いまやグローバルのエンタープライズIT市場で屈指のトータルソリューションベンダー群となった米デルテクノロジーズ。同社傘下の米デルは、シンクライアント/VDIソリューションの拡販にも力を入れている。セキュリティは強化されても、「使いにくい、導入コストが高い」といった理由から、とくに一般企業では導入のハードルが高いと思われがちなVDIだが、スティーブ・ララ・シニアバイスプレジデント(クライアントソフトウェア&ソリューション)は、「そうした時代はデルが変えつつある」と強調する。
アプライアンス製品により「簡単」「安価」に
――グローバルでのシンクライアント、VDI需要の現状と同分野のデルのブランドであるWyseの状況は?
スティーブ・ララ
シニアバイス
プレジデント ララ VDIソリューション全体の市場は年間6~7%伸びている。ただし、シンクライアント端末の部分は微減で、過去数年間、4~5%平均で下がっている。これはお客様がシンクライアント端末ではなく既存のPCを使うという選択をすることが多くなっているためだ。デルは、米ワイズ・テクノロジーを4年半前に買収し、2014年、15年と過去2年、最大のマーケットシェアを獲得しているが、市場そのものの規模もWyseビジネスも、伸びていくと確信している。
その根拠として、クラウドが普及し、アプリケーションやデータをVDI技術を使って活用することへの関心がお客様の間で高まっていることがある。アプリケーションの近代化という意味ではHTML5もデリバリの一つの方法ではあるが、大半のお客様はレガシーアプリケーションをもっているので、これを(クラウドを経由して)VDIで使いたいというニーズも大きい。さらに、さまざまなアプライアンス製品により、VDIのデプロイが以前よりもずっと簡単になっていることも、市場の成長を後押ししている。
――VDIには“難しい”“使いにくい”といった理由から敬遠されることが多い印象もあるが、そうした課題を解決しつつあるのか?ララ VDIソリューションのトップベンダーとして、デルが過去の市場を変えてきた自負がある。当社はVDIアプライアンス製品市場のリーダーでもあり、エントリーモデルも用意しているし、VDI環境に最適なコンバージド、ハイパーコンバージド・インフラもラインアップしている。ワークロードはこのアプライアンスによって定量化されるので、サーバーやストレージ、ネットワークの専門家は必要なくなった。VDIを立ち上げるのに、以前は何日、何週間とかかっていたのが、1時間で立ち上がるようになった。
――1時間とは驚きだ。ララ 少し言い過ぎた、3時間だ(笑)。実際に、銀行業界のお客様の事例がある。250人規模の支店でIT部門のスタッフはいないという状況で、3時間でVDIを立ち上げて欲しいという要請があった。これをコンバージドアプライアンスで実現した。銀行のスタッフでも簡単に組み立てられる“箱”が出荷されるだけなので、十分に可能なのだ。
――しかし、すべての企業、産業にVDIが適しているとは思えない。ララ いや、私はすべてのお客様がVDIソリューションの恩恵を享受できると考えている。大企業ではコールセンターだけでなく、ハイパフォーマンスなナレッジワーカー、人事、法務などで社内の重要なデータにユニバーサルにアクセスしたいというニーズで採用されてきている。また、金融、医療、教育といった従来のニーズを牽引してきた業界だけでなく、リテールや航空業界などで、データを一か所に集めて分析し、スピーディに新しい施策を打っていくという用途でVDIの採用が進んできている。また、現在のデータ攻撃の95%が従来型のクライアント製品で起きているわけで、VDIはその解決策になる。そのため、非常に幅広いお客様がVDIの導入を検討している。
セキュリティも大きな差異化ポイント
――競合に対する差異化ポイントは?ララ 真に包括的な、エンド・トゥ・エンドのVDIソリューションを提供できるのはデルだけだと考えている。また、幅広いアプライアンス製品を揃えることで、チャネルパートナーやSIパートナーはデリバリまでの時間を大幅に短縮できる。セキュリティも、デルしか提供できないものがある。クライアント側でいうと、業界で唯一、シンクライアント専用の独自OS「Wyse ThinOS」をもっている。これはウイルス攻撃に晒される接点が少ない。さらに、これも当社だけだが、ファイルレベルの暗号化や高度な標的型攻撃に対する保護機能も備えている。同業他社と比べると、仮想デスクトップのレベルでセキュリティを一階層追加している。
――価格もシンクライアント、VDI導入の大きなハードルになっていた。ララ アプライアンス化がどんどん進んでいるので、ユーザーあたりのトータルコストはどんどん下がっている。もちろん、具体的な用途によってコストは変わるが、より少ない投資でより多くのことを実現できるようになっているのは間違いない。
――そうしたデルの最新のVDIソリューションの価値は日本市場に浸透していると思うか?ララ データをみると、過去数年は横ばいだったが、今後は年間6~7%ずつ成長していく兆しがみえている。セキュリティとモビリティというニーズがやはり成長要因になる。
日本でのデルのビジネスは70%がチャネル経由であり、SIパートナーやリセラーにも、顧客の信頼と大きな利益をもたらすソリューションをラインアップしている。世界中に検証環境も用意し、業界のスタンダードになっている大手各社の仮想化技術に精通したエンジニアも豊富にいる。非常に高度で洗練され、お客様の要求が厳しい日本の市場であっても、パートナーの成功を強力に支援できる仕組みを整えている。