【上海発】サイボウズ(青野慶久社長)のグローバル事業が勢いづいている。業務アプリ構築クラウド「kintone」とグループウェア「Garoon」を主力商材として、中国やアジア地域で着実に顧客を獲得。米国展開も順調に推移しており、認知度・信頼性の向上に寄与している。また、製品と並行して、同社の働き方改革に対する関心もグローバルで高まりつつある。「製品」と「働き方」の両輪をうまく回していくことで、効果的なグローバルの顧客開拓につなげていく。(上海支局 真鍋 武)
グローバルで先行して営業・サポート体制を整備してきた中国では、今年6月時点で導入ユーザー数が660社を突破した。すでに同国の販売事業は黒字化しており、2016年度(16年12月期)は前年を上回るペースで売上高が伸びている。顧客の8割方は現地の日系企業が占めるが、青野社長は、「ITを活用して情報共有をしようとする風土が、中国でもこの10年の間で醸成されてきた。まだまだ事業を伸ばせる。もう少し時間がたてば、ローカル市場も伸びてくる」と期待感を示す。

青野慶久社長(右)と
栗山圭太・執行役員営業本部長
アジア地域では、15年11月にパートナープログラムを制定し、シンガポール、ベトナム、タイ、インドネシア、フィリピンの5か国でkintoneを販売。栗山圭太・執行役員営業本部長は、「各地域でいいパートナーが揃っている。月平均で7社ほどユーザーが増えている」と現状について説明する。また、オーストラリアにも進出しており、5社程度の顧客を獲得している。
14年に子会社を設立して本格進出を果たした米国では、60社程度の顧客を獲得。同国を代表するスマートデバイスメーカーが国内外の複数拠点でkintoneを導入するなど、「手が届かないと思っていた企業が使ってくれている」(青野社長)と手ごたえを感じている。今年3月には、米国企業のCIOがIT導入の判断材料として利用する米ガートナーの「Magic Quadrant」のPaaS部門に、唯一の日本企業として掲載された。
サイボウズにとって、とくに米国市場での展開は意義が大きい。IT産業の最先端をゆく同国で実績を積み上げれば、国際的なブランド力を向上できるからだ。日系ITベンダーが海外の地場市場で事業展開する際、認知度不足がユーザー導入の壁となるケースは多い。青野社長は、「米国で成功すれば、中国を含めたグローバル展開がよりしやすくなる」との見解を示す。
ただし、グローバルのグループウェア市場について青野社長は、「製品がいいとか、安いからといって使い続けてくれる市場ではない」とみており、「働く人たちの“働き方の変革”までをもたらさない限り、定着していかない」と話す。だからこそ、サイボウズは日本を中心に、労働時間や勤務地の選択の自由、副業の自由など、働き方を自ら改革してきた。最近では、こうした同社の取り組みに対する関心がグローバルレベルで高まりつつあり、欧米のメディアや教育機関から接触を求められる機会が増えている。中国では、7月に深センと上海で「組織マネジメント」をテーマとするセミナーを開催し、合計で定員を上回る約330人の集客に成功した。
各国・地域で働き方を変えようとするマインドが高まれば、それを実現する手段の一つとして、グループウェア製品に対するニーズが拡大する。相乗効果が期待できるのだ。「製品」と「働き方」の双方で優位性をもつサイボウズは、より顧客を惹きつけることができる。