ITディストリビュータのシネックスインフォテックは、今年度(2016年11月期)、地場に密着したビジネスパートナーを通じた販売が、前年度比でおよそ1割、既存パートナーベースで伸びる見込みであることを明らかにした。伸びた背景には、サーバーやパソコンといった“定番商品”が落ち込まなかったことに加え、扱いやすい統合型の情報セキュリティ商材「UTM(統合脅威管理)」の動きがよかったことがあげられる。来年度(2017年11月期)に向けては、「ワークスタイルの変革に絡む商材が一段と動き出す」(高橋慶・執行役員エンタープライズ営業部門第2営業本部長)ことが期待されている。(安藤章司)
シネックスインフォテックでは、地域のSIerや事務器販社といったビジネスパートナーを「Varnex Japan(バーネックス・ジャパン)」の名称で組織化しており、昨年度で30社あまりが参加。今年度末までには40社近くへと増える見込みだ。Varnexに参加することで、地場の市場に適したシネックスインフォテックからの商材提案や営業支援、メーカーからの技術支援などを受けられるメリットがある。

高橋 慶
執行役員 ポイントは「地場の市場に適した」の部分だ。大都市圏での売れ筋をそのまま地域の市場にもっていっても、「必ずしも売れ筋になるとは限らない」(高橋執行役員)。例えばChromebookやWindowsタブレットは大都市圏では業務用端末として人気が出始めているが、地域の市場では売れ始めるタイミングが少し遅れる見込み。この1年間の地場密着型のビジネスパートナー経由での売り上げを牽引してきたのは、ファイアウォールやウイルス駆除、不正侵入防御などの機能をひとまとめにしたUTM(統合脅威管理)。手離れよく売れて、マイナンバー施行のタイミングも追い風となった。
来年度に向けては、「ワークスタイル変革に関する商材の動きが見込める」と、高橋執行役員はみており、モバイル端末やマイクロソフトのOffice 365をはじめとするクラウドを活用した情報共有系の商材に注目。いつ、どこにいても仕事ができるよう、情報システムを整備しなおすことで、例えば、大都市圏の会社と地域の会社がオンラインで共同作業をしたり、育児や介護がしやすいような在宅勤務を促進したりと、ワークスタイル変革に絡む環境整備が地域市場においても進むと予測している。
シネックスインフォテックでは、地域のビジネスパートナーがクラウドを活用したサービスを組み合わせたり、継続課金モデルを展開したりしやすいようにするポータルサイト「CLOUDSolv(クラウドソルブ)」を今年に入ってから本格的に立ち上げている。地域のパートナーが機器や端末、パッケージソフトの販売だけでなく、継続課金モデルのサービス商材の扱いをより増やしていけるよう支援していく。「CLOUDSolv」はもともとシネックスインフォテックの本社がある米国で成功した地域販社向けのサービス商材ポータルで、これを日本にもってきた。
「Varnex」パートナー網は、2007年に北米でスタート。直近では約400社のVAR(付加価値再販業者)が参加している。国内では13年に立ち上がっており、代表的なビジネスパートナーは、鳥取県情報センター(鳥取市)やエレパ(高知市)、北海道オフィス・マシン(札幌市)をはじめとする地域の有力SIerやVARなど。春と秋にパートナー総会を開催しており、秋は首都圏、春は地方都市で行っている。昨年の春は福岡、今年の春は札幌、17年の春は5月に広島での開催を予定している。Varnexパートナー経由での売上高は、直近のシネックスインフォテックの法人向けディストリビューション事業の売上高の約1割を占めるなど存在感を高めている。