SAPジャパンは「BCN CONFERENCE 2016」で、「内外IoT最新事情――『デジタル』が生み出している新たな価値の数々」と題した特別講演を行った。演壇に立った亀田俊・パートナー統括本部パートナービジネス開発本部長は、「IoTのインパクトとは、ビジネスを『支える』ITから、ビジネスを『変える』ITになること」とし、それを支えるプラットフォームが、インメモリデータベースの「SAP HANA」をはじめとする同社の製品やサービス群だと話した。
「モノ」から「コト」づくりへ

SAPジャパン
亀田 俊パートナー統括本部
パートナービジネス開発本部長 IoTは、すべてのデバイスがつながり、自律的に動作する技術的な特性があると同時に、ユーザー企業のビジネスを「モノ」づくりから「コト」づくりへの移行を促進。「社会や産業構造の発展的破壊」をもたらすと、SAPジャパンの亀田本部長は分析している。
具体的には、多様なデバイスから膨大なデータが集まり、これをクラウドの強大なコンピュータパワーで処理し、AI(人工知能)で何が起きているのかを把握。これから何が起こるかを予測し、対応の手立てまで導き出す仕組みがあたりまえのように活用される。さらには、企業規模によるヒエラルキーが崩れ、イノベーション主導の“フラット”な産業構造へ移行するというのだ。これがSAPジャパンが予測するビジネスを支えるITから、ビジネスを変えるITへの変化であり、その起爆剤がIoTというわけである。
クラウド比率50%超へ
SAPジャパンでは、世界で生成されたデジタルデータの実に90%が直近2年間で生成され、2020年までに2120億個のモノがインターネットにつながるとみている。SAP自身のビジネスモデルも大きく変わっており、例えば2010年にはクラウドベースの売上高がほとんどなかった同社が、15年には32%に拡大。17年には50%超へ引き上げ、従来のオンプレミス型のERPパッケージソフトの販売から、インターネット上でのサービス型への移行を加速させていく。
クラウド比率の向上は、統合プラットフォーム「SAP HANA」の存在が大きく、今ではISVやパートナーのソフトウェアに対応するオープンなプラットフォームとなっている。また、PaaSとしての「SAP HANA Cloud Platform」の投入によって、SAP HANAを活用したアプリケーション開発から統合運用環境まで、ITの幅広いレイヤのソリューションを、パートナーと協業してユーザー企業にワンストップで提供できるまでに進化している。

展示会場では「ビジネスを『変える』IT」をアピール
真のリアルタイムを実現
そして、「デジタルコア」として効果を発揮するのが「SAP S/4 HANA」だ。亀田本部長は、「あらゆる情報と業務をつなぐ、シンプルかつ拡張性にすぐれたデジタルコアがユーザー企業のビジネスを再創造する」とアピール。IT基盤のコア部分は、シンプルで情報が清流化されて、企業間の連携、商材が増えることでの人材育成、IoT、オムニチャネルなど先端の変化に柔軟に対応できる必要がある。こうした市場のニーズを「SAP S/4 HANAが実現する」と亀田本部長は話す。
HANAの中核となる技術は、高速処理が可能なメモリ上で稼働する「インメモリデータベース技術」となる。従来のハードディスクやSSD(フラッシュメモリ)をベースとしたデータベースに比べて、遅延を限りなくゼロに近づけられ、IoT時代に求められる「真のリアルタイム処理を実現する」データベースとして注目を集めている。
グローバル・ゴールズを視野に
SAPは今、グローバル全体で「The Global Goals for Sustainable Development(持続可能な開発のためのグローバル・ゴールズ、The Global Goals)」というテーマを念頭に置いてビジネスを展開している。このテーマは、環境保護や格差是正を図りながら2030年までに世界から貧困をなくすことを目指すというもので、国連と市民社会との連携によって実現することを目的としている。
亀田本部長は、「この実現を視野に入れて、ビジネスを手がける必要がある。地球・人類の発展に向けて取り組まなければならない」とかみ締める。これを踏まえ、SAPジャパンでは、すでに始まっているデジタル化(第四次産業革命)に対応していく方針だ。