐことができたとは言い難い状況だ。いってみれば、事業の再構築が必要な状況だが、Software Defined Infrastructure(SDI)に活路を見出し、販売パートナーとの協業強化も図る。(本多和幸)
サーバー事業部がDCグループ事業本部に

レノボ・ジャパン
上原 宏
事業部長 今年4月1日、レノボ・ジャパンで象徴的な組織変更があった。サーバー事業部をデータセンターグループ事業本部に改組し、データセンター用途か否かを問わず、サーバー製品を含むエンタープライズ事業は、同事業本部が所管することになったのだ。同社の上原宏・データセンターグループ事業本部事業部長は、「データセンターのインフラは、サーバーを仮想化するだけでなく、SDS(Software Defined Storage)やSDN(Software Defined Network)などSDIソリューションの浸透で、フレキシブルでスケーラブルなものに変化しつつある。これはつまり、サーバー主体でソフトウェア定義の世界に変わっていくということであり、レノボのエンタープライズ事業はそこで強みを発揮していく」と話す。
実際、レノボのエンタープライズ向け製品のポートフォリオは、SDIソリューションが明確に強化されている。今年1月には、米ニュータニックスのソフトウェアとSystem xサーバーを組み合わせたハイパーコンバージド・アプライアンス製品「Converged HX シリーズ」を日本市場に本格投入したほか、6月には、ネクセンタ・システムズ、クラウディアンのSDSソフトウェアとレノボ製ハードウェアを組み合わせたアプライアンス製品も発表している。レノボブランド初のSDSアプライアンス製品だという。
これらの製品ラインアップの拡充を強力に後押ししているのが、新しいパートナープログラムだ。SDSアプライアンスについては、ISVパートナー各社との協業で、レノボの工場でSDSソフトウェアをハードウェアに組み込み、検証済みのアプライアンス製品に仕上げて出荷する「StorSelect」プログラムを新たにスタートさせた。サポートもレノボが包括的なサポートサービスを提供する。ネクセンタ・システムズ、クラウディアンとの協業によるSDSアプライアンスは、同プログラムの成果だ。
日商エレが新プログラム初のリセラーパートナー

日商エレクトロニクス
坂井俊朗
事業本部長 今年4月には「Lenovo Togetherプログラム」も発表している。国内市場でのパートナーとの連携強化を目的とした新しいプログラムで、マーケティングやリード開拓、技術検証、トレーニングなどをレノボとパートナーが共同で展開する。ISV/IHV、リセラー、サービスプロバイダなど、幅広い属性のパートナーと協業していく考えだが、最終的なパートナーは100社程度に限定する方針で、厳選したパートナーと密接に連携し、成長のための堅い基盤を構築していく意向だ。当初、このLenovo Togetherプログラムでの協業は、Converged HX シリーズで連携するニュータニックス、SDSアプライアンスで連携するネクセンタ・システムズ、クラウディアンのほか、インテル、ジュニパー、マイクロソフト、レッドハット、SAP、ヴイエムウェアなど、ISV/IHVのグローバルベンダーが先行していた。しかし6月には、日商エレクトロニクス(日商エレ)が初のリセラーパートナーとして同プログラムに加わり、Converged HX シリーズの販売を始めた。
日商エレは、ニュータニックス製品の国内販売で豊富な実績をもつ。同社の坂井俊朗・ITプラットフォーム事業本部事業本部長は、「ニュータニックスの国内初の販売代理店として2012年からビジネスを展開しており、約100社にニュータニックス製ハイパーコンバージド・インフラを採用してもらった実績がある。日本のニュータニックスユーザーの60%くらいは日商エレのお客様ではないか」と、トップリセラーとしての自負をのぞかせる。同社は、ニュータニックス製品にデータ保護やVDI導入時のアセスメントサービスなどさまざまな機能を付加する「Nutanix Plus」という独自ソリューションをもっているが、今回のLenovo Togetherプログラム参加にあたっては、Converged HX シリーズについてもNutanix Plusを提供できるスキームになっている。日商エレにとってもレノボにとっても、お互いの顧客基盤を活用して新しい顧客開拓につなげるWin-Winの効果が期待できそうだ。

レノボ・ジャパン
橘 一徳
副事業本部長 さらに6月には、サーバー製品の付加価値サービスとして、NECと共同出資しているNECパーソナルコンピュータ(NEC PC)の米沢事業場で「米沢ファクトリー・インテグレーション・サービス」も開始している。System xやConverged HX Seriesなどを対象に、NEC PCの専任エンジニアが出荷前の点検や各種設定サービスなどを行う。なかなか市場におけるプレゼンスが上がらないレノボのハードウェアに、“米沢ブランド”の付加価値をつけるという狙いもありそうだ。レノボ・ジャパンの橘一徳・データセンターグループ事業本部DCGソリューション本部副事業本部長は、「システムインテグレーションまで踏み込むわけではないので、SIパートナーの皆さんにも、煩雑な作業をアウトソースするサービスとして利用してほしい」と、パートナーのビジネスの生産性を高めるサービスであるとも強調する。
レノボのエンタープライズビジネスを立て直すためのパートナープログラムや製品戦略は、すでに実行段階に入っている。SDI系のアプライアンス製品を武器に、リセラーパートナーの層を厚くできるかどうかが、今後の大きな課題になりそうだ。

NEC PC米沢事業場でサーバーの付加価値サービスも開始