オートデスク(マイケル・キング代表取締役)は9月8日、東京・港区のザ・プリンスパークタワー東京で同社の最新テクノロジーや事例、パートナー企業の取り組みなどを共有するイベント「Autodesk University Japan 2016」を開催した。今回のテーマは、「The Future of Making Things ──創造の未来」。基調講演と二つの特別公演、56のセッション、スポンサー企業による最新ソリューションの展示などが用意され、多くの参加者が“創造の未来”を実感するイベントとなった。
モノづくりがより簡単に

米オートデスク
パトリック・ウィリアムズ
アジア太平洋地域担当
上級 副社長 「大きな変革の時代が始まろうとしている。時代はまさに、『The Future of Making Things ──創造の未来』のど真ん中にいる」と、イベントの冒頭で登壇した米オートデスクのパトリック・ウィリアムズ・アジア太平洋地域担当上級副社長。デジタルでモノづくりの世界が変わりつつあり、医療の世界にも波及しつつあるとし、「イノベーションが起こっている。未来は、まさに現在である。ともにこのトレンドを活用して、成功を収めよう」と会場の参加者に熱く語った。

米オートデスク
スティーブ・ブラム
ワールドワイド・
セールス・サービス担当
上級 副社長 基調講演で登壇したのは、米オートデスクのスティーブ・ブラム・ワールドワイド・セールス・サービス担当上級副社長。イベントと同じ「The Future of Making Things ──創造の未来」をテーマにオートデスク製品の活用によって実現する創造の未来について語った。
モノづくりについてブラム上級副社長は、「デザイン」「製造」「使用」の三つにまとめられるとし、今までと違って、これらの過程がつながり、管理されることによって、最適化できるようになったと説明。例えば、使用状況のデータから、最適なデザインを模索できるし、製造工程を意識したデザインも可能となる。IoTの世界である。また、3Dプリンタの普及も、上記の工程に影響を与えている。事例として、3Dプリンタで製造したクッションを採用したシューズを販売するスポーツ用具メーカーのアンダーアーマー、飛行機内の設備をデザインの観点から最適化したエアバスなどの取り組みを紹介した。
医療の破壊的イノベーション

神戸大学大学院
医学研究科
杉本真樹
特務准教授 最初の特別講演に登壇したのは、神戸大学大学院医学研究科の杉本真樹・特務准教授。「Life reverse engineering for augmented Human 人間の能力を拡張するリバースエンジニアリング」をテーマに、杉本特務准教授が取り組む、ITを活用した最先端医療を紹介した。
「今までよりもリバースエンジニアリングが簡単にできるようになった。設計図がなくてもモノから設計図化できるため、古いモノに新しい技術を適用することも容易である」とし、杉本特務准教授は応用できることがたくさんあると、さまざまな取り組みを紹介した。例えば、レントゲン写真があれば、3Dモデルを作成できる。それを3Dプリンタで3D模型化することで、手術を行う臓器を触って確かめることができる。ステージに流れた映像では、臓器の表面に近いウェット素材を使った3D模型、電気メスをあてると疑似的に出血する3D模型などが紹介された。3D模型を使うことで、手術の練習ができたり、予行演習ができたりするため、若手の医師でも的確な手術ができるという。また、プロジェクションマッピングで血管や臓器の映像を患者に投影して手術をするという事例も紹介された。
「技術は快適であるべき」と、杉本特務准教授。最先端の技術を多くの医者が活用できるようになってきたことで、今後の医療に破壊的なイノベーションをもたらすと語った。

CTやMRIの画像から3D模型化した臓器。
可視化と可触化で手術にイノベーションをもたらす
ロボットが日本発の新産業に

GROOVE X
林 要
代表取締役 次の特別講演では、GROOVE Xの林要代表取締役が登壇した。講演のテーマは、「GROOVE Xの新世代ロボットコンセプト」。林代表取締役は人型ロボット「Pepper」の生みの親であり、現在は新たなロボットの開発に取り組んでいる。 林代表取締役は「家庭用ロボットは日本発の新産業になる」とし、同社では便利な道具ではなく、人間の能力向上に貢献する“感性”にフォーカスしたロボットの開発を目指しているという。「自分の能力を上げるには道具は不要だとクリエーターは知っている。ドラえもんでも、それが描かれている。のび太が成長するのはドラえもんが去るときだった」と林代表取締役。人間の“無意識”をサポートすることが、その答えになるという。
また、ホモサピエンスが繁栄した背景として、「孤独」を嫌う遺伝子があったからと説明。ところが現在は核家族化が進むなど、遺伝子とのミスマッチが起きているとして、ロボットの必要性をアピール。さらに、アンケートの結果から、8割が「しゃべらないロボット」を望んでいるといったことを紹介した。これらを考慮して開発したロボットを、GROOVE Xでは2019年に発売する予定である。